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シルフィード視点に戻ります。

少女少女と紛らわしくてすみません!

うろの中にいる女の子のことは梅柄の着物の少女、

蜘蛛に足を貫かれていた女の子は普通に少女、またはワンピースの少女と表記しています。

ご了承ください。

また、作者は戦闘描写が苦手です。温かい目で見守ってくださればと思います。


☆現在、連続投稿中☆

※ただ、作者は書くのがおっそいので、いつまで続くかは不明です。


 少女の悲鳴を聞き、私とリツキさんが松の木のうろのところに戻ってきた時、彼女は壊れていた。

「……かぁ、さんを……殺した……。敵……。討つ………討たなきゃ……殺さ………や……嫌……母さん……殺…殺………殺す、殺ス、殺ス殺ス殺ス…!!」

 小声でブツブツとなにかをつぶやき、もうひとりの少女が声をかけても、肩に手をおいても、反応しない。それどころか、手を振り払う始末だ。

 まるで操られているかのように、殺す殺す―――と言い続けている少女の目には、光が宿っていない。


 唐突に、少女がすう、と手を上に上げる。

 その手を見て瞬時に意識が切り替わり、思考がクリアになる。す、と腰を低くして身構える。

 私たちは、尋常ではない魔力が込められたその手が振り下ろされると同時に後ろに飛び退った。


 ズバッ、と先程まで私たちがいた石畳が深く切り裂かれ、えぐれている。

 あと、数秒。

 反応が遅れていたら、私はこの一撃で死んでいただろう。


「ア、ハ、ハ……ア、ハハハハハハハハハハッ!!」

 少女の黒い瞳から、ぼとり、と黒い水滴が滴る。その水滴は、彼女の着ているボロボロの白いワンピースに染み込む。

 光を宿していないその瞳はどこまでも吸い込まれそうに深く、黒い。その奥深くで、私たちを絡め取らんとうごめいているナニカがいる。

 裂けるように弧を描く口からは、狂ったような哄笑が響き渡る。


 そして、少女の背後から、梅柄の着物の少女とは違う魔力反応がする。

 二、三、四……五人か。

 暗がりから現れた少年少女、合計五人。その顔は、どこか見覚えがあるものだった。

「……鳥居の下にいた…あれはこういうことだったのか…!」

 リツキさんがそうつぶやく。

 そう、この五人は鳥居の下で積み重なるように倒れていた十数人のうち、比較的身体損傷が激しくなかった数人だった。

 彼らも、前に立つワンピースの少女と同じように眼には深い深い黒を、口は裂けているように見えるほど釣り上げていた。

「【鑑定】。」

 私は彼らを見た途端に【鑑定】をする。もうほぼ癖のようになっていて、本当に助かる。


 鑑定結果が開示された瞬間、

「…へヒッ!」

 五人の中の一人、一番年上の青年が気勢を上げながら私に向かってどこから持ってきたのかわからない剣を横薙ぎに振るう。

 私はその一撃をしゃがみ込むことで避け、瞬時に残っていた血で刀を作り出す。ただ、先の戦いで多くの血を使って魔法を発動したので、量が心もとなく、刃渡りが少し短い。

 そんな私の事情なんて知ったこっちゃない、というふうに、青年の隣に立っていた十二歳位で橙色の髪の少女が両手から【爆発魔球(ファイア・ボム)】を放つ。

 それを私は自分自身も【爆発魔球(ファイア・ボム)】を下に放ち、飛び上がることで避ける。私が避けた【爆発魔球(ファイア・ボム)】は後ろの松の木に当たり、めぎめぎめぎっ、とすざまじい音を立てて木を倒す。

 その時には、私は青年たちの頭上を通って背後を取っていた。青年が完全に振り向く前に、私は二回刀を振るう。

 それは狙い違わず、剣を持った青年と橙色の髪の少女の背中を切る。

 それを見て私は青年たちの間を縫うようにして通り抜ける瞬間、スキルを発動する。


「【ウイルス生成】!」

 その声とともに赤黒い霧が私の周辺に現れる。

 私が今回選択したのは『二種混合ウイルス(ゾンビ×ヴァンパイアver)』。別にどのウイルスでも良かったんだけど、後遺症が残るかも知れないってことを考えたらやっぱりこれだな、と思ったからだ。


「ゔ、ぐぅ、ぁああ!」

「ひぎっ! ぎ、ゔあ!?」


[スキル【ウイルス生成】により、アヴィル(Lv.18)とピュレ(Lv.20)が『二種混合ウイルス(ゾンビ×ヴァンパイアver)』にかかりました。]


