第九話 幽霊屋敷
あの日謎のピエロに襲われた私達は、定期的に情報交換するという名目で遊んでいた。だがそろそろ対策しなきゃ不味いことに気付き、真由ちゃんの自室で真面目に会議していた。
「では第五回情報交換会を始めます。司会はわたし、間真由が務めさせていただきます」
「そんなのいいからさっさと始めない?私心当たりあるよ、あれ」
「「「「え!?」」」」
今までは関わらせると危険だからと伝えずにいたが、三人のことを知れば知る程私より強そうだったから伝えてしまう。
「つまりその怪異解放連合が【十二時の十二人】を仲間に引き入れるために動いたのがあの日ということですね。でもそんな連中聞いたことないですよ。少なくとも僕の親は何とも・・・武たちはどうですか?」
「いや、俺んとこも何も聞いたことねぇぜ」
「わたしも無いかな。そもそも怪異の話自体しないけど」
「わたくしもないの。もしかしたら本当に危険な存在ってことかも。キヒッ」
怪異解放連合と私の事情についてある程度説明したことで本題に入ろう。
「端的に言って、怪異を狩って私の配下にすることで戦力を増やそう!キャンペーンをしたらいいと思う。皆の腕前は直ぐに上がらないけど駒を増やすなら直ぐ出来る」
「いや確かにそうだけどよ。ホントにいけんのか。俺たちだけの力で」
「キヒッ。この前倒した【石竜子】が中堅の霊能力者十人で対処する案件。わたくしたちは運が良かったものの、小さめの霊能事務所位はあるわ。キヒッ」
皆の顔が明確に強張っていくのを感じる。確かに皆とても強い。だがまだ小学一年生だ。怖がっても不思議じゃない。
「わたしっている意味あるのかな。霊を直接見れるわけじゃないし、何か特技があるわけでもない。いつも怖がってるしホント役立たず」
「そんなことない!僕はあの日君の勇気に救われたんです!僕たちのように何か力があるわけでもない。それなのに君は率先して立ち向かいました。そのお陰で勝てたんです」
「そうだぜ!自分のこと、そんなに悪く言うなって」
「うん。私もそう思う。自分のこと大切にしろって約束させたくせに」
「キヒヒッ。霊能力者はよく見えない人に協力してもらっているの。ずっと見えてて通常と異常が区別つかないから。キヒヒヒッ」
「みんなぁ。…ありがとう。自信出てきた」
さて、真由ちゃんの自信と共に皆の自信が出てきたところで本格的に内容を決めよう。まずは今の戦力で現実的に勝てそうな怪異だ。
「本題に戻そう。今の私達で勝てそうな怪異について知ってる人は居ませんか?」
「うーん。有名なので言ったら【幽霊屋敷】かな。絶対近づくなって言われてる場所」
「そもそも危険な怪異はあらかた狩りつくされていますから。必然的に残ったのは対処不能か封印済みだけでしょう」
「決まんねぇーなぁ」
仕方がないので皆で遊びに行こうということになった。ついでにさっき話に出てきた【幽霊屋敷】の偵察に。ということで今私達の前にはでかい洋館がある。全体的に薄暗くて気味が悪い。
「いや無理やん」
「キヒッ。キヒヒッ。かなりオーラが違う。これは別格だわ」
やはり私達には無理。そう諦めて帰ろうとした瞬間何かに右足を掴まれた。
「まずい。何かが足掴んで引きづりこもうとしてるんだけど」
「なに冷静に分析してんだ!逃げんぞ!」
武君が体を引っ張って屋敷と逆方向に進もうとするもその手は一向に離れない。寧ろ対抗しているのか力が入り、掴まれている部位が赤黒く見える。
グギッ。
その音が鳴り響て以降、関節がないはずの掴まれている箇所から先がプランプランと垂れている。
「ごめん。助けようとしてるとこ悪いけど、多分千切れる方が先だから放してくれない?」
「だから何でそんなに冷静なんだよ!!」
