特殊話 願いよ届け! お星さま☆
遅れました。すいません。
連続投稿の途中で失礼します〜。
季節イベントのお時間です。
ちなみに、時系列としては本編の少し先のことになります。
七夕ですよ〜!
―――ピコンッ
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プレイヤーの皆さまへ
この度は、我社のゲームをプレイして
いただき、誠にありがとうございます。
この度、我々は、プレイヤーの皆さまへ
季節イベントを開催しようと思います。
詳細は、下記の通りとなっております。
奮ってご参加くださいませ。
季節イベント:七夕星まつり
日時:7月7日(金)午前8時〜24時
開催場所:【はじまりの街】大広場
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「わぁ!! おまつり! やったぁ!」
腐血城の王座の間で私はその通知を受け取った。
私がなぜ、玉座の間に居るのか。
それは、ここがこの城で一番ふっかふかの椅子―――王座があるからである。
そこに座りながら【叡智の書庫】で本を読むのが私の日課になっていたのだ。
そんなことより、お祭りである。
7月7日は七夕。北海道では8月7日らしいのだが、まぁ本州の方は七夕である。
そして朗報。
私の学校、体育祭が7月に行われ、しかもそれが7月10日。
振替休日で7月7日がお休みなのである。
まぁ、たとえ学校が休みじゃなかったとしても、まる一日学校休むことは確定してたんだけど。
「それにしても、お祭りかぁ…。あ、浴衣。買わないと。」
あと荒稼ぎもしてこよーっと、なんて言いながら私は大陸間転移で【はじまりの街】に降り立つ。
こっちに飛んで来た木の葉を掴んで経験値とドロップ品に変えつつ、私はさくさくと森の中を進む。途中で出てきたアメニービーンズとかいう魔物もサクッ、と倒し、街に出る。
最初に来たときとは大違いだな、と思い、苦笑いする。
あの時はアメニービーンズについて何にも知らなかったから、安全第一で刀を使ったけど、今はそんな物使わなくても、魔法をちょっと放てばいける。
まずは浴衣。
バララキさんのお店で売ってるかな?
「ええと、バララキさんのお店ってどこだったっけな…。」
私はステータスを表示させ、右上の欄から地図を表示させる。
ステータスの右上には、地図、はてな、用語集などのアイコンが表示されており、とても便利に使わせていただいている。
特に用語集は新情報が記入されることもあるから要チェックなのだ。
「ああ。あそこか。」
私はバララキさんのお店―――『Rosmarins Waffenschmied(ローズマリーの装備屋)』に向かうまでのルートを頭に入れ、地図を閉じる。
流石に開いたまま歩くのはちょっと危ないからね。
マップには、現在地や店名など、細かく記載されており、本当に迷ったときに重宝する。
「んー。バララキさんのお店の裏手は、特になにもない空き地だったよね?」
私は風魔法【隠蔽】を使いながら空を飛ぶ。
「こっちのほうが早いしね。」
瞬く間にお店についた私は、裏手の空き地に危なげなく着地する。
「ふー。」
私はちょっと髪の毛を整えてから入口の方に回る。
するとそこで、私はとある人を見かけた。
「…リツキ、さん?」
「あれ、偶然だね。」
「え、本当にリツキさんですか?」
そこには、何故か髪の毛がオレンジ色になっているリツキさんがいた。
髪の毛の色以外は普段のリツキさんのもので、本当に驚いた。
キャラメイク? いや、あれやり直しできなかったはず…。課金したらできるらしいけど、リツキさん、髪の色以外変わってないしな…。
「あはは…知り合いに会うたびに言われるんだけど、これカツラだよ。」
「え? そんなアイテムあったんですか?」
私が知る限り、そんなアイテムなかったと思うんだけど…。
「うん。バララキが作ったんだ。試作品らしい。」
「ほへぇ…。」
「あら、お二人さん。」
「「バララキ(さん)!」」
お店の中から、相変わらずゴスロリを着たバララキさんが出てくる。
「いやだわ、二人共。バララキじゃなくて、ローズマリーって呼んで頂戴?」
「…なぁ、バラ…ローズマリー。そのロールプレイ恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいに決まってるだろふざけんな」
あ、地声に戻った。
「恥ずかしいならなんでしてるんだよ?」
「姉貴にやらされてるんだよ…。」
「ああ……お前のお姉さん怖いもんな。」
沈黙がその場を支配する。
「……店の中入るか。」
バララキさんがそういった事により、私たちはお店の中に入っていった。
***
「それで、なんの用かしら、リツキ、シルフィードちゃん。」
仕切り直すように女声でそう言うバララキ…いや、ローズマリーさん。
「俺は普通にこのカツラの使い心地を伝えに来ただけだけど…。」
「ええと、私は七夕星まつりで浴衣を着たいな〜、と思って。」
「あら、浴衣? それなら有るわよぉ〜!」
ちょっとまっててね、と言って奥に行き、数十秒で戻ってくるローズマリーさん。
その手には可愛い浴衣を持っている。
「これは、【お祭りの日の向日葵の浴衣 - 水色】よ!