 その戦闘ログとともに、背の傷口から二人がウイルスにかかり、少し苦しげに唸ったのを確認し、私は仕上げにもう一つのスキルを口にする。


「【眷属生成】。」


[スキル【眷属生成】の対象が選択されました。]

[対象の精神状態が正常ではありませんでした。スキル【眷属生成】の効果により、アヴィル(Lv.18)とピュレ(Lv.20)が貴方の眷属となりました。]


 よかった……。これで私より強かったらどうしようかと思った……。

 【眷属生成】は対象の精神状態が汚染されており、なおかつ術者()と対象の間に戦闘能力の差があれば(私が強いときに限り)強制的に眷属にできる。

 ちなみに、自分と同格の人もだめなので、リツキさんには効かない。


「ゔ、あ……。」

「ひ…。…ぁ…。」

 私の眷属となった二人が、戦闘の意思はないとばかりにだらりと手を下げる。

「アヴィル、ピュレ。そこの松の木のうろのところにまで下がっていなさい。自衛は許可します。」

 私は二人に指示を出し、大人しく二人がそれに従うのを見てから振り返る。


 リツキさんは残りの三人(ワンピースの少女も含めたら四人)のうち、二人を近くの松の木の幹に氷の釘で磔にして動けなくし、残ったもうひとりの青年と打ち合っていた。その青年ももうだいぶ動きが鈍くなってきており、リツキさんの勝利も目前であろう。


 ほ、と一瞬安堵に息をつき、そこから意識を切り替え、ワンピースの少女に目を向ける。

 ワンピースの少女は他の五人が私たちにやられているのにも関わらず、ずっと虚空を見つめ、ケタケタと嗤い続けている。

 少女がふと、こちらに視線をよこす。

 丁度、がぎん、と鈍い音を立ててリツキさんが青年の剣を弾き飛ばし、氷の釘で松の木に磔にするところだった。


 私はリツキさんの方を向いた少女に向かって肉薄し、刀を振るう。

「けひ、くふふ、アハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 狂ったように―――否、本当に狂っているのだろう―――嗤う少女。

 その体の魔力が、膨張する。

 膨張した魔力が、私の刀を受け止め、弾き返してくる。


「ぐっ……!」

 押し返された反動で、バランスが崩れそうになるのを足に魔力を集めることで回避し、ぐっと力をためてから飛び上がる。

 私がその場を離脱したのを見たリツキさんがすかさず【氷の矢(アイスアロー)】を放つ。

 だが、リツキさんの魔法も黒い靄のような形をしている少女の魔力によって弾かれる。


「【優しい風(ソフトエアー)】!!」

 着地の寸前、足にダメージが入らないよう、魔法を放つ。

 落下の衝撃が緩和され、大したダメージもなく着地した私は少女の方に向き直る。


「アハ、サバ、裁キヲ! 裁キヲ!! アヒッ、アハハ、裁キヲッ!!!!」

 少女の声に呼応するように膨張していく魔力。

 その魔力が、一つの形を形どる。


 文字だ。

 書庫で、見覚えがあった。

 あの曲がりうねった形状の文字は―――古代文字。


「裁、キヲッッッッッ!!!!!!」

 少女の内側から黒い魔法陣が現れ、回る。

 五角形と円が交わったような形をしている魔法陣は、中心に箒星が描かれている。

 ぐるぐると、回る。回る回る回る。

 回るたびに、古代文字が魔法陣に宿っていく。


「『愚か者に(ジャグ・)裁きを(フール)

罪深き者に(シィーヴィ)救いを(・セナー)! 

開くは(オン・)闇深き(ディーヴァ)審判の(・ジャジ)(ルミュ)!!』」


 少女が古代語を発する。

 途端に魔法陣が膨れ上がり、私たちを包み込もうとする闇が現れる。


「「【障壁(ウォール)】!」」

 とっさに私とリツキさんで二重の【障壁(ウォール)】を張り、闇を遮断する。

 すると、闇は私たちを包み込むのを諦めたのかよってこなくなったが、代わりに周りにどんどんと広がっていく。


 少女が指揮者のように両手を掲げ、振り下ろす。

 それとともに少女の影から現れたのは黒い狼たち。


(サバ)キヲッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 少女が私たちを指してそう叫ぶ。

「「「「「GYAAAAAAAAAAA!」」」」」

 それに応えるように、黒い狼たちがこちらに向かって来る。


「行ける? シルフィードさん。」

「ええ。もちろんですよ!」

 私はリツキさんにそう返し、【障壁(ウォール)】から出る。


「どっからでもかかってきなよ、ワン公ども。」

 私は刀を構え、ニィ、と唇をつり上げた。


注・シルフィードは戦闘狂です!


誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。

また、感想なども遠慮なくお願いいたします。

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