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詠唱を考えるのには苦労した今話です……。
どうぞ…。
「ひっ!? っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私は思わず悲鳴を上げそうになるのを、唇を噛み、必死でこらえる。顔が引きつる。ぶわりと、体中から嫌な汗が伝うのがわかる。
見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。
そう思っていても、見なきゃいけない。そうしないと、いつ、どこから攻撃が来るのかわからないから。
隣を見ると、リツキさんの顔も引きつっている。
―――蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛………。
……………今、私達の目に映っているのは小さな蜘蛛の大群。
それも、数十、数百という単位ではない。数十万……下手したら数百万匹もいるかも知れない。
そんな蜘蛛の群れが私達の目の前に現れた。
「【かんて、ぃ】…。」
この状況でこの声を絞り出しただけでも褒めてほしい。
程なくして、数十匹の蜘蛛の情報が頭に流れ込んできた。
あまりの情報量に、脳がショートしかけるが、そこは気合でどうにかする。
一匹一匹は小さい。しかも、私が少し手ではたいただけて死んでしまいそうなほど、脆弱だ。
ただ、その弱さを数でカバーしに来ている。
鑑定した結果、この蜘蛛たちは麻痺毒や神経毒など、ランダムで色々な毒を持っている。中には、即死毒など怖いものも紛れ込んでいた。
その爛々と赤く光る眼は、この薄暗闇の中でよく見えるが、その小ささゆえに全てを把握することは不可能。
というか、まずまず気持ちが悪すぎて見れない。直視したら絶対気絶する。私は虫が嫌いなのだ。本当に最悪だ、これは数日ご飯が食べられなくなる気がする。
「……っ!」
そして大蜘蛛。
こちらも何もしないなんてわけはなく、その鎌で私達を殺しに来ている。
大きな鎌は、子蜘蛛たちを巻き込まず―――というか小蜘蛛たち自身がちょこまかと動いて回避していた―――戦力は衰えない。
―――最悪な状況すぎだって………! ふざけんな運営ッッッ!
「もう、さいっあくっ!! 【障壁】!! んで! 【特大超火魔球】ッッッッ!」
私は感情のままに叫び、思いっきり魔法をぶっ放す。
MPの残量? 知るか!
……と、半ばヤケクソになりながらも思考の片隅にちょっぴり冷静さは残しておく。そうしないと私はマジで戦闘狂になるからね…。
「ちょ、MP大丈夫なの?」
「ええ、多分! というか、あの蜘蛛たちどうにかしないとどうにもならないでしょう!」
ちょっとキレ気味に言葉を返してしまう。流石に失礼だな、と思ったので、後で謝っておこうと思う。
「それはそうなんだよなぁ…。ほんとに…。
じゃあ、いっか。【爆発火球】。」
リツキさんも割り切ったようで、魔法を放つ。
こういう魔物には爆発系―――火の魔法が多分効きやすいと思って【特大超火魔球】にしたけど、案外うまくハマったものだ。
子蜘蛛たちはたちまち粉々になり、残りの蜘蛛たちも私が張った【障壁】を破れそうにない。
不安要素といえば大蜘蛛だけど、こちらもリツキさんが援護してくれているから問題はない。
これ、もしかして、クリアいける?
……なんて甘い考えをしてしまったのがいけなかったのか。
「えっ!?」
わらわら、と私が張った【障壁】の外側を埋め尽くすように、子蜘蛛たちがよじのぼってきたのだ。
「ちょ、ちょちょちょ!」
マジでキモいしまずい。
蜘蛛の内側は普通に吐くレベルで気持ちが悪いし、子蜘蛛たちのせいで大蜘蛛が見えなくなり、うまく攻撃が当てられなくなる。
つまり、それは大蜘蛛の全力の攻撃が私達に放たれてしまうということで………。
「拡、大っ!」
私は一瞬のうちに【障壁】を大きくし、勢いで子蜘蛛を吹き飛ばす。初級魔法の良いところは、こういうふうに応用がききやすいところだと思う。
そんなことはどうでもいいと言わんばかりに勢いよく振り返り、リツキさんに声をかける。
「リツキさん、ちょっと時間稼いでください!」
「えっ、うん!」
少し驚いていたリツキさんだったが、私の顔を見て何かを察したのか、すぐに多種多様な魔法を放ち、子蜘蛛と大蜘蛛を牽制する。
流石だな、と頭の片隅で思いながら、私は腕の傷を塞いでいた血液の操作を手放す。
覆いが外れた傷はすぐに紅い血を溢れさせ、地面に滴り落ちる。
私はアイテムボックスに収納していた分の血液も使い、魔法陣を描く。
―――腐り、穢れ、堕つる者よ。天に焦がれ、陽を待つ者たちよ。
ゆっくりと、ゆっくりと、噛みしめるように。
―――我は、天に通ずる者。陽を墜とす者。
ここからは、ことさらゆっくりと。
―――これは、祈り願う者へ捧げる祈りの詩。
じんわりと、私の血が熱を持つのがわかる。
―――全ての理は、天に通ず。
閉じた瞼の裏で、魔法陣が光を放つのがわかる。
―――我ら集い踊る、無辜の夢を。願い、我らは祈る。
血腐城の最奥に収められた禁書。そこに記された古代の禁忌魔術の名は―――
―――【無辜ノ不死者ノ鎮魂歌】
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