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第十三話 先祖代々継承武具

この世界の子供は怪異から生き延びるため成長が早いです。

生後三ヶ月で歩き、生後六ヶ月で簡単な言葉を覚え始め、生後十ヶ月で普通に喋ります。


 僕の名前は安倍 直樹。既に陰陽師として大人顔負けの力を持っている麒麟児です。少し前までは怪異とか悪霊とか簡単に祓えると思っていました。ですが知ってしまったんです、あの屋敷で現実を。

 僕たち祓い屋を生業としている人はああいう強い怪異が居るとこには行きません。誰も死にたくないからです。だからチマチマと街に出た小さな怪異や幽霊を退治して日銭を稼いでいます。



 ですがそれでは足りません。大きな怪異は大きな怪異を遠ざける代わりに小さな怪異を引き付けます。根本的に大きな怪異を全て駆除する。これができれば全て救われる。

 そう信じて生後九ヶ月の頃から僕は修行をしてきました。生後九ヶ月というと普通は子ども同士で遊んでいる頃でしょう。それでも僕は続けました、あの事件が起きてからはより一層励みながら。



 しかしそれでも足りませんでした。なので先祖代々受け継がれし伝説の武器を取りに行きます。その伝説の武器は我が家の蔵に保管されています。しかし使用するには試練を越えなければなりません。それも現当主が認めた者のみが受けることを許された試練を。


「父さん、試練の許可を下さい」

「ならぬ。まだ七歳になったばかりだろう。才能はあるのだ。よく鍛錬を積んでからでも遅くはない」


 現当主である父さんは決して許可をくれません。この試練では命を失うことがないとはいえ、成功した者は数える程しかいません。さらに成功しても失敗しても試練の内容を伝えることはできません。

 実は僕の父さんも試練を行った身であり、そして失敗した人でもあるのです。伝えることができなくともその過酷さを知っているからこそ鍛錬を積んでからとアドバイスをくれるのでしょう。


「ですが父さん、僕は」

「ならん!そもそも実力が足らんと思ったなら鍛錬を積むべきだ。実力に見合わぬ力は身を亡ぼす」


 正しく正論とも言うべき言葉です。昔から僕に言い聞かせてくれた話でもあります。しかしそれで諦めきれる程の思いではないのです。そのことが顔に出てしまっていたのか、父さんが慰めの言葉を掛けてくださりました。


「直樹よ、お前の気持ちはよく分かる。……早くに母さんを亡くしてしまった。その原因となった怪異が憎いのだろう。だが仇となった怪異は父さんが倒してしまった。そのせいで行き場のない怒りが怪異全体に向いている」


 いいえ父さん、それだけではないのです。ただ赦せないだけではないのです。これ以上一般人が被害を被る世の中を変えたいんです。


「よいか直樹、怪異は悪しきものじゃない。無論善いものでもないが、奴らはただあるだけだ。人を襲うのは霊力を確保するため、人が生き物を食らうのと同じだ」


 ならばなぜあの日、母さんは狙われたのでしょう。ただお腹が空いたならば近くにいる人に襲い掛かかるはずです。奴らには知性が、悪意があるのです。


「父さんはぜんぜんわかってないんです。あいつらは悪意を持って人を襲います。だからこそ怪異を全滅させれば犠牲者は減ります。被害を出さないためにも、一刻も早く殲滅するべきでしょう!」

「そうか、こればかりは口で言ってどうにかなるものでない。だが今のお前の気持ちならば、試練を突破できるやもしれぬ。一度だけだ、一度だけ試練を受けることを許そう」


 父さんが試練を受けることを許してくださった。いえ、それ以上に心持ちを認めてくださった。そのことが嬉しく感じるあまり、涙ぐんできました。


「父さん」

「勘違いするな。口で言っても分からぬから体験して来いというだけだ。さすれば分かる。なぜ命を失うことがないのに二度も試練を受けたがらないか、そしてなぜ合格者が数える程しか居ないのか。身をもって知るがいい」