これのほかにも、色々種類があってね〜。
柄は、えーっと、なになに?
睡蓮、金魚、毬、牡丹、鶴、鯉、組紐、朝顔、紫陽花、桔梗、石楠花、藤、笹の葉、蝶、麻の葉模様、椿、花火、幾何学模様、紅葉、鞠、桜、七宝柄。
色は桃色、白、赤、橙、クリーム色、水色、青、紺、緑、深緑、黄緑、黒、紫とかあるみたいね。
というか、これ運営がレシピをくれたのよ〜。」
「今の絶対説明文でも読んだだろ…。」
「いっぱいありますね!!」
思ったより種類が豊富なようだった。
今から選ぶのが楽しみである。
「…そうねぇ、シルフィードちゃんは色素が薄いから、こすぎる色は避けたほうが良いかしら?」
「そうですかね? ………あ。
これって、男性ものもあります?」
「えぇ、あるわよ〜。ちょっとまっててね〜。」
再び奥にいなくなるローズマリーさん。
「リツキさん、七夕星まつりの日って暇ですか?」
「ん〜。実は、お昼まで用事があるんだよね。お昼以降なら暇だよ。」
お昼以降だけか…。本当は一日中遊びたかったんだけどなぁ…。まぁ、そこは我儘言ってられないか。
「あの、お昼以降でいいので、一緒にいけませんか? お祭り。」
「え、俺はいいけど…
本当にいいの?」
友達と行かなくていいの? とリツキさんは続けるが、あいにくとわたしは友だちが少ない。
「はい! どうせぼっちなになるので…。」
このゲームをやっている友達なんて、いないんじゃないんだろうか。
「…あ、ごめん…。」
「いえ! 大丈夫です!」
「ごめんなさい、おまたせしたわ〜。どうぞ!」
と、そこでローズマリーさんが浴衣を手に持って戻ってくる。
「ありがとうございます。」
「ん? 男物の着物?」
もしかして、と視線をこちらによこしてくるリツキさん。
ええ、そのもしかしてですよ。
「リツキさん、ちょっとこれ着てきてください。」
「え、うん。」
***
―――七夕星祭り当日。
私は、赤い浴衣をまとい、髪を結って、会場の前に来ていた。
気付けは出来ないので、私の知り合い(ネッ友)にやってもらった。
着物は、赤い布地に白いお花がいっぱいある可愛いやつ。というか、正月っぽいと友人からは評された。
髪の毛は自分で結ったのだが、友人が髪飾りを貸してくれた。
可愛い造花がたくさんついていて、私の浴衣にマッチしているものだ。
手持ちの髪飾りじゃ似合わないかも、と危惧していたから本当に助かった。
「んと、今は…午後5時34分か。じゃあ大丈夫だ。」
私とリツキさんの待ち合わせ時刻は午後6時。
そして、待ち合わせ場所は会場の前にある広場。ちなみに、会場は商店街である。
周りを見渡すと、お祭りを楽しんで戻ってきたらしき人がベンチに座って休憩しているのが見える。
ただ、カップルが多いので、ちょっと居心地が悪い。
そんな現実から逃げるように、私は【叡智の書庫】を発動した。
〈リツキ視点〉
「―――あー、遅れた。」
現在の時刻は午後6時12分。待ち合わせの時間から12分遅れている。
シルフィードさんどこだ? と広場を見渡す。
すると、端っこのベンチにちょこん、と座り、本を読んでいるのが見えた。
あの本…絶対叡智の書庫で出したやつだろうな。あんな表紙のやつ、見たことないし。
俺は速歩きでシルフィードさんに近づく。
「ねーねー」
「?」
俺がシルフィードさんのところに辿り着く前に彼女に声をかけてきた男性がいた。
彼も浴衣を着ており、チャラ男のような雰囲気を漂わせている。
「君だよ、おじょーちゃん。」
「え、ぁ…。」
シルフィードさんに再びチャラ男が声をかけると、ようやく自分に話しかけているのだと気づいたらしく、本を閉じる。
「一人〜? 俺と一緒に回らない?」
「え…嫌です。待ち合わせの途中だし…。」
ややはっきりと、シルフィードさんが拒絶の声を出す。
そこで、俺は後ろから声をかける。
「ごめんね、遅くなった。あれ、こっちの人は?」
…正直、自分でも白々しい問になったと思う。
「ぁ、ええと…。」
シルフィードさんが目の前のチャラ男をどうにかして説明しようとあたふたする。
「あれー? 彼氏さん?」
「っ!? ぇぁ、ちが…ぁ、知り合ぃ、そう、知り合いです!」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にして否定するシルフィードさん。
うん、まぁ彼氏ではない、かな。
「それで、君は……。」
「あ、あー! 居た!」
突如、後ろから声が聞こえる。
振り返ってみると、ピンク色の髪の毛を結い上げ、白い布地に赤と紫の花が咲いている浴衣を身にまとっている少女が居た。
その少女を見て、チャラ男は少し残念そうな顔をして、
「あれ? 俺の方も来ちゃったみたいだ。ばいばい、シル。」
と、シルフィードさんに声をかける。
…シル? シルフィードさん、名前教えてなかったよな?
