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☆現在、連続投稿中☆
※ただ、作者は書くのがおっそいので、いつまで続くかは不明です。
―――左、下、右斜、左上、右下、上、右、右、左斜、下、右上、左斜、上、右下、左、左上、右下、上、右、下、左、右下、上、右、左斜、下、上、左、左斜、下…
「や、っすむ、ひま、ないっ、ねぇ!」
私は無限に湧き出てくる狼たちを刀で切り裂きながら前進していく。
ただ、狼がめちゃくちゃ出てくるせいで、あまり前に進めない。
少女の放ってくる魔法をリツキさんが受け持ってくれているだけマシだけど…。
と、思考を少し他のところに向けた瞬間。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
「う、っしろかよ!!」
すかさず意識の隙間を縫ったように移動してきた狼が雄叫びを上げながら襲い来る。
「アッッハハッッッ!! アッヒャヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」
「っ〜!! シルフィード、さん! これ以上は、多分、無理だ!」
リツキさんが悔しそうに顔を歪めながらそう言う。
じわじわ、と私たちが押されてきていることは知っている。
狼達に対してあんな啖呵を切ったのに、恥ずかしい…。
だが、この劣勢から抜け出す方法はある。
……それをすると、私が使い物にならなくなってしまう可能性がある、というだけで。
「もう少し、耐えれませんか!?」
「ご、っめん! 難しいかも!
でも、どうにかしてみ、るっ!!」
リツキさんも、私も。
すでに体力の限界が来ている。
それでもこうして戦っているのは、意地とプライドのおかげだ。
負けたくない。
負けたくない。
狼が、息を揃えて一斉に襲いかかってくる。
「なめんなよ、ワン公ども。」
私はとっさにしゃがみ込む。そして、私に喰らいかかるために姿勢を低くしていた狼達を切る。
狼がポリゴン体となって消えているところをめがけて滑り込む。
狼達の包囲網を脱出したところで、私は詠唱をする。
「【特大超火魔球】!」
ばあん、と後方で大きく弾ける。
その爆風が背中を押してくれる。
そんな昔っからの常套手段。
「こんにちは、っっと!」
私は少女の目の前に着地する。
「アヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!」
少女のうつろな目が私を捉える。
「やぁーっっとこっち向いた、かっっ!」
未だ、少女の足元から湧き出てくる狼を切り捨てる。
少女の手が上がる。
たったそれだけの動作で、少女の手のひらから魔法が生み出される。
「どんなチートよ、それ……っ!」
少女の周りは、狼の発生源だけあって危険だ。
しかも、こう私が至近距離に居ると、少女に向かって魔法を放ちづらい。
なら、リツキさんはどうするか?
「助太刀、するよ。」
私が取りこぼした狼を屠る氷の剣。
リツキさんだ。
オールラウンダーなリツキさんのことだ、遠距離がだめになったと知れれば、この距離に来るのは解ってる!
「すいません、ちょっと行ってき、ますっ!」
「行って、らっしゃい!」
私はリツキさんが合流したことによって、少し乱暴に血路を開く。
―――少女まで、残り3m。
思考を、回す。
刀を、振るう。
切る。切る。
―――少女まで、残り2m。
息をする。
足の下で砂利の音がする。
回せ。
思考を回せ。
―――少女まで、残り1m。
嗚呼、やっと―――思いついた。
「…ッ微慈流・壱の型 【五月雨雫】」
どこまでも、どこまでも、優しく。
相手が、切られたことにすら気づかないほどに。
雨の雫が空に舞うように。
私は、少女の魔物核を切る。
…これが、私の剣だ。
〈用語〉
◯魔物核について
幽霊、または不死者系の魔物が持っているもの。
幽霊や不死者は、この核が破壊されない限り復活してくる。
序盤の森の夜に、幽霊や不死者系が出てくるので、プレイヤー内では周知の事実となっている。




