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第二章開始です。
種族クエスト‹紅蓮の不死者›を完了した数日後。
私は、未だに【砂血の大地】にて、ナキオンナやガーゴイル、ギュウキなどの魔物たちを倒していた。
「あ、そうだ、街に行こう。」
そして、唐突に私はそんなことを思った。
腐血の城の謁見の間みたいなとこに王座あるじゃん。
あそこに座って念じると、【はじまりの街】に行けるっぽいんだよね。
そういうところを最終地点、または原初地点と書き、チェックポイントと読むらしい。
ここの魔物共も結構狩ったし、もういいかなって。
AIちゃんのヘルプにも、チェックポイント間の移動は(条件を満たせば)可能って書いてあったし。
こっちから行けるならあっちからも来れるでしょう。うん。
生産型スキルも頑張ってLv上げしてるけど、素材も限られてるし、やれることも限られてる。
自分で作るより、街にあるお店のほうが良いものありそうだし。
作ってる人が専門の人だからね。
だから、街に行こうと思う。
「ふぅ。」
王座に座り、目を瞑る。
―――最終地点、能力行使。
そう願うと、数秒ののち、私の前に半透明の板―――通称ボードが表示される。
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最終地点の能力行使が願われました。
何をしますか?
○ポイント間転移
○課金
○pt確認
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課金は名前のまんま、選択すると課金で課金アイテムをゲットできる。
ゲットしたアイテムはインベントリに移動されるそうだ。
pt確認は、GptとBptの2つを確認することができる。
Gptは良いことをしたポイント、Bptは悪いことをしたポイント、って認識。
他の人のポイントも見れるみたいである。
何を基準にしているのかはわからない。
ポイント間転移は今私が使おうととしてるやつだね。
チェックポイント間での移動ができる。
私は迷わずポイント間転移を選択する。
それとともに、ボードの表示が切り替わる。
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ポイント間転移が選択されました。
現在移動可能なのは1箇所です。
○はじまりの街
⇒転移しますか? (はい・いいえ)
※移動中は身動きが取れません。ご了承
ください。
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はい……っと。
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移動を開始します。
完了まで残り 2 分
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2分かぁ。
短いね。
ヘルプの地図で確認したら大陸が違ったのにね。
というか、他の種族スタート地点もおんなじような距離感だったけどね。
4つの大陸。
主に鬼人族、獣人族、ドワーフ族のスタート地点、【霧の樹海】のある南の大陸、
主に妖精族、エルフ族、小人族のスタート地点、【星々の観測台】がある北の大陸、
主に不死者のゾンビ、スケルトン、リビングアーマーのスタート地点、【腐骨の洞窟】のある東の大陸、
それに、主に不死者の吸血鬼のスタート地点、【砂血の大地】のある西の大陸。
この4つの大陸が、人族の【はじまりの街】のある中央の大陸を囲むように位置していた。
他にも、魔物スタートの人たちがいるから種族は一概には言えない。
が、私のいるここ、【砂血の大地】は、あんまり人がいない。
魔物スタートは勇気がいるからあまりいない、というのも理由の一つではあると思う。
が、その理由の大部分は、この【砂血の大地】に適合する魔物がそうそういないのと、大体のプレイヤーが死に戻りしているからだと思う。
私は例外的にナキオンナを倒せたから良かったものの、ここは何故か魔物のレベル平均が15と、他の初期スタート地点に比べ、異様に高いからね。
その代わりといっちゃなんだけど、倒せた場合、経験値が豊富で、すぐにレベルアップが可能。
新しい種族スキルが来るのがLv.10毎と、遅い腐血でも、十分に戦える仕様になってたわけだ。
魔物のレベル平均が5、と低い【はじまりの街】では、Lvが上がるのが遅すぎて(上がったとしても種族スキルこないし)、雑魚だとか言われているけどね。
ただ単にその種族に合っているとこにいないからでしょうが。
雑魚とか言われるのは心外だわ、ほんとに。
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転移準備が完了しました。
転移します。
10
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下の数字が、10、9、8、7、6……と、少なくなっていく。
足の下にあった魔法陣が光り輝き、その光が私を照らす。
5、4、3、2、1……0。
数字が減っていくにつれて、段々と魔法陣からの光が強くなり、数字が0になった瞬間、目が見えなくなるほどの光に包まれる。
数秒ののち、彼女の身体は【砂血の大地】から消えていた。
***
体を覆っていた光が消える。
「ん……。」
ばっ、と開けた視界に、広葉樹の木の葉が飛び込んでくる。
「うわぁ!?」
ちょっと、ちょっとちょっと。
転移後すぐに葉っぱが顔に当たりそうになるってどういうこと?
慌てて葉っぱを鷲掴みにしたわ。
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Lv.1 木の葉を討伐しました!
討伐報酬:広葉樹の葉 - 小
※討伐報酬をインベントリに転送しました。
ご確認ください。また、討伐したことにより、
木の葉の詳細情報が開示されました。
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え!? あれ、魔物だったん!?
はぁ………
経験値になるなら良いや。
疲れたし、早めに街に入ろっと。
転移した私が出たのは、【はじまりの街】近くの森にある切り株。
あそこがチェックポイントね。
マップに追加されただろうから後で確認しておこうっと。
あー、ちょっと歩いたらまた魔物出てきたし。
蜂っぽいやつ。
装備ボロいね。弱そう。
「ひっ……。」
弱そうでも、私、虫苦手だし。
無理。
インベントリから血吸櫻を出して、ばばっと切る。
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Lv.5 アメニービーンズ(×3)を討伐
しました!
討伐報酬:針(×3)
※討伐報酬をインベントリに転送しました。
ご確認ください。また、討伐したことにより、
アメニービーンズの詳細情報が開示されまし
た。
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アメニービーンズっていうんだ。
たしかにそれっぽい装備だったな。
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呪刀 , 血吸櫻の隠し効果が発揮されまし
た。
アメニービンズがゾンビ状態で復活します!
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「あ、あれ?」
えっ、隠し効果!?
今!?
【砂血の大地】で血吸櫻を使っている時に気づいたんだけど、隠し効果っていうものがあったんだよね。
血吸櫻の隠し効果は、血吸櫻で倒した魔物は、低確率で何らかの状態異常を持って復活する、ってやつ。
それが今出たってことだね。
うん、無理無理。最悪。
「っ……。」
起き上がってきたアメニービーンズをすぐにもう一回倒して、さて、と振り返る。
じつは、さっきからこっちを見ている人がいるんだよね。
たぶん、助太刀しようとしてくれたのかな?
お礼だけでも言っておこうかな、って思ったんだよね。
魔法を使おうと、魔法陣を出してくれたみたいだし。
実は魔法って、魔法陣を出現させるだけでMP食うんだよ。
「あのぅ……。」
人がいるであろうところに声をかける。
すると、氷の剣がすごい勢いでこちらに飛んでくる。
「っ!」
あたる―――
―――と思った次の瞬間、私の横を素通りして、背後から近づいてきていたさっきの蜂の上位版みたいなのを串刺しにした。
それとともに、近くの茂みから、とてつもないイケメン好青年さんが出てきたのであった。