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「「…………………………。」」
気まずい沈黙の中、私はリツキさんを抱えて飛ぶ。
それでもきっちりリツキさんから【隠蔽】を施されていて、見つけられることはない。……と思いたい。
「……ちなみに、これからノーヒントだけどどうする?」
「ですよね……」
北斗七星、ということは七つ島があるということ。
それのうちどれのことを指し示しているのかわからないのだ。
「前の文の勇なるもの愚なるもの〜の下りはおそらく正解に行けるかいけないかってことですよね?」
「そうだよね…。ノーヒントだからどうにもならないんだけど……。」
私達は、ちょうど真下に来た七つの島を見つめる。
七つの島のはほぼ同じような大きさで、背の高い杉のような木が見通しを悪くさせている。
―――ん?
「リツキさん、あれ、あの島、何かありません?」
順番としては、五つ目の島。
ちらりと、木々に隠れるようにしてなにか白いものが見えた。
「んん?」
「あの、五番目の島…」
ほら、と指をさして見せる。
「あぁ。…確かになにかあるね。…よし、【水鏡】」
じっと目を凝らしたリツキさんは、魔法を発動させる。
現れたメガネのレンズのように反っている直径一メートル程の円盤。
それにリツキさんが手をかざすと、グニャ、と水面が揺れ、波のようになる。
その波がだんだん収まって、鮮明になる。
「わ、わ、わ…!!」
え、すっっっっっごっ!!
望遠鏡みたいになってる!!
「ん〜、あ! あれ、教会だ!
紋章は………プルージャ教だね。」
プルージャ教。
この世界において一般的な教会組織であり、まぁ、なんというか、普通だ。
例えるなら、そう。
そこまで腐っていない、まだ食べれるそこそこなやつだ。
今の教皇さんが結構いい人だからみたいだけど……名前は、何だっけな。
聞いたことはあるんだけど…。
………あぁ、そうだ! 思い出した。
オムブル・ヴァリアだ。
「降りてみます?」
そんな事を考えながらも、リツキさんに話しかける。
ちなみに、リツキさんが一緒に飛べているのはレベルが上って私のスキル範囲が広くなっているから。
今は……三人くらいかな? 一緒に飛べるようになっているはず。
それも、リツキさんの魔法の補助があってこそだけどね。
なければ二人で飛ぶのも難しいかもしれない。
試してないからわかんないけど。
「そうだね、降りたほうが良いと思う。
このクエストの趣旨は物集め。
より良いものを取ればとるほど高得点になるってやつだからね。
なんなら、教会の十字架でも取ってみる?」
いたずらっ子の笑みを浮かべて言うリツキさん。
「それは流石に罰当たりですよ……。
……ん? …………………あ。」
私はふと、本島の方に目を向ける。
そして、気がついた。
「やけに、派手な戦闘音が、聞こえるなぁとは、思ったけれど……。
これは…流石に。」
「ん? ………あぁ…。暴れてるねぇ…―――『敵』。」
『敵』。
彼らは、このクエストを盛り上げるために運営がプレイヤーから集めた強者たち―――敵役だ。
彼らは挑戦者のプレイヤーたちをキルできる権限をこのイベント限りで与えられており、見つけたプレイヤーを狩りまくっていた。
『敵』は、早くも“二つ名”持ちとなったプレイヤーが起用されていると聞く。
つまり。
…〈籠絡姫〉のチャコも、なんだよなぁ……。
しかも私の知り合いはほぼ全員二つ名持ち。
二つ名持ち=バケモノの式が成り立ってしまうので―――
「―――面倒くさいんだよなぁ…あいつら倒すの。」
私は協会があった島の方に飛行しつつ、小声でそうぼやいた。
このクエストの本来の流れは、
館に行く→
そこでヒントとなる紙を見つける→
紙に書いてあった暗号通りに島へ行く→
そして教会発見という流れになります。
シルフィードたちは館に行かずに島に行ってしまったため、キーとなる話を一つ飛ばしてしまっています。
誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。
また、感想なども遠慮なくお願いいたします。




