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短編小説「探検家の犬」

作者: 本木涼裕

ある晴れた日、フクキタイヌ族の村に住む探検家の犬モカは、探検の準備をしていた。モカは、村の周りの山や森を探索するのが大好きで、いつも新しい発見を求めていた。いつものように森を探索していると「洋館」が森の中にある。「こんなところに建物なんてあったかな‥」不気味に思いながらもモカは洋館の中に入って行く。


モカは、森の中にひっそりと佇む古い洋館に心を惹かれた。周りの木々に隠れるようにして建っているその洋館は、苔むした石の壁や、ひび割れた窓ガラスが印象的で、まるで長い間忘れ去られたかのようだった。「こんな場所があったなんて…」と、モカは不安と興奮の入り混じった気持ちで建物の奥へ進む。


突然、耳元で「カサカサ」と音がしました。モカは驚いて振り向かう。そこには、モカと毛色の違う探検家の犬がいた。「ごめんごめん、驚かせちゃった?」毛色の違う犬はちょっと照れくさそうに言った。


「私の名前はミルク。君もこの建物に興味があるの?」ミルクがモカに尋ねると、モカはうなずいた。「この建物は、昔のフクキタイヌ族の集会所だったんだよ。最近、ここに何か不思議なものが隠されているという噂が広まっているの。」


ミルクは嬉しそうにモカに事情を話した。

「不思議なものか‥ワクワクワオン!」モカは探検家の血が騒ぐ。


モカとミルクはしばらく洋館の中を探索するが、「不思議なもの」らしき手掛かりはみつからない。


時間だけが経過する中「そろそろ帰らないといけない‥子供にご飯を作らないと!」時計を見て慌てた様子でモカに別れを告げる。


「明日、遠征に行くのだけど、よかったらあなたも来る?」


ミルクは帰り際にモカを誘い出す。


「遠征!楽しそうだワオン!」モカは喜んで遠征の話を引き受けた。


「なら明日、同じ時間に!」ミルクは嬉しそうにその場を去った。


ミルクの帰り際、モカは「落とし物」を拾う。


「時計ワン‥さっきの子のものかな?」不意に時計が開く。


そこにはモカと同じ毛色の小さな犬の「写真」が挟まっていた。


「この写真って‥」モカは自分の時計を開く。


古びてはいるがモカはその時計と写真の同じものを持っていた。


「この写真‥ボク?」モカは驚いた表情を隠せない。


「母さんなの?」ここが過去の世界と確信したモカは当時の記憶を思い出す。


モカの母親はとある遠征の帰り、「キノコノコ」というキノコから発症する「キノドク」にかかってしまう。当時は「キノドク」の治療法が見つかっておらず、母親は還らぬ犬となってしまった。探検家の中でも「キノコノコ」は危険視されていたが、現在は「キノドク」の治療法が見つかっている。


「明日は母さんの命日ワン」偶然とは思えないモカは先ほどあった探検家の犬ミルクが過去の母さんだと思う。


「明日の遠征、母さんを助けるワン」決意を固くしたモカは洋館の前で野宿する。


翌日、ミルクは鼻を頼りに何かを探している様子で現れる。


「おはよう‥君、この辺で時計を見なかった?」ミルクは焦りと悲しみで泣きそうな顔をしていた。


モカはミルクに時計を手渡す。


「あった!よかった!」時計を大事そうに抱きしめるミルク。


「早速、遠征に出かけましょう!」ミルクはモカの手を引き遠征へと向かう。


森を進む2匹の犬。「キノコノコ」は見当たらず、時間だけが進んで行く。


モカはミルクに遠征先を尋ねると、ミルクはこの先に「キャベツ畑」があると言う。


「キャベツ」はモカの大好物で、特に母が作る「キャベツスープ」が好きだった。


「キャベツは子供の大好物で、今夜キャベツスープを作るんだ」


モカは母の思いやりに泣きそうになる。


「キャベツ畑」に近づくに連れて森は深くなっていく。


すると、大量の「キノコノコ」が生い茂るエリアに到達する。


ゆっくりと奥へ進む2匹。


「気をつけてね。このキノコは毒を持ってるけど、こちらから触れたりしなければ危険は無いから」モカに情報を伝えるミルク。


森の出口が見えた時、「キノコノコ」の様子が一変する。


「キノコノコ」は巨大に膨らみ、今にも爆発しそうだ。


危険を察知したモカは「走るワン!」ミルクの手を引き、森の出口へと全力で走る。


「キノコノコ」の毒の発散時期に遭遇してしまった2匹は間一髪、森を抜け出す事ができた。


「キャベツ畑」の光景が広がる。


「ついたワン‥」息を荒げるモカはミルクの様子を見た。


苦しむミルク。毒を吸い込んだ様子だった。


母親の苦しむ姿を見て、「キャベツ畑」の光景を目に焼き付けずに治療に専念するモカ。


鍋を敷き調理したのは「むらさきのスープ」だった。中には「キノコノコ」の一部が入っており、モカはモカの時代の探検で「キノドク」の対策をしていた。「キノドク」は「キノコノコ」の一部を摂取することにより治療することができる。


「顔色がよくなったワン‥」ミルクの様子を見て安心するモカ。


「私、毒を吸ってしまって‥君が助けてくれたの?」意識がはっきりしたミルクは記憶が曖昧なようで周りを見渡す。


「キャベツ畑についたんだね‥」ミルクとモカはキャベツを1つずつ持つと森を迂回して洋館の前へと帰還する。


「今日はありがとう、危なかったけど楽しい遠征だったよ」ミルクとの別れの時間が迫っている。


「よかったら今夜、家にごはんを食べに来ない?お礼がしたいの」ミルクはモカに誘いの言葉を掛ける。


モカは首を横に振る。


「もう少し、この建物を見て帰るワン」モカがミルクにそう伝えると、ミルクは少し寂しそうだった。


「わかった!ならまたね!」ミルクは洋館を後にする。


「よし!」モカは洋館の中に入り、しばらくして外に出る。


「帰るワン」夕日がモカの長い二日間の終わりを告げる。


「ただいまワン!」モカは元気よく家の扉を開く。


「おかえり」モカは優しい声に迎えてもらった。


終わり

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