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◆ coffee ◆

それから1ヶ月後。



「終わったぁ〜…!!」



まるで液体になって溶けるかのように、わたしはノートパソコンの前に突っ伏していた。


というのも、たまたま各授業の課題やレポートが重なって、ここ最近はその提出に追われていた。



そして今さっき、最後のレポートをデータにして添付したメールを先生宛てのメールアドレスに送ったところだ。



グゥ~…



わたしのお腹が鳴る。


部屋の掛け時計に目をやると、14時を過ぎていた。



さっき提出したレポートの期限が今日の15時までだったから、時間との勝負でお昼ごはんを食べている暇もなかった。



せっかくがんばったから、なにかおいしいものでも食べたい。



すぐに思い浮かんだのは、隠れ家カフェ『Gemini』。


ただ、この時間はランチ営業は終了していてカフェの時間。



たしか『Gemini』のカフェメニューに、パンケーキとドリンクのセットがあったような気がする。



日替わりのスイーツが楽しみで、カフェとしての利用のときは遥さんに『いつもの』と言って、決まってスイーツセットしか頼んでいなかった。


だから、パンケーキセットはなんだかんだでまだ一度も注文したことがない。



時間的におやつ感覚で、しかもがっつり食べられるパンケーキ。



そう思ったら、今すぐにでも食べにいきたい衝動に駆られた。



『お詫びに、今度きてくれたときにナイショでサービスするね』



遥さんがああ言っていたとおり、次に行ったときはメニューにはない特製ミックスジュースをご馳走してもらった。



だけど、そのあとに課題とレポートの山に見舞われて、ここ最近まったく『Gemini』には行けていなかった。




季節は、もうすぐ12月。


わたしは上着を羽織ると、軽い足取りで部屋を出た。




あれだけ頻繁に通っていたというのに、久しぶりの『Gemini』となると、なぜかドキドキしていた。



遥さん、わたしのこと…忘れたりなんてしてないよね?



顔と名前を覚えてもらって、家まで送ってもらったこともあるというのに、一瞬そんな不安がよぎった。



まるで秘密基地へ続くトンネルのような狭い通りを入って、開けた中庭へ抜ける。


お店の引き戸のドアプレートには【OPEN】の文字が。



わたしは、こそっと窓の格子の隙間から中をのぞいた。



お客さんは…、いない。


でも、キッチンに人影が見える。



…遥さんだ!



わたしは、お店の引き戸に手を伸ばした。



「…お邪魔しま〜す。お久しぶりです」



ペコペコと頭を下げながら、少し遠慮がちに入る。



「いらっしゃいませ」



すぐにキッチンからだれかが出てきた。



「すみません、最近なかなかこれてなくて。実は、ずっと課題とレポートに追われてて…」



と言って、わたしはそこで口がぽかんと開いた。


てっきり遥さんだと思って話しかけたら、そこにいたのは…知らない黒髪の男の人。



『Gemini』は、遥さんが1人で経営されているはず。


それなのに、…この人はいったい。



「あ…、えっと…。遥さんは…」



わたしがしばらくこない間に、新しく雇ったバイトの人かな?



