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腐血姫の最強譚 〜自称普通の少女は、VRMMOで無双する、かもしれない〜  作者: おまめあずき
3 世界歴史書(ワールドレコード)クエスト
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「…………っぷはっっ」

 思わず止めていた息を大きく吐き出し、また大きく吸う。

 そんなふうに何度か深呼吸をしてから私は顔をあげる。

 顔を上げて、見えた景色はただひたすらに緑。

 大きな森の中であった。


「あ、リツキさん。」

 流石に初手でパーティーメンバーを引き離すような鬼畜外道な所業はしないようで、私は見慣れたリツキさんの姿を見つけて安堵する。

 こちらの姿に気づいたのか、軽く手を振って近づいてくる。


「……シルフィ。その、あの……」

「まず服を変えないといけませんね!」

 私は何事かを言いかけたリツキさんの言葉を遮るように宣言する。

 そして、『なんですか?』と微笑みかければ完璧だ。

「あ、うん……。」

 明らかに気乗りしない様子でウィンドウを操作し、服を取り替えるリツキさん。


「うわぁ……相変わらず似合いますね……。」

 バララキさんのリメイクによって厨二病感マシマシとなった怪盗風の服―――闇夜の怪盗。

 その他に装備しているのは、

 執事の黒手袋、忠誠のイヤリング、紳士の嗜み(黒いぴっかぴかの皮靴)。

 そのうち、忠誠のイヤリングは血腐城ブラッディロードキャッスルから出てきたものだ。

 本当にあそこは宝庫で困る。


「恥ずかしいからやめて……というか、シルフィは着替えなくていいの?」

「あ、着替えます。」

 私はちゃちゃっとインベントリから出した装備に着替える。

 私の方の装備は、堕ちた異端審問官の処刑服 - 赤、執着見せる紅血(くれち)のヘッドドレス、強く地を踏みしめる音(黒の軍靴)。

 動きやすさとお嬢様っぽさを意識したものとなる。

 ちなみにヘッドドレスは忠誠のイヤリングと同じく血腐城ブラッディロードキャッスルから出てきたものとなっている。

 それ以外はローズマリーさんのお店で揃えた。

 強化と付与をばりっばりに施したので元々は堕ちた審問官の服だったのが処刑服に変わったりもした。


「リツキさん、よろしいですか? 付けますよ?」

 私は赤い薔薇の仮面を。

 リツキさんは黒い薔薇の仮面をもって身構える。

 そう、あの厄介な呪い付きの仮面たちだ。

「ほんとこの瞬間が怖いよ……。」

 間違って片方が付けなかったらもう片方は一分たたずに死んじゃいますからね……。

「せーのっ!」

 二人共無事に仮面を着けることができて、ほっと一息。


「よし、じゃあ探索するか!」

「そうですね!!」

 私はアイテムボックス内の【地図】を選択し、取り出す。

 これは今回の支給品。

 その【地図】には、漢字の『天』を歪ませてボコボコにして上が突き出した形の【天回島】が印刷されている。そして、天の下側が北、

 小さい島もいくつか印刷されていて、かなり細かい。

 そして、重要そうなのは北東側にぽつんと描かれた家のようなものだ。


「『北に見はるもの、勇なるか、愚なるか』……ですか。」

 【地図】に描かれた【天回島】の横にあるクイズのような文面。

 まるでぽつんと描かれた館のことを言っているようなものだが、鬼畜運営に散々痛い思いさせられたこっち(主に血吸櫻のせいで)としては、罠なような気がしてならない。


「北……北……。天…天回島………北……天……。北の空……? ……空……。」

 ぶつぶつとそんな事を言いながら、リツキさんが空を見上げる。

「北の空にあるものってなんだ?」

「…………うーん……。」

 北に見はるもの、北、見る、天回島…天…空…?

 つまり、北の空を見る?


「『勇なるか、愚なるか』ってなんでしょう…?」

「間違ったところに行くか、正解に行くかってことじゃない?」

「あぁ…そういう。」


 あ。魔物。

 私は小瓶から血を出して【血流操作】でそのまんまざくりと殺す。

「……あ、魔物……ありがとシルフィ。」

 リツキさんはやっぱり、考え事に集中して気づいていなかったようだ。


「北の空を見る……っていっても、なにもないしな…。」

「……地上の北にあるもの……といえば、この館と砂浜と…あと島だけですね。」

「島? ……ちょっと【地図】見せて。」

 私はリツキさんに地図を渡す。

 すると、リツキさんは何かをなぞり始めた。

「北……はこっちだから……。空……。昼の空? 夜……? 昼……夜なら星か…? 北の空……北斗七星!」

「え!?」

「これ! これだよ! 館の方にあるこの七つの島! これ、北斗七星になってる!」

 私も【地図】を覗き込み、リツキさんが指を指しているところを見る。

 確かに、北斗七星の形に見えなくもなくも……ない。


「行ってみる価値はありますかね…?」

「少なくとも、プレイヤーが殺到しているであろうあの館よりかは。」

 確かに。


 と、いうことで、わたしたちは移動を開始した。

「向こうに館が見えているから、こっちかな? …状態異常にはかかっていないから、大丈夫だと思う。」

 そう言ってリツキさんは先導してくれる。

 ……方向音痴なので助かります……。


「…あ。…………あの〜……。」

「ん?」

「飛んでけば良いのでは?」

 経験値(ヌレオンナ)狩りでは大活躍でしたよね、【飛行】。

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あ。」

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