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―――ピロンッ
「……来ましたね!」
私は少し荒立っている息を整えながら言う。
私達が今いる場所は、『桃錬華』の裏手にある、鍛錬場。
小学校などにある運動場と同じくらいの広さがあるここは、刀を振るうのに最適な場所だった。
………。
裏手というか、マイエリアらしいんだけどね……。
流石はリツキさんの知り合い……。
―――そんな感じで何度も模擬戦を繰り返していると、あっという間に開催時刻になっていたようで、ぴこんと音が鳴る。
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世界歴史書クエスト:亡き令嬢の意思
が始まりました。
キャンセルしますか?
(はい・いいえ)
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勿論『はい』だ。
私は鞘に刀をしまい、こちらも氷の剣を消し去ったところだったらしいリツキさんに目を向ける。
「リツキさん、行きますよ〜。」
今回、わたしたちはパーティー申請をして一緒に参加する。
パーティーで参加するときには申請をしないといけないのが少し面倒くさかったので、GMにちゃちゃっと要望を送っておいた。
ちなみに、この要望は多かったそうで、次回からは改善するそうだ。
「了解。」
返事があったのでそのまま私は『はい』をタップする。
瞬間、まばゆい光に包まれて身体がポリゴン体となる。
「わ!」
痛みはないが身体が崩れていくなかなかの恐怖映像に、見ててくれていたセシルさんとレインさんが驚いたようにこちらを見ている。
二人の体もポリゴン体となっている。
お二方も今回のクエストに参加するのか。
そこまで確認した途端に光が強くなり、反射で目を瞑った。
***
「なぁなぁ、ここどこだ〜?」
「まさか開始早々迷子になるとはぁ〜……。」
「あっしの方向音痴舐めちゃあいけませんぜ〜。」
「ふざけんな葉っぱが。」
男性一人、女性二人のパーティーが、今回の世界歴史書クエストの舞台となる【天回島】でさまよっていた。
「この地図によると〜、明らかに不自然な館があるみたいなんだけどねぇ〜」
一人目は、薄茶色の髪に黒色の瞳の女性。
魔術師姿の彼女は、パーティー『宮崎牛』のリーダー、さよよっぴぃ。
「てかこの森深すぎだろ!」
二人目、赤髪黒目で乳白色の角が一本、額から生えている鬼人の男性、音楽。
赤い和服が似合っているが、武器が西洋風の件なのでそこがアンマッチだった。
「えへへ……。」
「「えへへじゃないでしょ(だろ)!」」
苦笑いをしてやり過ごそうとしたオレンジ色の髪の女性、広葉葉。
盗賊風の衣装にマンチカンのような耳と尻尾がマッチして、幼い雰囲気を醸し出しているプレイヤーである。
ちなみに、このパーティーがこうやって迷子になっているのは彼女のせいである。
このイベントで合流した高校時代の友人であるパーティーメンバー二人は、その自信満々な様子からてっきり斥候役もできると思い、広葉葉に案内をお願いしたのだ。
「もう〜……流石にこれだともう館に向かうのは無理かしら〜…?」
「この森でなにか見繕ってしまおうか?」
う〜ん、と頭を悩ませるさよよっぴぃと音楽。
「異論無―――」
一筋の黒い光が通り過ぎる。
さよよっぴぃたちは物言わぬ骸となり、砕け散る。
「待っててねぇ………♥
シ・ル・ちゃん…♥」
Chakoの過去には何があったのでしょう……。
というか何があれば「♥」なんて使うようになっちゃうんでしょうか…?
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