そんなことを思っていたら――。



「…フフフッ。そんなに驚かれるとは思わんかったな。わからん?遥やで」


「えっ…!?遥…さん!?」



特徴的だった明るいミルクティーベージュの髪色から一変、落ち着いたら黒髪になっていた。



一瞬まったくわからなかったけど、両耳に輪っかのピアスをしているし、顔も声も遙さんと同じ。



「黒髪だったのでびっくりしました…!」


「そうそう、イメチェン。これもこれで似合ってるやろ?」


「はい!雰囲気が変わっていい感じですね」



遥さんに案内され、窓際のソファ席へ。



「みひろちゃん、今日はなににする?」


「今日はパンケーキセットでお願いします。お昼ごはん食べ損ねちゃって、お腹ペコペコなんです」


「オッケー、すぐに作るわ。飲み物は?」


「ホットのカフェオレでお願いします」



久々に、遥さんが淹れてくれるわたし特製の甘々カフェオレが飲める。


それを楽しみに、わたしは遥さんが調理する姿を眺めていた。



『かわいいよ。なんなら、その声聞きたくて、もっといじめたくなっちゃう』



不意に、この前のことを思い出してしまった。



わたしったら…なんでこんなときにっ。



――でも。


なぜかわたしは違和感を感じた。



黒髪にイメチェンした遥さんが見慣れないだけだろうか。


それとも、いつもはアイボリーのエプロンだけど、今日は黒色のエプロンを着ているからだろうか。



今キッチンにいるのは遥さんなのに、…遥さんじゃないような。


そんな気がした。



「お待たせしました。パンケーキセットです」



そうこうしているうちに、わたしの目の前にパンケーキとフルーツが盛られたプレートが出てきた。



「うわぁ〜!おいしそう!」



そのきらびやかな見た目に思わず声がもれた。



空腹のわたしはもう限界。


遥さんへの違和感のことなんて忘れて、さっそくパンケーキを口へと運んだ。



「おいしぃ〜…」



やっぱり『Gemini』は、なにも頼んでもおいしい。



「みひろちゃん、めっちゃいい顔して食べてくれるなぁ」



はっとして横を見ると、遥さんが微笑みながらわたしのことを見ていた。



…恥ずかしい。


すっかり自分の世界へ入っていた。



「ごめんごめん、俺のことは気にせんといて。ゆっくり食べてくれたらええから」



遥さんはそう言うと、キッチンへと戻っていった。



気を取り直して、わたしはカフェオレの入ったマグカップに手を伸ばす。



楽しみにしていた遥さんのカフェオレ。


それをひと口――。



その瞬間、口の中に苦みが広がった。



にっ…苦い。



と、声に出そうなところをなんとか飲み込んだ。



苦いといってもわたしにとってはということで、おそらくカフェでよく出てくるカフェオレの味だと思う。



だけど、いつも遥さんがわたしのために出してくれるカフェオレとは明らかに違った。



でも不思議なことに、この苦いカフェオレも飲めないことはない。


いつも砂糖を多めに入れていたけど、このカフェオレ…おいしい。



それにしても、遥さんがわたしに出すカフェオレを間違うだろうか…?


もしかして、しばらくこない間に…本当に忘れられた?



「あ…あの。遥さん、わたしのこと…」


「ん?みひろちゃんがどうかした?」



よかった、やっぱり忘れられてるわけないよね。


今日ここへきてすぐのときだって――。



『みひろちゃん、今日はなににする?』



って、わたしのこと名前で呼んでくれたし。



とはいっても、さっきから感じていた違和感が未だに拭えない。



だけど、ここにいるのは遥さん…のはず。


なんだか、狐につままれたみたい。



すると、おもむろにキッチンから出てきた遥さんはお店の出入り口のほうへ。


引き戸を開けてなにかをしたら、すぐにまた閉めて入ってきた。



「なにかあったんですか?」


「ん?…ああ、今日はもう店じまいしようかなって」



どうやら、ドアプレートをひっくり返してきたようだ。



「…もう?」


「うん。気まぐれやからな、ウチ」



そう言って、口角を上げる遥さん。



「みひろちゃん、向かい座ってもええ?」


「あっ…はい!どうぞ」



遥さんはマグカップを持って、わたしの向かいのソファに座った。


遥さんと2人でお茶を楽しむ。



今日きてよかったかも〜…!



わたしにとって遥さんを見るということは、テレビの中の好きな芸能人を見るということと同じになっていた。



――カフェオレをひと口。



飲めないことはないけど、…やっぱり苦い!



そのおかげで現実に引き戻された。


向かいに座る遥さんは、やっぱりいつもと雰囲気が違うと。



…でも。


かっこいいことに変わりはない。



「あっ、みひろちゃん。ちょっと待って」



なにかついているのか、遥さんがわたしの顔を見てはっとしている。



「クリームついてるで」


「え?クリーム?」



クリームとは、おそらくパンケーキに添えられていたホイップクリームのことだ。



「動かんといて。取ってあげるし」


「あ…ありがとうございます」



向かいの席からわたしの隣へやってきた遥さん。


そして、そっと顎に手を添えられる。



このシチュエーション…、前にもあった。



『あっ…。みひろちゃん、ついてるよ?』


『…え?』


『ほらっ』



ガトーショコラの粉砂糖がついていて、遥さんが親指の腹で拭ってくれた。



だから、今回も――。


と、思っていたはずが。



「……っ…!?!?」



予想外の出来事に、わたしから声にならない声がもれた。



――なぜなら。



遥さんが…。


わ…、わたしの頬に……。



…キ、キキキキキキ…キスをっ…!!



しかもえくぼの辺りで、なんだったら少しわたしの唇と重なっている…!



「は…、遥さん…なにを……」



慌てて手で口を塞いで後ろへのけ反った。



「なにって、クリーム取っただけ」



そう言って、平然として舌なめずりをする遥さん。



「ごちそうさまっ」



それは…どっちの意味の『ごちそうさま』ですか!?



頭の中が真っ白になるとはこのこと。


突然のことで、なにも考えられない。



慌てふためくわたしを見て、遥さんがクスリと笑う。



「ほんまみひろちゃんかわいいなぁ」



わたしと違って、遥さんは余裕の表情。



「もしかして、今ので俺のこと…意識でもした?」



意地悪く笑った遥さんが、ぐいっとわたしに顔を近づけてくる。


とっさに後ずさりをしようとするも、すでにソファの角に追いやられていて逃げ場なんてない。



やっぱり、今日の遥さん…なにかがおかしい!



