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更新するのが遅れてすみません…。
「おはようございます!」
「おはよう、シルフィ。」
さて!
結構衝撃的なことも色々あったりしたが、取り敢えず二日目!!
「と、言うことで、今日の方針を固めましょう!」
「だね。」
今の時刻は10時45分。
リツキさんのご事情でやや遅めのログインだ。
「昨日は焦ってて気が付かなかったんですが、【鞭術】が生えてました。」
「おー…まぁ、あんだけ鞭振り回してたらねぇ…。」
改めてステ振りしようとウィンドウ開いたら生えててびっくりしたよ。
「今日は館を見てみようということで。」
「そうだね。
昨日のストーリーイベント、絶対に色々と飛ばしちゃってるからね…。」
繋がりがよく分からなかったとこもあったからね。
多分、イベントのムービーは答え合わせ用のものだったんだろう。……私たちは全く正規ルートに沿ってないけど。
「よーし、ということで【飛翔】!!」
「わー。……結局こうなるんだよね…。」
リツキさんが恥ずかしそうに両手で顔を覆う。
ちなみに、リツキさんは【飛翔】の時、大体私に吊り下げられている様な格好なのでかなり間抜けに見える。
……すいません、でもこうやってしか他のプレイヤーと一緒に飛べはしないんです…。これが一番安定してるんです…。
「…い、一応最高速度で行きますね…。」
「うん……隠蔽は任せて…。」
ギュンッと急加速するが、さすがはリツキさん。
きっちり隠蔽を合わせてくれている。
「隠蔽なしで空を飛ぶと、絶対にチャコが来ることが確認されてますからね…。」
それを検証してくれた配信者の方に合掌。
「そうだね…黒い羽根からして堕天使じゃないかって言われてたけど。
堕天使は悪魔の羽になるらしいからね。…………確実に、堕天使ではないね。」
と、そんな話をしていると一瞬で館に到着。
【優しい風】できっちり着地すると、リツキさんが隠蔽を解く。
「ほえ〜…でっかいお城ですね…。」
「お城……というか館のはずなんだけどね?」
ドーン、とそびえ立っていたのはレンガ調のお城。…館?
うん、まぁ館かお城家はどうでもいいとして、その外観だけならば綺麗だ。外観だけならば。
…そう。窓から見える内装は悲惨で、剣での切り傷や打撲痕、魔法でだろう破壊の跡が庭にあちこち残っているのだ。
「これ、どう考えても…」「プレイヤーの仕業しか無いでしょ。」
本当に何やってるんだ、プレイヤー。
こんなにいい外観の館を壊すとは…。
「鉢合わせ、しちゃったんだろうねぇ…。」
野蛮な奴らめ。
どうせ、己の手柄を取られまいと戦ったのだろう。
……まぁ私も鉢合わせしたら戦うくらいはすると思う。というか、嬉々として参加する気がする。
私の戦闘狂ェ……。
「まぁ、外観がイベント専用エリアとあって壊れてないのが救いかな?」
「ですね。」
そう、この館はイベント専用エリア。
先程までいた教会もそうだが、イベント専用エリアは基本的に余り壊れることがない。
耐久値が高く設定されているためだ。
「……まぁ……。耐久値が高いイベント専用エリアと言えども、流石に無傷とは行かなかったんでしょうね……。」
そう。
本来ならイベント専用エリアとして館の中も耐久値が高く設定されているはずなのだ。
それが壊されているということは……。
「絶対にめちゃくちゃ暴れた人いますよね…。」
私は打撲痕が多く残っている庭を見渡す。
「……………………………………。(これは…やりやがったな…! 絶対にお前だろ打撲痕とか! 相手は【アヌビス】あたりか?)」
「リツキさん?」
さっきから何も言わないけど、どうしたんだろう?
「……あ、いや。うん。そうだな。うん。と、りあえず中に入る?」
物凄い動揺具合で返される。
……まぁ誰か思い当たる人でもいたんだろう。
うん、正直言うと私も居るんだ。というか絶対にあの人だろうな、と。
取り敢えずふれてほしくなさそうなのでふれはしないけど。
「そうですね。外に特に仕掛けはありませんでしたし。」
そう言って元々いた庭のある左側から正面に回り、二人共館の中に入る。
「うわぁ…」
窓から見た時も悲惨なことになっているとは思ったけど、やっぱり実際に見るのとでは違うな。
なんか、もう凄い。
「「虎(さん)…」」
へっ?
「え、今…」
「知ってるの? …あ、アイツは有名だからか。」
PN・虎。
世界ランク一位、【五星龍】ギルマス。
戦闘スタイルは無形。なので基本的に丸腰であり、拳で戦うことも多い。
…彼は周りのものを全て戦闘の道具に変えてしまう。
ただの紐だって椅子だってそこら辺に生えている草だって、花だって何だって彼の道具になってしまう。
だから彼と戦うのはなにもない部屋が望ましい。
ただ、彼は普通に強い。
その状態であっても勝てるかどうか、分からない。
異名―――【獣】。
それが、彼―――虎。
「アイツ、って………もしかしてリツキさん知り合いです?」
「え、あ、うん。…前、おんなじパーティーだったりしたかな?
他の奴らに飼育員だーって言われてたわ…。」
「………。」
衝撃の事実発覚なのですが、取り敢えず。
「―――何の用? チャコ。」
「えへへっ♥」
臨戦態勢で振り返った私の視界には、黒髪に青い瞳、そして小柄な身体に不釣り合いな大きな戦斧を持つ少女―――Chacoが居た。




