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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人蟲

「えっと、はい、夫の話ですね...私たちが出会ったのは、そう、高校二年の頃です。


ああ、いえ、当時から交際していたわけではなく...ええ、二十歳の時の同窓会からでした。


正直言って、高校の時の彼の様子は、腑抜けているというか、活気がないというか...周囲から除け者にされていて...


いえ、いじめがあった訳ではなかったと思います。何しろ誰にも反応しないものですから...今では不謹慎ですが『植物人間』なんてあだ名があったくらいです。


しかし同窓会で再会した彼は、そう、なんと言うか『カリスマ』とか『成功者』とか、そんな印象に変わっていました。そこから、まあ、経緯は割愛しますが、交際し始めまして...


結婚後の彼の様子、ですか? いえ、特に変なところはなく、喧嘩もほぼしなかったですね...ああ、一度だけ、私が子供に蕎麦を食べさせようとした時、すぐ『アレルギーがあるから』と無理矢理止めてきましたね。病院で検査してみると本当でした。今思うと、どうやって分かったんでしょう?


...ええ、前日まで、全く彼は変わりありませんでした。あの日、急に彼が『海水浴に行きたい』と言い出して、私も子供もこんな冬に海に入りたくなかったので、拒否したのですが、彼は、一人で...


...はい、まさか、彼が自殺するなんて思ってもいませんでした。子供たちは、まだ理解していないのか、大丈夫そうですが...


...子供たちについて、ですか? 何というか、三人とも、母親より、父親に似たのでしょうか、下の子なんかまだ三歳なのに自ら教材を欲しがって、起きてる間はずっと勉強してます。もっと子供らしくしてもいいんじゃないかと思いますけどね...


ほら、最近テレビでよく見るギフテッドの子なのかななんて長男の時は思いましたが、三人とも同じような感じですし、テレビで見るような、幼稚園で周りと合わせられない感じでもないんですよね。だから、また別の種類なんだろうと思います。


......ふう...ああ、いえいえ、大丈夫ですよ。最近よく眠れなくて...彼を亡くしたからでしょうが、悪夢を見るんですよ。悪夢というよりかは妄想の追憶という方が正しいですかね。


...一番目を産んだ時は帝王切開だったので、下半身麻酔をしていて、意識も少し朧げでした。無事に取り上げられた時、一瞬開いていないはずの目からナメクジかアナサキスみたいな線虫が溢れ出しているように見えまして...麻酔の幻覚ですが、なんで今更、夢に見るのか...」


海に沈み込むような雨の中、女は語り続ける。

手前の小石に座る人に向けて。誰も、傘を差していない。

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