とは言え武君はちゃんと放してくれた。このまま引きずり込まれるのは嫌だがしょうがない。他の残ったメンバーが助けを呼んでくれるならそれでいい。助けが来なくても最悪【ワンホール】使って逃げる。
だがそれは甘い考えだったと言えるだろう。
「あ、行かなきゃ」
「僕も行かせてください。お願いします」
「おいどうなってんだ!直樹と真由が自分から行こうとしてんだけど!」
「キヒヒッ。これは精神操作ね。ここまでの霊に成長してるなんて。あっ」
「おいどうしっ、て何でお前も捕まってんだよ!逃げろや!」
「キヒヒッ。抵抗したら折られるわ、これ」
どうやら【幽霊屋敷】は一人も逃さないつもりのようだ。いずれ武君も引きずり込まれるだろう。そう思えば寧ろ好都合だ。全員下手に分断されるよりかは、チャンスが増える。
「と、いうわけで助け来ないし呪いマーク付けられたから倒さなきゃ死ぬ。シンプルになったねぇ」
「シンプルはお前の頭だろ!無理って結論だったろ!」
現在、館のメインホール。引きずり込むだけ引きずり込んで放置されたから作戦会議中。掴まれた箇所には奇妙なマークがあったため解析したところ、逃げられなくする呪いだった。呪いを解除するためには道具がないとのことで、倒すしか逃れる術はない。
「でもそれしか道はないんだよね。それなら私、頑張る」
「幻覚に嵌まった僕にも責任ありますし、手伝いますよ」
「キヒヒッ。装備も地力も足りない怪異討伐。面白そう」
「しゃーねーなぁ。やるよ!俺も行ったほうがいけるかもしんねぇんだろ」
「ありがとう。じゃぁ私の足の代わりとなる人を呼び出すけど驚かないでね」
そう言い放ち地面に【ワンホール】の枠を描いていく。そういや今日って呼んで大丈夫だっけ?
『今暇?』
『ええ僕、暇で候』
『じゃ足になって』
『りょ』
最近呼ぶ機会が多いせいか呼び出しがここまで短くなった。
「というわけで私のあっしー君。暫く抱えてもらうから」
「はい!はい!!そうです。そうです。僕、あっしーの道を極めて幾星霜!主の命にて西へ行かば!東へ行かば!南北天地全てを駆け巡る流れ星!!主が行こうと言うなれば!呪い如き!恐るるに足りず!」
「いろいろと経緯省くけど私をお嫁さんにしようとした人。刑務所に入って当然だけど負かしたから配下としてこき使ってる」
「「「「は?」」」」
いろいろと気になることが多すぎて質問したいが、全てにおいて理解が追い付かず何もできない。そんな顔をしている。だが聞かれたとこで答えている時間はないので無視をする。
「さてどこから探索する?」
「……入って一階の右、左から探索して最後に正面の階段を上って二階を探索するのはどうかな?」
「待ちたまえ。それでは時間が掛かります。手分けしましょう。愛寿夏さん、あっしーさん、僕が右。残りの真由さん、武、智美さんは左でどうでしょう?」
「キヒッ。見分ける人、動ける人、道具を使う人で分けたのね」
「俺はいいけどよ。あっしーっての、ホントにダイジョブか?その、いろいろと」
当然の疑問だろう。皆はまだ彼の実力を知らない。だが一々答えてられないので大丈夫とだけ言っておく。
「ならいいんだけどよ」
「そうだわ、この眼鏡を掛けると一時的に霊視が出来るの。見えない二人にはこれをあげるわ」
「ありがとう、智美ちゃん」
「ん~僕も感謝しますぞゾ」
全員の準備が完了したためお互いに分かれ進んで行く。
どうか再会できると願って、暗闇の中に体を埋め続けた。暗黒の先に光があると信じ、枝は分かれた。花が開くかはまだ分からない。
そこには何の用途かも分からない沢山の部屋があった。取り敢えず近いとこから調べるか。
「沢山ありますね。占いますよ」
どうやら直樹君が危険なとこや調べるべき箇所を占ってくれるらしい。
「行きましょう。危険はありません」
