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遅れました…。すいません。
☆現在、連続投稿中☆
※ただ、作者は書くのがおっそいので、いつまで続くかは不明です。
まだワールドレコードじゃありません。すいません…。
「おはようございます。」
「おはよう、シルフィーd……シルフィ。」
あ、まずい、顔がにやける。
リツキさんに呼び捨てにされたのが嬉しすぎて思わずにやけてしまう。
「はい! ちなみに、今日は…」
「あ、うん……。」
リツキさんはスッ、と目を背ける。
「まだ着てないんですか、あれ。」
私はリツキさんをじとりと見上げる。
「う、だってあれ、はずかしいし……」
「つべこべ言わず着てください!
世界歴史書クエストは、その格好でやるんですよ?
リツキさんの手持ちの中で、一番臨機応変に動けて、強いんですから。」
「うん…」
リツキさんはアレ―――ローズマリーさんの店で買った怪盗のような衣装に身を包む。
「はいどうぞ。」
すかさず私は仮面を手渡す。
そして私は仮面を装着し、それを見て即座にリツキさんも仮面をつける。
「まって、あのさぁ。
仮面をつけるときは言って? この仮面、強い代わりに呪いも強いから。」
「はい。すみません。でも、こうしないと絶対つけてくれなかったじゃないですか。」
「う…」
これまでに何回かこの衣装の効果の程を試そうとして、衣装チェンジしてもらったのだけれど、この下面だけは付けたくないってリツキさん拒否してたんだよね。
もうこうなったら強制的にやるしかないかな、ってね……。
「ま、まぁこの話は後にして。
今日は、アヴィルとピュレを送り届けるんだよね?」
「はい。」
アヴィルとピュレ。
彼らは、大蜘蛛の被害者であり、その娘(?)であった少女の支配下に置かれた五人の内の二人。
私がウイルス感染で無力化した二人だ。
リツキさんが無力化していた三人は、あの戦いが終わった後、霞のように溶けて消えてしまった。
だが、私がウイルスで腐血として生まれ変わらせた二人は残っており、意思もちゃんとあった。眷属化したからといって、その人の意思や人格がなくなってしまう、ということはないようだった。
「アヴィルもピュレも、【東陽の國】出身で、びっくりしましたよ。
というか、都エリアって【東陽の國】に繋がってるんですね…。」
「俺も確認してびっくりしたよ…。大陸移動のメニュー見たら、ちゃっかり【東陽の國】が入ってるんだから…。」
私たちはそう話しながら、誰にも見られないよう、裏路地に入る。
薄暗い路地で扉―――というよりかは門―――を開き、“血濡れの廃神社”に入る。
廃神社エリアに降り立った私たちは、石段を登る。
門をくぐると、必ずと言っていいほどあのクエストが始まった場所に降り立つのだ。
私たちはさっさと石段を登り終えると、神社の境内に入る。
ザッザッザッ、と、境内をほうきで掃く音が聞こえる。
朱と白の巫女服を着用した橙色の髪の幼女―――ピュレだ。
神社の境内は、私たちが暇なときに掃除を進めていったことにより、かなりきれいになっている。
私たちの中でも、特に綺麗好きなのがピュレで、暇なときにはああやって境内の掃除などをしてくれている。
「あっ、シルさま、リツキさま!」
ピュレは私たちに気がついたのか、掃除の手を止めてぶんぶんと手を振ってくる。
「ピュレ、久しぶり。」
「久しぶり。」
できれば『さま』付けやめてほしいなぁ、とやんわり言いつつ、私たちは挨拶をする。
「今日は……そうでした! かぁさまのところに帰れるんでしたね! アヴィルを呼んできます!」
そう言って箒を放り出し、拝殿の中に走っていくピュレ。
「アヴィルー! アヴィルー!」
「あらら…箒、放り出して行っちゃった。」
「それだけここになれたってことだろうね。」