 それはあくまで建前でしょう。父さんは僕に甘いですが、当主は厳しくあるべきですから。


「それでも、いえそれだからこそ!許可して頂き、ありがとうございます!!」


 その言葉を受け取った当主は眉をピクリと動かしました。そして父さんは少し忌々(いまいま)し気に悩んで見せた後にこう仰りました。


「子供はもう少し察し悪い方が可愛げあるぞ」











 父さんから許可を貰ってから数時間が経過しました。既に準備を済ませてくれた父さんが蔵の前で待機してくれています。


「直樹、準備が出来た。いつでも入っていい」

「改めてありがとうございます。それと、行ってきます」


 父さんに別れを告げて蔵の中に入ります。この蔵は普段から普通の蔵として使うことができますが、ある準備をした時だけ試練場として使えます。



 暗い蔵の中を歩いていくと遂に光が見えました。光を抜けるとそこはどこか公園のような場所でした。よく見ると日が沈んでおり、時間帯も変わっていることに気が付きました。


「きゃーー!!」


 突然のことに困惑しているとどこからか悲鳴が聞こえてきました。声から察するに女性のようです。僕は持参した武器を取り、すぐさま声のする方へ駆けていきました。





 現場に到着すると既に片は着いており、父さんに似た姿の男性が女性の側に居ました。何となく二人の前に姿を現してはいけないと思い、近くの木の陰に隠れて様子を伺います。


「大丈夫か?」

「は、はい。大丈夫です。怪異に襲われているとこを助けていただき、ありがとうございます」


 危険な目にあったせいか女性の頬は赤く高揚しています。対照的に男性はまるで何でもないかのように持っていた武器を収めながら返事をします。


「礼はいい。霊能力者として当然のことをしたまでだ」

「でしたらお名前をお教えください。助けてくださった方のお名前くらいは憶えておきたいので」

「名乗る程の者ではない」


 これに男は女性を一瞥することもなくただ一言告げ、背を向け去っていきました。残された女性はただ茫然と去っていく背を見つめるだけで何もできませんでした。






 そこまで見届けると目の前が光に包まれます。今度は先ほどよりも短く、すぐに視界が戻ってきました。どうやら前回と同じ場所と時間帯のようです。視界の先には既にあの男女が居て、何やら言い争っています。


「何故また戻って来た!死にたいのか!」

「ごめんなさい。私、貴方のことがどうしても気になって。それでここに来たらもう一度会えるかもって」

「そんなことで命を投げ出しに来たのか!俺が来なかったらどうなっていたことか!!」


 前回と違い、男が赤くなって女が青くなっています。やがて段々と落ち着いてきた男性が懐から名刺を取り出して女性に渡します。


「何かあったらこれに連絡しろ。もうう二度とこんな危険な真似はするな」

「あ、ありがとうございます。えっと、安倍さん?」

直迪(なおみち)でいい」

「わかりました、直迪さん。そう言えば私の自己紹介がまだでしたね。私の名前は和泉(いずみ) 愛樹(あいき)、高校一年生です」


 その言葉を聞いたところで再び光に包まれました。そして分かったことがあります。あの男女は僕の両親です。この試練はいったい僕に何をさせたいのでしょうか。






 光が晴れると病院にいました。日の光が差す廊下にポツンと佇んでいます。暫く歩くと見知った人がいは知っていくのが見えました。後を追うと一つの病室に辿り着きます。


「おお!元気な赤子だ!」

「静かにしてください。直樹が起きちゃいます」


 そこから聞こえてきた声が嬉しそうに僕の名前を呼びます。わかってはいましたが、いざ直面するとこうも狼狽(うろた)えるとは。心の臓の高鳴りが、病室内に響いていないか心配になります。

 それにしてもこの試練は本当に何をさせたいのか。最初は何かやるべきことがあるのではと思いましたが、それでは見ているだけで場面が切り替わることの説明ができません。では見ることが重要なのでしょうか。疑問が絶えません。


