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☆現在、連続投稿中☆
※ただ、作者は書くのがおっそいので、いつまで続くかは不明です。
私は、お姉ちゃんと二人暮らしだった。
いつからだったのだろう。
そう。思えば、両親と暮らした記憶がない。
私とお姉ちゃんは4つしか年が離れていない。
4歳の子供が生まれたばかりの赤ん坊を育てられるわけがない。
でも、姉は育てきった。
二人だけだったけど、でも、いや、だからこそ。…幸せだった。
お互いの誕生日にはショートケーキを買って、歌を歌って。
お休みの日には、二人で近くの開けた草原に行って、遊んだりした。
同い年の子たちと比べたら、貧しかったかもしれない。
でも、私は満足していた。幸せだった。
―――私が八歳になった時、姉が失踪するまでは。
「だれ、それ。」「ん? ◯◯ちゃん、お姉ちゃんなんかいたっけ?」「あれ、そんな名前の人、うちのクラスにいたかしら?」「◯◯ちゃん、大丈夫? おかしくなっちゃった?」「ねぇ」「お姉ちゃんなんかいないよね?」「あら、あそこにそんな子いたかしら?」
それは、まるで姉の存在が世界から消えてしまったかのようで。
なんで? なんでなんでなんでなんで? お姉ちゃん。お姉ちゃん! お姉ちゃん!!
なんでいなくなっちゃったの? わかんないよ。
今日、知らない人が家に来たよ。
入らないでって言ったのに、勝手に入ってきて。
家から追い出されて、知らないところに入れられちゃった。
おねえちゃん。
お姉ちゃん、お姉ちゃん…………
……あれ? ここどこ?
ジメジメしてる……。神社? あれは、鳥居?
……あれ…? お姉ちゃん?
その人、だあれ?
なんで、泣いてるの?
ああ、その人、私たちのお母さんなの?
お姉ちゃん? 体が、すけて…
消え、ちゃった? …どこ、どこに居るの? 隠れんぼ? ねぇ…。
あれ? お母さん?
抱きしめてくれるの?
わあい。やったあ………………―――
…あれ、私、誰だっけ。
なんで、コこにイるんだっけ。
もウ、なンにもわカンなイ……。
***
―――……び、っくりした……。
いきなり目の前でムービーが再生されたのだ。初めて見る人は誰でも驚くだろう。
おそらく、今のはこの少女の記憶なのだろう。
そして、大蜘蛛を母親として認識している。
彼女の姉は、おそらく大蜘蛛に食われており、この空間に少女が入り込んでしまったことに涙した。…姉は妹を守りきれなかった無念から、亡霊のたぐいになってしまったのだろう。
だか、ここで引っかかるのは2つ。
四歳しか年の違わないこの姉妹が、二人だけで生き残れるほど、この世界は生易しいものなのか、ということだ。
この世界には闇市場や奴隷等があると聞く。
幼い少女たちは格好の餌だっただろう。
もう一つは、大蜘蛛を母と認識していたのはなぜか、ということだ。
大蜘蛛が幻覚を見せているのならわかるのだが、それならあの黒髪の赤い着物の少女はどうしてその支配から逃れられたのか、ということになる。
見たところ、二人の少女の魔力に殆ど差はないようだった。
たまたまうまく噛み合わさっただけ、と捉えることもできるのだろうが、あの鬼畜運営がそんなことで終わらせるわけがないと思った。
だが、まぁ。
目の前で消えていく命をどうもしないというのは少し良心が痛む。
記憶も除いてしまったことだし、色々と謎もあるし、ね。
「【ウイルス生成】」
[スキル【ウイルス生成】により、???(Lv.??)が『二種混合ウイルス(ゾンビ×ヴァンパイアver)』にかかりました。]
私はスキルを発動し、少女を腐血(吸血鬼と腐乱者のハーフ)にする。
ぎりぎり死ぬか死なないかの瀬戸際だったからね…。成功してよかったわ。
「ぁ……え……?」
少女は驚いたように目をみはるものの、流石に体力の限界が来たのか、ふっ、と体の力が抜け、倒れていく。
「危ない危ない。」
私はとっさに少女の体を受け止める。
これで、一件落着、かな?
「…ぇえ…。あー。しちゃうんだ。あー。うん。」
苦笑しながらリツキさんが私に近づいてくる。
「お疲れ様、シルフィードさん。」
「はい。お疲れさまです。リツキさん。」
―――ピコンッ
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変質クエスト:しあわせなこのゆめに,
母親と少女の慟哭
が達成されました。
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長かったようにも、短かったようにも感じれた初クエストが終わった音がした。
クエスト・完!!
ということでその後のお話を二話ほど書いてから次章に突入したいと思います。
まぁ、世界歴史書イベントの方に行くだけなんですけれども、はじまりの街からは一応離れますからね……。あ、この章でもほぼほぼはじまりの街要素なかったか…。
すいません。
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