直樹君について行きその通りの部屋に入ると、そこには二台のベッドがそれぞれ部屋の左右に置かれていた。かなりデカい屋敷だ、そこの使用人が住み込みで働いていてもおかしくない。
その内片方のベッドに一冊の日記帳があった。この部屋に住んでいた人の物だろうか。酷く使い古されている。
その他特に目ぼしいものは無かったため、ホールに戻ることとなった。
***視点:山崎 智美***
暗い廊下の先まで占って危険性を排除する。少なくともこの先には居ないことが分かったわ。そして部屋の数が多いため、占いで重要度を決めておく。
「キヒッ。行っても大丈夫よ」
「なぁそれってホントに信じれるの?」
「キヒッ。あの日わたくしが占いで当てなければ、誰も生き残れかったと思うのだけれど」
呻る武さんを説き伏せて、暗い廊下の奥へ行く。そして最重要の部屋に入り、辺りを隈なく見てまわる。
「あの?特に何も無さそうですけど」
「へっ、なぁんだ。やっぱ嘘っぱちじゃねぇか!」
「キヒッ。重要なものが見えないのは隠されてるから。可視の粉よ、隠蔽されしものを明らかに」
可視の粉を振りまき、その付着箇所を見る。可視の粉は見えざる者や隠蔽された物に付着し曝け出す性質がある。だから正しい呪文を唱えて吹きかければ、自ずと浮かび上がってくる。
「キヒヒッ。見つけた」
「まじかよ。もしかして直樹もこんなこと出来るのか?」
「どうでしょう、彼は陰陽道をいく者。この粉は海外産だから知らないかも」
それにしても、まさかこの屋敷に地下があったとは。思えばこの屋敷まで引きずり込んだ手は地下に消えていった。恐らく地下に本体がいるのね。
***視点:喜美候部 愛寿夏***
「えーつまり日記帳と二階にあった情報、謎の階段というピースから考えると、妄執ジジイと成り代わり娘が下に居る」
「まぁ悪く言ってしまえばそういうことになりますね」
まずやはりと言うべきか日記帳は当時の使用人の物であった。孫娘を亡くしてから狂気に蝕まれていった当主を恐ろしく思い、忠言しに行くというとこで終わっている。殺されてるよなぁ、これ。
何よりその孫娘を怪異で蘇生したら性格が残忍になってたとか、好物のジャンルが変わってたとか、挙句思い出が消えてた。もう別人じゃん。隠す気のない邪悪じゃん。
「てかこの怪異が何だかお前ら知ってっか?」
「キヒヒッ。わたくしに心当たりがあるわ。怪異【付喪神】、七不思議の骸骨と同じね。その特徴は人からの念を受け取って動き出す怪異で、依代が砕けると死ぬ。」
「じゃ何でまだ動いてんだよ。死体なんてすぐ壊れっだろ」
怪異【付喪神】。確かに依代が壊れると死ぬ。基本的には腐っても同じだ。それこそ腐った部分を取り換え続けなければ別だが。
「ん~ん。僕わかりましたゾ。テセウスの船のパラドックスでしょう!」
「なんだそりゃ」
「確か部品を一つづつ交換していき、全部交換したらそれは元の船と同じかどうかについて議論された思考実験ですよね」
「キヒヒッ。確かに一部づつ交換し続けたら付喪神の意識は変わらないわ」
「え!?じゃあ地下には今までの犠牲者でできた他人の死体があるの!?」
想像するのが嫌になってきたのでこの話題はやめよう。それよりもっと楽しい話題にしよう。例えばどう倒すかとか。
「それはともかく、付喪神でしたら魂だけ破壊する対付喪神用の術式があります」
「キヒヒッ。ものの腐敗を速める腐敗の呪いもあるわ」
「じゃあ二人は付喪神を徹底的に攻撃して。私は館に火を放ち、追いかけてきた奴の手に黒口腔の毒を浴びせる。あっしー君と武君は私達を運ぶ。これでどう?」
実は館の外に出るだけなら簡単に出られる。問題は逃亡阻止の呪いで庭を抜けると戻されることだ。だが、館を跡形も無くして付喪神を攻撃すれば奴は手を伸ばすはず。