「そうか、直樹か」

「ええそうです。貴方の考えた名前は……少々ハイセンスでしたから」

「そうか?陰陽大王(せいめい)とか絶対聖域(サンクチュアリ)は気に入っていたんだがな」


 そういえば父さんは名付けが苦手でした。新種の怪異に変な名前を付けてようとしては止められていましたね。本当に、ホントウに母さんが名付け親でよかった。


「コホンッ。直樹の名前の由来は私達から一文字づつ取っただけではなく、それぞれ漢字にも意味があります。直樹の『直』には正直で物事を正しく判断できる人になって欲しい、直樹の『樹』には大地に根を張る強さと成長をもって、豊かで実りある人生を築いて欲しいという願いが込められています。合わせると正直で決断力がある人生豊かな人になって欲しいということです」

「一応俺も陰陽術がうまくなって欲しいとか、怪異に襲われませんようにという願いを込めていたんだが……まぁ直樹の方がいいな」


 一段落(いちだんらく)付いたため、そろそろ光に包まれる頃合いだと思い身構えます。しかし一向にくる気配がなく、困惑します。まだ見続けろということでしょうか。


「名前は親から与えられる最初の贈り物です。どんな人になって欲しいかを定め、それでいて束縛しすぎないよう願いを込めた祝福なのです。怪異よりも子どもたちに虐められそうな呪いはやめてください」

「わるかったって。だから俺にも抱かせてくれよ~、頼むからさ~」


 父さんが締まりのない顔でこの時代の僕を受け取ります。それよりあの厳格な父さんが人前で顔を緩ませたことに驚きです。普段は当主として隙を見せないようにしているのでしょうか。



 父さんの以外な一面に驚愕していると窓の外に怪異がいることに気が付きます。しかし二人共怪異には気づかず赤子の僕をあやし続けています。何とかして怪異を気づかせてやれないかと考えていると。


───コツンッ。


 持ってきた武器の一つであるヴァジュラがドアに当たってしまいました。これならば式神だけにしておくべきだったと少し後悔します。


「誰だ!」


 父さんの意識がこちらに向けられた瞬間、窓を突き破った怪異が二人に襲い掛かっていきました。僕は咄嗟に持っていたヴァジュラを投げ、怪異を撃退します。


「……直樹?」


 母さんが僕の名前を呼ぶと同時に、目の前が光に包まれます。まさか気づかれるとは思ってもおらず、少しドキリとしました。それにしても過去に大きく干渉してしまいました。どうしましょう。これが試練の幻覚であることを祈ります。






 そんなことを考えていると今度は周りが塀で囲まれた屋敷の庭に出てきました。平安貴族の庭のように所々木が植えられ池に橋が架かっています。よく見るとこの庭は僕が住んでいた屋敷にそっくりです。住んでいたとは言ってもあの事件が起きるまでの話となりますが。



 そこまで考えてはたと気づきます。この試練では僕について重要な場面が次々と見せられていきます。そして母さんを失ったあの事件をこの試練が見逃すはずがありません。


『正解だよ、挑戦者(チャレンジャー)少年』


 後ろから少年のような高い声がしました。振り向きざまに武器を構えます。


『反応がいいね。ただ僕は敵じゃない。味方よりの中立、君の得難い戦利品だ』


 そこには羽の生えた小人のような少年がいました。言うなれば妖精(フェアリー)の類と言ったとこでしょうか。身に纏っている服装は陰陽師が着ている狩衣と同じで、手には錫杖を持っています。

 それよりも彼の言っていた得難い戦利品とはどういうことでしょうか。


「貴方の言っている意味がよく分かりません。詳しく説明してください」

『そのまんまの意味さ。僕はこの試練を乗り越えることで手に入る武器そのもの。名前はまだ明かせないけど、はいこれ』


 そう言われて渡された錫杖は大きさを変え、自然と手に馴染むサイズに変わりました。

 これがその武器なのでしょうか。普通の錫杖は先が五輪塔を象った大きな輪がついており、そこに複数の遊環が通されています。しかしその錫杖は五輪塔の中心に青い球のような装飾が埋め込まれており、さらに八つの遊環がついていました。遊環は個数により意味が変わるのですが、八つというのは聞いたことがありません。


「これが、あの伝説の?なぜ今渡すのですか?」

『これはお試しだからだよ。そして今夜、君にとって大事件が起こる。そこでこれを使えば襲撃する怪異達とギリ相打ちにできるし従者も何人かは助かるけど、そこで力を使い果たして母親を亡くしちゃう。だけど母親を守ることに全力を注げば、母親だけは助けられる』