くい、と裾が引っ張られる感触がする。
ん? と思って見ると、そこには黒髪の少女と白髪の少女が手を繋いで立っていた。
「鳳香、氷桜。どうしたの?」
黒髪の少女が、鳳香。
彼女は、松のうろの中に保護した梅柄の着物の少女だ。
彼女は記憶を失っていて、自分が何者か忘れてしまっていた。ただ、氷桜を守らなくてはならないという強い意志だけが残っている、と言っていた。
白髪の少女が、氷桜。
彼女は私が腐血化したあの魔物の少女で、彼女はいつも目をつむっている。
彼女はもともとアラクネだったが、私のウイルスの影響で腐血蜘蛛という種族になった。
そのせいでアラクネが持っていた種族スキル、【魅了】が強化されてしまい、【魅了の魔眼】になっていたので、目をつむっているのだ。
彼女に関しては、親族などがおらず、帰る場所がなかったため、私たちと一緒にいることが決まっていた。
それに伴い、記憶喪失で同じく帰る場所がない(というよりかはわからない?)鳳香も私たちと一緒にいることが決まっていた。
氷桜と鳳香は仲がよく、髪が鳳香は肩までで、氷桜は腰まで、という違いなどは有るものの、双子なのかと疑うくらいには容姿が似ていた。
「「ピュレたち、帰っちゃうの?」」
今日もまるで双子のように声をシンクロさせながらそう言った。
「うん。そうだよ。今日でお別れ。
…でも、氷桜と鳳香がいい子にしてたら、ピュレたちに会わせてあげる。
まずはちゃんとお別れ、できる?」
「……うん。」
「…いやぁ……ピュレと一緒、いいぃ〜…。」
氷桜がぐずぐずと泣き出す。
「あぁ〜。
…大丈夫、大丈夫。いい子にしてればすぐ会えるよ。」
私は氷桜をギュッ、と抱きしめ、ポンポンと背中を擦る。
「うぅ〜…ピュレと、一緒おぉ……。」
「そうだね、一緒がいいね…でもね、ピュレはここにずーっとはいれないの。」
「わか、ってるぅ…けど〜
…一緒、いいの。一緒、いいのぉ!」
あぁ〜、もう、どうしよ…。また泣き出しちゃったよ…。
「大丈夫だよ、大丈夫。」
ふと、横に影がさし、ぽんぽん、と氷桜の背中を撫でる。
「リツキさん?」
私が横目でリツキさんを見ると、目線で任せて、と伝えられた。
「…大丈夫…。大丈夫だよ…」
「ふぇぇ……一緒、いいの…」
「うん。分かってるよ。大丈夫…」
大丈夫だよ、と声をかけてくれているうち、氷桜は泣き止んだ。
そして、私は泣き止んだピュレから体を離す。
「氷桜、ピュレとお別れできる?」
「……………できる……。」
リツキさんの問に、渋々といった様子でこくんとうなずく。
「よし。偉い。」
リツキさんはくしゃりと氷桜の頭を撫でると、立ち上がり、こちらに向き直る。
「ピュレとアベルは神様にお祈り捧げてから来るって。さっきちょっと聞いてきたんだ。
…ごめんね、何も言わず居なくなって。
ちょっと二人の様子を見てくるから、鳳香と氷桜をよろしくね。」
「あっ、はい。すいません、リツキさん。ありがとうございます。」
「いいよいいよ。小さい子の扱いには慣れてるしね。」
苦笑して去っていくリツキさん。
私は鳳香と氷桜を見る。
氷桜は私の手をがっしりと持ち、離さない。
鳳香は地面をじーっと見ていた。その表情は少し不服そうにも見える。
「鳳香?」
「なぁに?」
名前を呼ぶと、声にも不機嫌そうな雰囲気が漂っている。
こっちもか…。
まぁ、鳳香のことは放って置いてしまった私の責任でもあるから仕方ないか。
うちの子たちのお世話は大変だな…、と、すっかりお母さん気分になるシルフィードだった。
・鳳香と氷桜の認識
シルフィード→お母さん、
リツキ→お父さん、
ピュレ→友達
アヴィル→友達のお兄ちゃん的存在
誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。
また、感想なども遠慮なくお願いいたします。




