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七月二十五日。
天気は快晴。気温も二十五度と良好。
今日は学校も休みで、一日中暇(というか、そうなるように調整した)。
VRMMOに没頭するなら最高の日和である。
「よしっ!」
私は、ゲームの機器を身に着け、電源を入れる。
«……ログインが完了しました。カセットを選択してください。»
「『Give you a world of freedom』」
私は間髪入れずにゲーム名を言う。
«……VRMMO、『Give you a world of freedom』が選択されました。
…セーブデータが存在します。セーブデータ:シルフィードでゲームを開始しますか?»
「はい。」
«…VRMMO、『Give you a world of freedom』をセーブデータ:シルフィードで開始します。»
そして、いつものようにポリゴンが崩れていき、真っ白な空間に出される。
«おはようございます。今日のログインボーナス、『ランダムデイリーアイテムパック - N』を配布いたしました。インベントリにてご確認下さい。»
「おぉ〜。今日はアイテムかぁ。」
ここまでのログインボーナスでもらったのは、ビーフジャーキーとかクッキーとか、食べ物系ばっかりだったからね。
食べ物は食べると当然美味しいし、時々効果(一定時間攻撃力増加など)がある食べ物もあるから私は別に良かったんだけど、流石にずっと食べ物だったら苦情とかも来るのかな?
なんて思いつつ、私は血濡れの廃神社に降り立つ。
あれ、なんで此処に―――…あぁ、そうだ。
迷宮攻略後に、私たちはここでログアウトしたんだった。
「まずはリツキさんがログインしてるか確認っと…」
私はステータスボードを呼び出し、フレンド一覧というところに飛ぶ。
「あ、いない。
やっぱし早かったかなぁ…。」
横目で時計を確認する。―――午前7時38分。
「…うん、早かった。」
いつもリツキさんは8時に来るから、ちょっと早かったかな。剣の素振りでもして待ってよっか。
***
剣の素振りをしていたその時、ふわ、と空気が一瞬変わったのがわかった。
そして、そちらに視線を向けると、やはり、リツキさんが降り立っていた。
「おはようございます、リツキさん。」
「あぁ、おはよう、シルフィードさん。」
ふあぁ、と眠そうに一つあくびをするリツキさん。
それはそれとして。
「リ ツ キ さ ん ?」
私が少しばかり威圧すると、リツキさんはしまった、という顔をして言い直す。
「おはよう、シルフィ。」
「はい!」
「…ところで、今は素振り中?」
リツキさんは、私の持つ刀に視線を向ける。
「はい。そうです!」
私が今持っているのは、ただただ刀を模しただけの血液。
これが【血液操作】と【刀剣】、二つのスキルを効率的に伸ばせる訓練なんだよね。
この二つならそこまで負担も感じないし、ね。
「やっぱちゃんとした刀がほしいですよねぇ……。」
「……【東陽の國】なら、あるかもよ?」
…ゔっ。
ちょっと、ほんのちょっとだけゆらぎかけたけど、でも、
「今日世界歴史書クエスト当日じゃあないですか…。」
「…今、8時。世界歴史書クエストは、17時から。
…………行けない?」
こちらをいたずらっ子のような表情で見てくるリツキさん。
「………ん゛ん゛…。行けます、かねぇ…?」
と、いうことで。
私たちは【東陽の國】に向かったのだった。
シルフィードの主な敗因:殺傷能力の高い顔面への耐性が低かったこと