 その言葉に頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受け、思わずその場にへたり込んでしまいました。人間に協力するなどの一部例外を除いて怪異は殲滅しなければなりません。特に徒党を組んで襲撃するような怪異は生かしておけません。



 しかし母さんを殺されてしまうのは本末転倒です。僕は母さんのような被害者を出さないために戦うと決めたのですから。かと言って母さんだけを守れば館中の従者たちが死んでしまいます。


『あ、そういえばまだ試練の判断基準を言ってなかったね。今回襲撃してくる怪異を全滅させればいい。簡単でしょ』


 何てことないかのように彼はそう言い放ちました。ですがこれで僕の選択は決定しました。どうせこれらは幻覚です。もう母さんは死んでいます。幻覚とは言え、母さんを見捨てる罪悪感を無視すればより多くの人を救える武器が手に入る。


『幻覚じゃないよ』

「え?」


 幻覚ではない?ではいったいこれは何なのでしょうか。実際に過去まで遡っているとでもいうのですか。そんな術を行使できる人物など一人も……いえ、いましたね一人。できそうな人物が。


「では過去に遡っているのですか?それとも再現される空間に飛ばされているのですか?」

『そこまで言ったら試練にならないだろ』

「ふざけないでください!」


 まるで困ったものを見るかのような目で彼はこちらを見下ろしていた。


『本来なら見破れたんじゃないか?ちゃんと修行を積んでいれば見れたかもしれない。でも君は修行しなかった。手っ取り早く強い力を手に入れるために何の実力もなしにやってきた。……挑戦者(チャレンジャー)少年、君が悪いだろ』


 正論をぶつけられてしまい、少したじろいでしまいました。確かに修行を積んでからなら全員救えたかもしれません。しかし僕は今すぐ救うためにここに来ました。立ち止まっている暇はありません。その時が来るまで考えます。



 例えばこの錫杖で過去に遡っているか確かめるというのはどうでしょう。伝承通りであればこの錫杖は使い手の力の増幅ができると聞きます。しかし彼はあくまでお試しと言いました。本当に確かめた分消耗した状態で相打ちにできるでしょうか。そこが不安です。


『考え込んでいるとこ悪いけど、そろそろだぜ。時間、あと一分あるけど』


 流石にこれ以上の妙案はもう浮かばないでしょう。そろそろこの案を実行に移します。


「直樹ー!走ると危ないですよー!」

「だいじょーぶー!!」


 そこでふと声が聞こえて動きを止めてしまいました。行動するなら早い方が良いでしょう。それでも食い入るように声が聞こえた方角を見つめます。



 そういえばこの時の僕は誕生日パーティーということでお庭に出ているのでした。父さんは仕事でこの屋敷を離れていて、母さんは僕が庭で走り回っているのに付き合ってくれた気がします。


「直樹ったらそんなにプレゼントが気に入ったんですか?」

「うん!おかあさんがくれたこのつえでー、せかいじゅうのかいいをいいっぱい!はらうんだー!そんでねー、おとおさんみたいなりーーーーっぱなはらいやになったらー、かあさんのこともー、まもってあげるのー!!」


 そうでした。この時僕は誕生日プレゼントの錫杖で一端の霊能力者になった気でいて、全ての怪異を祓うことを誓ったんです。この頃は力もなく、最後まで人を救えませんでした。そして今、力を付けるためにここにいるのです。ようやく覚悟が決まりました。相打ちとなっても、ここにいる全ての怪異を、一匹残らず、全て殲滅します。


『ようやく覚悟決まったかー。……来るぜ、招待状なき臨席者が』


 直後、轟音とともに北側の塀が吹き飛び怪異たちが乱入してきます。よく見ると学校にいた【石竜子(せきりゅうし)】や自称マジシャンのピエロもいます。まさか怪異解放連合と過去に出会っていたとは驚きです。次会ったら必ず殺します。