「あ…うん。またね、セイ。」
シルフィードさんはそう返すと、少し喧嘩のようにじゃれ合いながら居なくなっていく彼らを見送っていた。
やがて彼らが居なくなると、俺はシルフィードさんに声をかける。
「……知り合いだったの?」
「ぁ、はい。……ええと…。」
そう言って、すすす、と近づき、耳打ちをしてくる。
「あの子、【青の道化師】なんですよ。」
「えっっ!?」
俺は驚きのあまり、大声を出してしまう。
「しー!」
「ぶ、【青の道化師】!? あの子が?」
そういえば、チャラ男と言うには随分幼く見えたような…。
「あぁ…あの子、まだ高1ですからね。しかも結構童顔。」
高1なのか。……高1!? 高1であの幼さ!? 中2に見えたわ…。
「あの……【青の道化師】―――セイのことはおいといて、星祭り、まわりません?」
「あ、あぁ、ごめんね。いこっか。」
そうして、俺たちは星祭りに繰り出した。
***
「……ふー。満足ですっ!!」
「あはは、それは良かった。」
私たちは、すっかりお祭りを楽しみ、最初の広場に戻ってきていた。
「VR空間なので、カロリーを考えずに食べられるって良いですよね…。」
「いっぱい買ってたけど、お金大丈夫?」
りんご飴、かき氷、鈴カステラ、たいやき、クレープ、フローズンいちご、みたらし団子&あんこ団子……。見事に甘いものばかり。
現実世界だったら確実に太るであろう量だし、よくこんなにたべられるなぁ、と自分でも感心したものだ。
確かに、買いすぎた気がしないでもない。
「いっぱいナキオンナを倒しましたから!」
そのせいでナキオンナが、というか【砂血の大地】の魔物が減少してしまっていたしなぁ…。でも、お祭りのためだ、仕方がない。
「哀れナキオンナ…」
「というか、リツキさんは食べないでよかったんですか?」
「あぁ、うん。俺は基本的に遊び目当てだったから。」
そう!
遊びといえば、“地獄射的”と看板を掲げた屋台があったのだが、その屋台の的は動くし、球を風で煽るし、と正直現実だと通報するだろう鬼畜だったのだ。
その屋台の景品をいともたやすく取ったのがリツキさんである。
それも、お面屋さんで買った狐のお面を被ったまま。
次々と景品を撃ち落とし、最後には店主から土下座まで頂いていた。
「地獄射的では、すごかったですしね〜。」
「………あぁ、そうそう。シルフィードさん、短冊書いた?」
「あっ。あからさまな話題そらし。……書きましたよ。」
私は入り口で配っていた紫色の短冊を見る。
そこには、こう書かれている。
“この一年、平和にのんびりゲームできますように。”
「逆に、リツキさんはなんて書いたんですか?」
「ん? ひみつー。」
「え!? ひどい! 見せてくださいよー!!」
私はリツキさんの短冊を見せてもらおうと飛びかかる。
「だーめ。」
リツキさんはそれをひらりとかわし、私が届かない高い位置の笹の枝に引っ掛けた。
「むー。」
私も近場の枝に短冊を引っ掛ける。
「叶いますよーに。」
なんだか、かなわない気分にもなりながら、私はお祈りする。
そんなシルフィードの頭上で、一枚の短冊が揺れていた。
―――“シルフィードさんと一緒に、楽しくゲームが出来ますように。”
お祭りの中身ももう少し書きたかったのですが、ちょっと作者の体力的に無理でした…。
申し訳ございません。
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第一回七夕星まつりの短冊
〈説明〉
紫色の短冊。星の透かし文様が入っている。
〈効果〉
特になし
所持者…???
耐久値…30
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誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。
また、感想なども遠慮なくお願いいたします。




