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腐血姫の最強譚 〜自称普通の少女は、VRMMOで無双する、かもしれない〜  作者: おまめあずき
3 世界歴史書(ワールドレコード)クエスト
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 弱熱の液体となって襲いかかってきた酸。

 もとから酸ということで攻撃力は高い。

 恐らくマグマになってしまっているであろうその塊は、いくつもいくつも現れ、飛んできていた。

「ッッ、【優しい風(ソフトエアー)】!」


 高熱によって変形することを嫌った私は、刀をしまい、丸腰になる。

 攻撃手段が魔法しか無く、その魔法もMP温存の為連発は控えている私はただひたすら避けていた。

 飛翔スキルによって出していた羽根も危ないので消し、不安定になっている飛翔では、すべてを躱しきれない。そのため、時々、風によって方向転換をさせることでどうにか凌ぐ。


「ぐ、うぁ゛ッ……!!」

 だが、時々躱しきれずに当たってしまうものもある。

 その度、私の体は焼け、着実にダメージを負っていた。

 このままじゃあジリ貧だな…!


 見ると、リツキさんも不安定な足場のせいでかなり行動を制限され、私と同じ様な状況にあった。

 このままでは全滅すると思った私は即座に、スカートの隠しポケットに手を突っ込む。

 その手に握られているのは血の入った大瓶。

 ストックが無くなってしまうのは惜しいが、デスペナでイベント中不利になるよりかはいい。

敵役(ヴィラン)にも負けたくないのよ…ねっ!」


 血を操作し、鞭を作り出す。

 刀でもいいが、この状況ではとにかく手が足りない。

 リツキさんの方への援護も考えれば、鞭のほうがちょうどいいのだ。

 …まぁ練度は低いのだが。


「ふっ…………ゔわ……。」

 鞭を振り下ろし、溶岩の塊を叩き落とす。

 ポルターガイストの範疇らしいので叩き落とすことができたが、まだまだ、と言わんばかりに溶岩の塊は浮き上がってくる。

 しかも、叩き落した鞭のほうが少し蒸発してしまっているほどだ。


 やらないよりはマシだし、と魔力コーティングをする。

 ……魔力を感知できたのがついさっきだからね!!

 練習も何もないが、きっちり発動したようで次からは鞭が蒸発しないようになっていた。


 そうすると、少しずつ余裕が出てくる。

 リツキさんは…と少し視線を落とす。


 ―――あ。


「ッッッ……。」

 痛い。

 腕が焼き爛れている。


 リツキさんが気がついていないマグマの塊を払おうとして、逆に当たってしまった。

 全く、失態も失態、タダの間抜けである。

 マグマに追いつくために飛翔を解いた私だが、逆にそのせいで不安定になってしまったせいで当たった。

 馬鹿過ぎる。

 【飛翔】は継続のまま、風で援護すれば良いものを。


 魔法によって傷は塞がってきているものの、痛みは未だ健在だ。

 これで痛覚のリンクは50%だというのだから恐ろしい。


「シルフィ…! 大丈夫!? ごめん、俺のせいで…!」

 休み無く剣を振り続けるリツキさんは、こちらを心配そうに見ている。

 早く回復しなければ。

 今も魔法で援護しているが、本来ならば立場は逆、私が前衛でリツキさんが後衛というポジションなのだ。本来のポジションに戻れば、万全とは言い難いが、今よりかはましになる。

 ただ、痛みにより集中力が途切れ、【血液操作】が満足に行えない。

 鍛錬不足だ。


 ポルターガイストの力が周囲に影響を及ぼしているのか、周りにはぱちぱち、いやバチバチとすざまじいほどの電撃が舞っている。

 しかも切るのはマグマだ、魔力でコーティングして使うとしても、魔力コーティングの練度が低い中、新しい刀を使う気にはなれない。


「…。…」

 【無辜ノ(イノセント)不死者ノ(イモータル)鎮魂歌(レクイエム)】を使うか、迷う。

 だが、まだ一日目。どうせなら切り札は後半に残しておきたい。

 しかも、敵の手札は恐らく残っている。…手札をきっちり把握できていない以上、こちらが切り札を切る訳にはいかない。

 やめよう。


 なら、どうする?

“……ふふ。迷っているの?”

 誰?

 だが、聞き覚えがある。この声は―――


“……堕天使、ね……。”

 ―――教会のときにも聞いた、あの女性の声だ。


“そうだわ、良いことを教えましょう”

 楽しそうに、クスクスと笑う女性。

 姿は見えない。……だけど、なんだか感覚でわかる。

 彼女は、この仮面の―――この、〈闇夜の姫の仮面(マスク)-赤薔薇〉の、前所有者だ。


“堕天使っていうのはね、天界の禁忌を犯してしまったことで成るの。……そうね、この子だったら―――××××××××”

 え。


“天界では、それが正義なのよ。……だから、本当にくだらない。彼女は―――”

 女性が告げる言葉によって、私の中のピースがハマっていく。


 それ、じゃあ。

 ―――カチリ、と最後のピースがハマり、私の中で攻略法が出来上がっていく。


“…ふふふ…頑張りなさい、若き現城主?”

 楽しそうにそう言って、女性の声は消える。


「シルフィ? 大丈夫?」

「…。あっ、大丈夫です! すみません。

 …それより、攻略法が見つかりました!」

「えっっ!?」

 私は、堕天使の方を見据えた。

 痛みは、もう何処かに消え去っていた。


謎の女性……再登場……。


誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。

また、感想なども遠慮なくお願いいたします。

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