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『ナンデ! ナンデ! ワタ、ワタシハ!! アアァアアアアアアアア!! ジャマ、ジャマダァアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!』
いやだいやだと頭を振り、泣きわめく堕天使。
身体は大人の女性のものなのに、その叫びはまるで子供のようで……どこか不気味で、気味が悪い。
堕天使の感情の高ぶりによってマグマの量が増えるが、元のポジションに戻った私たちは次々とさばいていく。
『ネエ、ナンデ! ナンデ! ナンデ、ワタシ、ハ!!』
カタコトで、要領を得ない言葉。
女性の声が、頭をよぎる。
“彼女の場合は―――”
解ってる。
うん。
「リツキさん。ちょっと、行ってきます。」
「うん。」
リツキさんには、先程の攻防の最中に女性の言葉を伝えた。
私が思い描いている攻略方法も、解っているだろう。
残酷で、酷い。
「裏切り、とはね。」
堕天使が堕天した理由。
それは、裏切りだった。
卑劣な、仲間からの裏切り。
何故、それを前所有者が知っていたのかは知らない。だが、彼女の言葉は信じても良いような気がした。
と、いうか、信じないとこちらが何時までたっても劣勢のままなので仕方がないという側面もあったが。
―――“あの子はね、同族に―――天使に裏切られたの。詳しくは、私も知らないわ。…堕天して尚、その羽根の形状を保ったままのところからもわかるのだけれどね。”
通常、天使が堕天した場合は、羽根は悪魔の様な形状になり、天使の輪は赤くなるのだという。
だが、あの堕天使は違う。
黒く染まっただけの羽根に、ひび割れ、砕けただけで、赤くなっておらず、逆に黒く染まっている輪。
―――“だから………彼女の思いの源となるのは……”
「―――羽根」
『ヤメロ、クルナ、アァアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』
マグマが襲いかかってくるが、鞭をしならせ一掃する。
後ろから襲いかかってくるマグマはリツキさんが凍らせてくれている!
私は、インベントリから刀を取り出す。
その性能から、最近では使わなくなってきていた刀。
呪刀―――血吸櫻。
慣れ親しんだその柄の感触に、思わず頬を緩める。
―――行ける。
「【障壁】。」
足下に、【障壁】を展開。
それを足場として、跳躍。
『クルナ! クルナ! クルナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
きれいな咆哮も出せるんじゃん。
「微慈流・弐の型―――【簫瑟】」
丁度、堕天使の真上に来たところで新たな“個人戦闘技”を解放。
風のような横薙ぎの一閃によって、黒い翼は音もなく、根本から絶たれた。