忘れた人も多いかもしれないが黒口腔には魂を穢す毒がある。奴の手に黒口腔の毒を塗り付ければ、本体が出てくる可能性がある。奴自身が来てくれるから館から離れられる作戦だ。
「おう!問題ねぇぜ!」
「いいですよ。僕と智美さんで別れて運ばせましょう」
「キヒヒッ。使う機会のない呪い。楽しみ」
「火を放つのはわたしがやる」
唐突にそう宣言した真由ちゃんに、その場に居た全員がどう反応していいか少し戸惑う。
「なんで?真由ちゃんが危険を背負う必要ないじゃん」
「約束したよね、自分を大事にするって」
確かにそれは約束したことだった。優等生なら守れる約束は守らなければならない。
それに奴が火を放った人を重点的に狙うという予想だったが、近くに黒口腔を待機させるのであれば問題ない。これは守れる約束だ。
「わかった。放火は任せる」
「愛寿夏ちゃん!?人聞きの悪い言い方しないでよ!」
一時間後。全ての準備が整ったため定位置に着く。私と智美ちゃんが健二に運ばれ、真由ちゃんと直樹君が武君に運ばれる予定だ。
黒口腔に館外から持って来させた油がこの館を湿らせていく。その油特有の臭いが館を包み、そして漏れ出した。火を付ければ一瞬で燃え出すことは想像に容易い。さらに長年放置され渇ききった木材が、始まれば後戻り出来ないことを予見させる。
そして火は放たれた。
「キヒヒッ。腐れ、腐敗の呪い」
「付喪神よ、離れたまえ!」
「ぎゃぁぁぁああああああ!!!!!」
作戦開始と同時に付喪神への攻撃が始まった。付喪神が上げたであろう叫び声が作戦開始のゴングであることを悪霊に知らせる。
その便りを受け取ってか、床下をすり抜けて黒い魔の手が迫ってくる。
運び手の二人は確認するよりも先に庭へ飛び出し攻撃を避けた。それでも魔の手は諦めることなく二人を追い続けた。
「今だ黒口腔!毒液を浴びせろ!」
黒口腔はその命令に従い、口に含んだ毒液を浴びせた。するとどうだろうか。動きが暴れ狂ったものとなり、悲鳴が二重奏となった。遂には物体の透過もせずに自ら館を壊している。
「おい!どうなってんだこりゃ!やったか!?」
「武くんそれフラグ!」
完全に館を崩し終えた辺りでか、一部分だけ盛り上がり何かが出てこようとしているのが見える。位置的に地下室への階段があった部屋のようだ。
一旦全ての手が戻っていき、その後上にある瓦礫全てを宙にぶちまけた。
「汝ら!お掴まりくだサイ!」
宙に浮かび落下する瓦礫を避け続ける。中には燃えている物もあり全てを回避し続けるのは困難だった。それでもなんとか避け切った私達が見たものは規格外の悪霊だった。
一番に目を引くものは腕に抱かれた付喪神だろう。人間の死体というにはかなりの量の死体が増設されており最早原型を維持してはいなかった。だがそれは目を引くだけであって危険ではない。真に恐ろしいのはそれを抱いた老人の霊の方だ。全体的に皺がある白髪の霊。付喪神を抱いて泣いている紳士。ある一点を無視すればただの老いぼれに見えたかもしれない。
その一点とは背後から出ている大量の魔の手だ。生前由来の妄執が具現化したそれは周囲の物を薙ぎ払い、悪霊の周りに一種の空白地帯を作り上げていた。
「ユルサナイ。ユルサナイゾ。貴様ラ。儂ノ可愛イ孫娘ニ何テコトヲ」
その言葉と共に魔の手が一斉に動き出した。視界が開けている分、先ほどより速く正確に手が迫ってきている。それだけじゃない。今までよりも本数が圧倒的に多い。このままでは避けることも出来ず掴まれてしまうだろう。
「キヒヒッ。流石にこの規模は想定外ね」
「うん。というか平時でも勝てなかったと思う」
そもそも呪われたから挑まなければならなくなっただけで、勝算があったわけでもない。これは本当に負けるかもしれない。途中で作戦変更しなかったらの話だが。