…それにさっきのキス――。


少しだけ遥さんの唇が触れたとき、コーヒーの味がした。



横目でテーブルに置いてあった遥さんのマグカップに目を向けると、そこに見えたのは真っ黒い飲み物。


あの濃さは、…ブラックコーヒー!



遥さんはコーヒーが苦手で、いつもほぼミルクのカフェオレを飲んでいる。


ミルクも砂糖も入っていないコーヒーを飲んでいるところなんて、今までに見たことがない。



「どこ見てんの?よそ見しんと、俺だけ見てや」



そして、違和感の原因がもう1つわかった。



それが、遥さんが話す関西弁。


遥さんはイントネーションが関西っぽい感じだけど、今の話し方は街でよく聞く関西弁。



それに、自分のことを『ぼく』と呼んでいるのに、さっきから『俺』と呼んでいる。



「あ、あなた…!だれですか!」



胸板に手をついて押しのけようとしたけど、その手を簡単に捕らえられる。



「だれって、どう見たって遥やん?みひろちゃん」



たしかに髪色が黒というだけで、顔もわたしの名前を呼ぶ声も遥さんそのもの。



やっぱり…遥さん?


…でも、…でも。



自分でもよくわからなくなってきた。



「みひろちゃん、…こっち見て」


「…やっ。…ま、待ってください…遥さん」



こんなところで…ダメなのに。



「こ…こんなところ、もしだれかに見られたらどうするんですかっ…」


「それなら大丈夫。『CLOSE』のプレートに替えたし、それにちゃんと鍵も閉めてるから」



…抜かりない。


もしかして、こういう展開になることを予想して…店じまいを?



――なんて、遥さんがそんなことをするわけない。



だけど、目の前の遥さんはどんどんわたしに迫ってきて。



唇にキスされるまで、あと3センチ…。


2センチ…、1センチ……。



――そのとき!



「あれ〜?表、鍵閉まってたけど?」



突然お店の奥から声が聞こえてきて、わたしは慌てて飛び起きる。



「「いった…!」」



その拍子に目の前の遥さんに頭突きをしてしまい、ゴン!と鈍い音が響く。


あまりの痛さに、2人同時に声をもらして額を押さえる。



「なんか変な音したけど…どうした?」



そう言ってやってきたのは、ミルクティーベージュのマッシュヘアの男の人――。



そう。


それこそが…遥さんだった!



「…え。…え?遥さん…?」


「みひろちゃん…!」



あそこに遥さんがいる。


じゃあ、わたしの上に覆いかぶさるこの人は…いったいだれ!?



「…あ〜あ。バレちゃった」



やる気のない低い声をもらしながら、黒髪の遥さんが体を起こした。



「あの…、あなたはいったい…」


「俺は、友禅彼方(かなた)。遥の弟」


「弟…!?」



遥さんに弟さんがいるなんて知らなかった。


わたしが目を向けると、こくんとうなずく遥さん。



「そう、彼方は弟。言ってなかったからびっくりしたでしょ」


「は…はい。それにしても、兄弟でこんなに似るものですか…?」



まるで同じ着せ替え人形が2体並んでいるように、髪色や服装が違うだけであとはそっくり。



「まあ、ぼくたち双子だからね」


「双子…!?」



どうりで、こんなにも似ているわけだ。


それを聞いて納得した。



「それにしてもみひろちゃんと彼方、そんなところでなにしてるの?」



首をかしげる遥さん。



どう見たって、彼方さんがわたしの上に覆いかぶさるこの状況…。


…怪しすぎる!



