表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

#記念日にショートショートをNo.7『それが真実の元号であるならば』(If it is the True Era Name)

作者: しおね ゆこ

2019年4月1日(月)エイプリルフール 公開

【URL】

▶︎(https://ncode.syosetu.com/n6476ic/)

▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/n697c0c26b2e3)

【関連作品】

なし

 「おめでとうございます、抽選に当たりました!」

受話器の向こうから無機質な音が告げる。まったく予想していなかった出来事に、思わず「えっ?」と電子音に聞き返す。そんな俺に構わず、電子音が喋る。

「…作成した元号は必ず明日の午前0時までに官庁へファックスで送信してください。…」

聞きながら、置時計の時刻を確認する。タイムリミットまであと14時間。これだけあれば、他の当選者の元号と遜色のないものが作れそうだ。俺はふっ、と息を吐く。やがて電子音が終了し、受話器を元に戻す。テレビの前に置いたままになっていた紙を開き、声に出してもう一度確認する。

「今回の元号は、国民の皆様の中から抽選で選出された10名の方が、1人につき1つ作成することになりました。作成された元号は、官庁職員や皇族を含む全日本国民の投票により、うち1つが選出され、それが新元号として決定します。…」

 紙を戻し、机の前に腰を下ろす。さて、どうするかな。べたなところとしては、「和」「安」「平」「久」などを使ったものだろう。でもそれでは面白味がない。何か他の当選者と差をつけられるような、一捻りも二捻りもしたようなものを……。待てよ、形式は確か不問だったよな……。


 翌朝、新元号の決定を見るために、俺はテレビのスイッチを入れた。官庁からの手紙に、新元号案提出締切日の正午頃に、決定した新元号をテレビで発表するとの旨が書かれていたのだ。まさか選ばれることはないだろうと思っていたので、コーラを飲みながらテレビを見る。

 「…それでは、新元号を発表します。」

その声を合図に、官房長官が伏せていた紙を起こした。

「新元号は、エイプリルフールです。」

手からコップが滑り落ちる。信じられないような気持ちで画面を見つめる。官庁のざわめきがすぐそばにあるように感じる。

「官房長官、下げてください!」

コップを拾おうとした手を止め、画面に視線を向ける。

「失礼しました、只今の新元号は誤りです。」

呆然として、テレビの中の官房長官を見る。

「正しい新元号は、令和です。もう嘘はつきません。」

成和正治は床にこぼれたコーラを黙って拭いた。

【登場人物】

●成和 正治(なりわ しょうじ/Shouji Nariwa)

【バックグラウンドイメージ】

【補足】

◎登場人物の名前について

令和より前の4つの元号(平成・昭和・大正・明治)に使われている2文字目の漢字(成・和・正・治)を組み合わせています。

【原案誕生時期】

公開時

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