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―――『虚栄』迷宮隠しフロア攻略、PN✕✕✕(※非公開設定になっています)、✕✕✕(※非公開設定になっています)
「おぉ〜。これが功績表示ですか…。」
自身のステータスボード(半透明の板のようなもの)に表示されているその記載を見ながら、私は感嘆の声を上げる。
『虚栄』迷宮の隠しフロアの攻略後、私、シルフィードとリツキさんは宿屋に戻ってきていた。
「シルフィさ…シルフィが【砂血の大地】を攻略したときもおっきな見出しになっていたけど、見てないの?」
「ちょっとEX種族への進化で頭が混乱してまして……。すっかりその存在を忘れてたんですよ。」
功績表示。
コレは、ゲーム内でのプレイヤー功績を上記のように短文でまとめたものになる。
私とリツキさんは名前を非表示にしていたから表示されていないが、基本、名前が表示されている。
ちなみに、表示するかしないかの設定はキャラクリのときからできるので、キャラクリのときに非表示に設定しておいた私は【砂血の大地】攻略の功績表示のときも非公開になっていたはずだ。
「そっか、そのタイミングで進化したんだっけ。」
「そうなんですよ。」
本当にあのときは驚いた。
だって、種族クエストをクリアしただけでEX種族になるとは思わないじゃん。
「他の種族クエストでは、クリアしただけで種族が進化することはないんですよね?」
「…そうだね。
今クリアされてる種族クエストは、
鬼族の戦士系のクエストと、風属性の妖精族のクエスト。
人族のクエストが戦士系と魔術師系どっちも。
あと、シルフィの吸血鬼と腐血のクエスト。
そして、俺の竜人のクエスト。
その他にも魔物のクエストがあるけど……それは多すぎるから割合しよう。」
ほうほう…。種族クエストの中でも、属性や何系かによってクエストが変わってくるんだよね。
まぁ、人族のクエストが達成されてるのは当然として、風属性の妖精族ねぇ……。
……あれ、知り合いに心当たりがあるんだけども。
あの子だいたい、妖精族とか選んでたよね?
鬼族の戦士系の人は心当たりがないとも言い切れないけど……。
どんな人なのか気になるところだね。
「それで、俺の知り合いが鬼族の戦士系クエスト達成者なんだよね。」
「はい?」
知りたいと思っていた種族クエスト達成者の情報が思わぬところから手に入ったね……。
「俺の知り合いいわく、そこまで変わったことはないらしい。
進化する時に種族クエストを達成したからこそ出てきたみたいな特殊進化先が出てきただけで、EX種族にはならなかったっぽいよ。」
「そうなんですね……つまり、私のところの種族クエストは特殊、と。」
そりゃそうだよね。
クエスト達成するだけでエリア勘破になるんだよ? 特殊じゃないほうがおかしいでしょ。
「そうなるね…。
俺は一応種族クエストをクリアしたけど、それは序章みたいなものみたいだし。
シルフィードさんは…って、これ以上進化できないんだっけ。なにせ、EXだしね。」
「これ以上の進化……。」
本当に出来ないのだろうか、と思う。
だって、運営はこの種族が最高進化系とかそういうことは明言していない。
あの鬼畜運営が明言しないのだ。
なにか無いと思わないほうがおかしい気がする。
うんうんと唸って考えていたら、そんな私の姿を見ていたリツキさんも気がついたらしく、
「……俺も言ってみて気がついたけどさ。本当に進化できないのかな?」
と言った。
「…可能性は無きにしもあらずってところじゃないですかね。
正直、私はEX以上の称号をどうやってつけるのか想像できませんけど。」
いやぁ…ほんとにどうやってつけるんだろう。
単純に好奇心が刺激される。
「…でもまぁ、今は目下の問題をどうにかしないとだね。」
「リツキさんの龍王問題ですね。」
これに関しては早くやらないとマジでまずい。
そのためには、リツキさんがいた大陸に行かなければならない。
「いや、それより先に。
あるでしょ、世界歴史書クエスト。」
「…………………………………あ。」
すっかり忘れてた。