遡ること三十分前。
「待ってください。仮にこの作戦通り本体を引きずり出したとしても勝てるわけないじゃないですか」
「て言ってもよぉ。他に何もないだろ」
私達は敢えて目をそれしていた問題に直面した。それが戦力差だ。はっきり言って黒口腔の毒では威力不足だ。チマチマ毒を掛けても直ぐに捕まって殺される。
「そうだ愛寿夏ちゃん。わたしね、この前映画で見たんだけど、バケモノにはバケモノをぶつけるって戦法。使えないかな?」
「キヒヒッ。この辺りで勝てそうな怪異。占ってみるわ」
とは言えここの怪異はかなり強力だ。出没地点だけ見て勝てないと感じさせられる程の実力を持つ相手と同等の存在。隣街まで行けばいるかもしれないが、少なくともこの町では居ないだろう。
「キヒッ。キヒヒッ。キヒヒヒヒッ。見つけたわ。都合のいい怪異。学校の七不思議。【神秘の番人】」
怪異【神秘の番人】。その怪異は他の七不思議全てを知った状態で言及した者を殺す。ただし学校の敷地内だけだ。敷地外なら見逃してくれる。この学校の七不思議はある強力な怪異を封印するために作られた特別な仕組みだ。七不思議の怪異が存命な限り、封印は継続される。そしてこの封印を守る為、封印の要たる怪異について不必要に知ろうとしたものを排除する。と【裏掲示板】に書かれていた。
「まずい。遂に黒口腔が捕まった」
四本の手で上顎と下顎をこじ開けられている。辛うじてまだ生きているが、いつ死んでもおかしくない。それでもその間動きが止まったので十分な働きをしてくれた。
ここからは反撃の時間だ。
虫達に命じて奴が支えにしている手の周りに【ワンホール】の枠を作らせる。そしてその枠の上にあった手は全て落ち、【ワンホール】が閉じると同時に切断される。当然身体を持ち上げていた手が全て無くなったため、下に設置してあった枠に悪霊と付喪神が落ちた。そして【ワンホール】が起動し学校のグラウンドへ落ちる。
悪霊と一定以上離れたため逃亡阻止の呪いが発動し、悪霊達の元へ向かう。
第二ラウンドだ。
そこでは困惑した状態の悪霊が居た。いきなり手が切れて落ちたと思ったら別の土地に来たからだろう。その分動きが止まって非常にやりやすい。
「やりましたよ!奴の頭に直接七不思議を教えました!」
「キヒヒッ。困惑してると幻覚に陥りやすいの」
困惑している内に付喪神に七不思議を直接教えた。そして智美ちゃんが口を操る術で無理やり言及させる。これで条件が整った。【神秘の番人】が降臨する。
「七不思議ニツイテ喋ッタナ。オ前ハ少シ知リスギタ」
「オイ!辞メロ!儂ノ孫娘ニ手ヲ出スナ!!」
【神秘の番人】は付喪神を攻撃する。悪霊は付喪神に攻撃する者に攻撃する。そして【神秘の番人】は邪魔する者にも攻撃する。こうして互いに攻撃して弱ったところで徴収特権を起動し漁夫の利を得る。問題は付喪神の耐久性が低くてこいつだけ死ぬ可能性があることだ。そこは運次第になる。
【神秘の番人】は包帯のような布で眼球を覆った状態で戦っている。その手には一振りの刀が握られている。全身は平安貴族のようなひらひらとした浅緋色の服を身に纏っている。それで刀を振れているのだから驚きだ。宙に浮き、下襲の裾を舞って戦う姿は一人の美しい天人を見たかのようだった。
そうして見惚れている内に決着が着いた。結果は引き分け。どちらも死力を尽くし最後まで戦い抜いた結果だった。徴収特権で付喪神含めて回収することで、当初の予定通り【幽霊屋敷】の悪霊と付喪神、【神秘の番人】まで手駒にすることが出来た。
だが今回【神秘の番人】を使ったことでバケモノにバケモノをぶつける作戦が使えなくなった。もしまたピンチになったら、私は仲間を失わずに生き残ることが出来るのだろうか。
この後すぐ、日記の中身(重要箇所のみ)投稿です。