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腐血姫の最強譚 〜自称普通の少女は、VRMMOで無双する、かもしれない〜  作者: おまめあずき
3 世界歴史書(ワールドレコード)クエスト
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65

シルフィード対アスランに戻ります


 血に沈む。


 視界が紅に、真紅に染められる。


 私の中の何かが沸き立つ。


 なにかの枷が解き放たれたかのように、私の体が躍動する。


「あ、は、は」


 私なのに、私じゃないみたいな力で。


 どこか馴染み深い、空気。


 ああ、これは。


 私の城の空気だ。


 城に充満していた、薔薇と血と、封印の匂い。


 濃い、深い、血の匂い。


「ッッッ!?!?!?」


 あれ、髪の毛……こんなに長かったっけ。


 毛先も、赤く染まってる。


 私は、遥か向こうに落ちていた刀を操作して手元にもってくると、自分の手首を切った。


 どぽどぽどぽ、と鮮血が落ちる。


 容赦なく切った私の手は、すぐに再生する。


 紅が、まとまり一つの形となる。


「私は、吸血鬼の女王。」


  ***


 シルフィードさんから暴力的なまでの魔力が溢れ出し、その衝撃波によってふっとばされる。

 ガンッ、と音を立てて止まったときには、もう全てが変わっていた。


 空が変わった。

 夕暮れから、明け星の輝く明朝へと。


 次に、彼女の姿自体が変わっていた。

 腰ほどだった白い髪の毛は伸び、足までに。

 その髪の毛の毛先は紅に染まり、美しいグラデーションを描いている。

 毒々しいまでに真っ赤に染まった唇からは、鋭い犬歯が見えていて。


「ッッッ!?!?!?」

 漸くここで、彼女の種族が吸血鬼であることに気がついた。


 そして彼女は、俺が弾き飛ばしたはずの刀を引き寄せ、自身の手首を傷つける。

 躊躇いなどなかった。

 己を平然と傷つけてみせた。


 その傷は、すぐに跡形もなく消えた。

 だが、その代わりかのように地で血溜まりを作っていた彼女の血が、ぐにゃりと形を変える。

 月型の刃を携えた彼女の、爛々と光る瞳孔の開いた瞳は、赤で。

 まるで獣のように獰猛でありながら、美しい芸術品のようで。


―――ピロンっ


 雰囲気を吹き飛ばすかのような、そんな電子音でさえありがたい。

 彼女の放つプレッシャーに耐えるには、そんなものに出さえすがらなければ、耐えられなかった。


____________________


 #&*?&からの介入が確認されました


    世界が交わります―――


____________________


「は。」


 どういう、ことだよこれ。


「今度は何やらかしてんだあんた…!!」


 そう問いかけようとして。


 いま、無理だ。


「私は、吸血鬼の女王。」


 シルフィードさんの瞳が、俺を、敵を捉えてしまったから。


「私は、生と死を司るもの。」


 こちらを、敵と認識してしまっているから。


 暴力的なまでの魔力が、襲いかかる。





 ***


 “私は、手遅れだったの。”


 “助けられなかったのよ。”


 “だから、貴方は――…せめて、貴方だけは。”


 “間に合って。私ができなかったことを、成し遂げてみせて。”


 “この本は、そのための道標。”


 “いつか、私が貴方に会えたなら。”


 “全てを話すから。”


 “だから今は、ただ”


 “前に進んで―――”


―――鮮血鬼(ルヴィ・レノトワール)―――

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