『道命の読経、五条の道祖神速記のこと』速記談3035
道命阿闍梨は、道綱卿の御子息である。その声は妙味があり、読経の際、聞いている人は皆、速記が書きたくなるという。阿闍梨自身は朗読しているつもりはないのだが、聞いている者は朗読だと思うということである。ただし、女性が大好きなことこの上なかった。和泉式部のもとに通っていたころ、夜中に目を覚まして、読経をしたところ、夢でも見ているものか、部屋の端のほうに老人が座っている。どなたですか、と尋ねると、老人は、五条西洞院のあたりにおります者です。あなた様が読経されるとき、梵天や帝釈天を初めとして、天神地祇ことごとく聞きにいらっしゃいますので、私などは近くに寄ることもできませんが、先ほどは、女性に触れて行水もなさっていらっしゃいませんでしたので、神仏もお出でにならず、私などがおそば近くで速記することができたのです。大変うれしいことです、と答えた。
教訓:阿闍梨、和泉式部のもとに通っていていいのだろうか。