「あ…あの、ソファの隙間にボールペンを落としちゃって。それで、拾ってもらおうと思ったらわたしたちの足が絡まってこんなことに…」


「そうだったんだ。変な音もしたけど大丈夫?」


「…はい!お互いの頭がぶつかっただけで」



なんとかそれっぽい嘘でごまかしてみる。



すると、そばにいた彼方さんはニヤニヤしながらわたしのことを見ていた。


まるで、「嘘ついちゃいけないんだ〜」とでも言いたそうな表情。



そのあと、遥さんがわたしにカフェオレを淹れ直してくれて一段落中。



「ごめんね、みひろちゃん。なにも言わずに彼方にお店任せちゃってて」


「いえ。わたしも忙しくて、最近まったくこれてなかったので」



遥さんの話を聞くと、なんとこの3週間ほどカフェ大国であるオーストラリアへバリスタの修行に行っていたのだとか。



隠れ家カフェ『Gemini』は、今から1年半ほど前に遥さんと彼方さん2人で始めたお店。



『Gemini』とは、英語で『双子座』という意味。


双子で双子座である2人にピッタリということで、お店の名前にしたのだとか。



2人で念願のカフェを始めたものの、バリスタという仕事をさらに究めたいと考えていた遥さんと彼方さん。


だから、片方にお店を任せている間に、交代で海外へバリスタの勉強をしに行っているのだそう。



レポートに追われていたわたしが『Gemini』に顔を出せていない間は、彼方さんがお店をまわして、遥さんがオーストラリアへ行っていたということだ。


その前は、彼方さんがイタリアへ勉強しに行っていたと。



「しばらくはどこへも行く予定はないから、彼方と2人でお店をまわす予定なんだ」



…そっか。


これからは、彼方さんもいっしょなんだ。



わたしが『Gemini』を見つけて通い出す前から、ここは遥さんと彼方さん2人のお店。


そうとはわかっているけど――。



遥さんと過ごす2人だけの空間もまた好きだったから、彼方さんがいたらもうそれもないのかと思ったら…。


少しだけ寂しくなった。



「とりあえずぼくは今帰ってきたとこだから、荷物とかいろいろ置いてくるね」



今初めて知ったけど、ここは自宅兼店舗らしい。



遥さんと彼方さんはこの上に住んでいるのだそう。



遥さんがいなくなって、また彼方さんと2人きりに。



「あ…あの、彼方さん…」


「ん?どないした?」



彼方さんはマグカップに残っていたコーヒーを飲み干しながらわたしを横目に見る。



「さっきのこと…。遥さんには秘密にしておいてもらえませんか…?」


「さっきのことって?」



マグカップをテーブルに置く彼方さん。


その口元は緩んでいる。



「さっきって、俺なんかしたっけ?」


「なにかって…!…しましたよね?わたしたち…」


「したって?なにを?」



わたしの反応を楽しむように、彼方さんが上から視線を落とす。



この人…、わたしが言いたいことがわかっているのに…わざとこんな言い方してっ。



「もしかして、さっき俺とみひろちゃんがキ――」


「…うわぁぁぁぁ!それは…してないです!」



慌てて彼方さんの口を塞ぐ。



…キスはしてない!


ちょっと唇の端が触れただけ…!



「それに、どうしてクリーム取るだけであんなことっ…」


「いいやん。ちょっと奪ってみたくなっただけ」


「奪ってみたくって…、だれからですか?」


「遥」



そう言って、彼方さんは人差し指でわたしの顎をくいっと持ち上げる。



「そもそも、なんで俺が初対面のみひろちゃんの名前知ってたと思う?」



たしかに、…言われてみたらそうだ。



「それはな、遥から聞いててん。最近店に、かわいい女の子がきたって。名前は“みひろちゃん”って」



――“かわいい”。


遥さんがそんなことを。



「でも、女性客は他にもたくさんいますし、ひと目見ただけでわたしが“みひろ”だなんてわかるはず――」


「そんなんすぐにわかったで。遥がかわいいって思うコは、俺も同じように思うコやし。双子やねんから」



たったそれだけの直感で、彼方さんはわたしが“みひろ”だと見抜いた。



「みひろちゃん見て、遥が惹かれるのもわかった。やから、奪ってみたくなった」


「惹かれるって…、べつにわたしと遥さんはそういう関係じゃ…」


「でも、好きなんやろ?遥のこと」



彼方さんの言葉に胸がドキッとした。


わたしの心の中を見透かすように、彼方さんの漆黒の瞳がわたしを捉える。



「好きやなかったら、俺にあのことは遥には秘密にしといてほしいなんて言わんやんな?」


「それは…好きとかそういうのじゃなく、だれだって言いますよ。…あんな状況だったら」



しかも、迫ってきたのは双子の弟。


それを目撃したのは双子の兄。



変な言い訳をするくらいなら、このまま何事もなかったかのように話に触れないほうがいい。


だから、遥さんには秘密にしておいてほしかった。



「…ふ〜ん。遥には秘密かぁ~」



意地悪くわたしの顔をのぞき込む彼方さん。


まじまじと顔を見つめられる。



まるで、このままキスされるかのような。



こんな彼方さんが、わたしのお願いを聞いてくれるはずない。



そう思っていたら――。



「ええよ。秘密にする」 



思ってもいなかったその言葉に、わたしははっとして顔を上げた。



「…本当ですか!?」


「うん。遥には言わんかったらいいんやろ?」


「はい…!お願いしますっ」



…よかった。


彼方さんが思ったよりも話のわかる人で。



そう思っていたら――。



「まあ、みひろちゃんが俺の出す条件を飲んでくれたら、やけどな」



ニヤリと口角を上げながら、弧を描いた細い目をわたしに向ける彼方さん。



「じょ…条件って?」



わたしはごくりとつばを飲む。



そんな彼方さんを見て、嫌な予感しかしなかった。

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