「そんな!?結界はどうなっている!?」

「嘘でしょ!守られてるんじゃないの!?」

「どうする!助けを呼んでも帰ってくるまで時間が掛かるぞ!」

「ともかく愛樹様と直樹様を後ろに!われわれも多少は武の心得がある!時間を稼ぐぞ!!」


 優秀な家令が指揮を始めました。怪異側もそれに気付いたのか真っ先に狙っています。一息で全滅しかねない【石竜子(せきりゅうし)】を先に倒しましょう。


「【霊炎旋風(れいえんせんぷう)】急急如律令」


 対怪異用に発展した陰陽術の中でも特に生物型特化の術【霊炎旋風(れいえんせんぷう)】です。この術は始点とした陣を中心として霊力を燃やす炎で竜巻を起こします。元々陣が掛かれた紙を式神に運ばせていました。丁度【石竜子(せきりゅうし)】の真下で発動した火災旋風が回りの怪異を巻き込んでダメージを与え、断末魔の悲鳴を上げさせることなく消滅させました。


「何だぁ!陰陽師は全員出払っているはずだろ!何でまだ居やがる!!だがなぁ術に流れる霊力が丸見えだぜぇ!!」


 どうやらあのピエロこそが襲撃の指揮役のようです。まさか霊力の線を見たり、【霊炎旋風(れいえんせんぷう)】を耐えたりする程強かったとは思いもよりませんでした。この錫杖の力を以てしても相打ちと言われるのは伊達ではないようです。しかし


「な!誰も居ねぇ!!」


 敢えて霊力の線を遠回りして僕が居る方向とは真反対から陣に霊力を流し込みました。線を追って背中を向けている今ならこちらが不意打ちできます。


「【土塊射出(どかいしゃしゅつ)】」


 ここは次に繋げるためにも拘束系の術を使いたいですが、初動が遅いのであのピエロを相手に当てられる自信がありませんでした。なのでここはシンプルに、土塊(つちくれ)で貫いて動きを阻害します。


「なにっ、後ろからだと!?」


 見えてはいなかったはずなのに避けられました。しかし奴の左腕を肩から吹き飛ばしました。期待通りではないですが動きを阻害できそうなので良しとしましょう。それよりも、居場所がばれてしまったので奇襲から殴り合いへと移行しましょう。


「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女」


 念のため九字護身法で霊的防御力を高めておきます。今は錫杖を持っているため片手でドーマンの手印を結んだ破邪の法です。並みの怪異では破れません。


「よぉクソガキ。よくも俺様の腕を奪ってくれたなぁ。ん?……お前のその顔、あそこのガキと似ているな?それに資料にはない顔だぁ。もしや…未来から復讐でもしに来やがったのかぁー!!」


 ピエロがこちらの顔を確認するや否や歓喜に顔を歪ませています。ですがそれはこちらも同じです。僕も、復讐は大好きなので。


「ええ、そのまさかですよ。ミスター……ピエロ」

「ピエロじゃねぇ!!マジシャンだ!!!」


 そう叫ぶとピエロは何処からともなくナイフを取り出し切りつけてきます。怪奇がわざわざ自前で用意した武器となると厄介な性質が込められていることが多いと聞きます。特に危険性は感じませんが避けておきましょう。


「くそ!!()けんじゃねぇ!!」

()けなきゃ()けてしまいますので」

「ザケんじゃねぇ!!」


 ピエロとの身長差もあり避けることは容易いです。ピエロは執拗に首や胴体を狙ってきていますが、それは当たれば勝利が確定するような性質がないということでしょうか。だとすれば特に脅威ではありません。そろそろ決めてしまいましょうか。ピエロの胴体を蹴り距離を取ります。


「では止めを」

「なぁ、冷静になって考えたんだがよぉ。未来で俺様と戦ったにしては様子見が過ぎるよなぁ。例えばこの刃物とかよぉ、実はなーんも特殊な性質なんかないんだぜ」

「……つまり何が言いたいんですか?」

「【赤い街の殺人ピエロ】って知ってるか?」




本来なら一人一話くらいの話にする予定でしたが直樹君が頑張ってくれたのでこの話だけ他の三~四倍になりました。なので分割します。

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