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今回は第三者視点です。
前回の反動で少し短くなりました。すいません。
そして、前話で重要な記載が抜けていたので編集しました。ご了承ください。
〈第三者視点〉
「……。」
「天使かしら……?」
美しい装飾のついた膝下までの白いワンピース。歩くたびにシャラシャラとレースの飾りが音をたてる。そして、茶色い編み込みブーツにゆるく編み込まれた髪。
すべての要素が重なり合い、清楚な雰囲気を漂わせているシルフィードに、二人とも言葉を失っていた。
「可愛い……ね。」
絞り出したようにそう声を出したリツキの耳は、少し赤くなっている。が、シルフィードはその事に気づかず、これ、可愛いですよね〜、と言いながらくるりとその場で回っている。
「ちょっと、これも着てみて頂戴!」
対してバララキは、ハイテンションで黒と赤のゴスロリを渡す。
「は、はい。」
素直に受け取ったシルフィードは、数分後、そのゴスロリを着て試着室から出てきた。
どこか赤ずきんのような雰囲気を漂わせる意匠に、肘までの黒いレースの手袋。
「そうねぇ〜。」
そう言いながら、バララキが断りを入れ、シルフィードの髪の毛と赤いリボンを巻き込んで三編みにする。
「わ、可愛い……。」
「そうよねぇ〜。
リツキ。そのままなんにも言わない彫像にでもなるつもりなの、貴方? 男として、それはないわよ?」
バララキは、先程から固まっているリツキに声をかける。
「っ、あ、ごめんごめん。」
「ふふふ。まだまだ行くわよ〜。」
再び楽しそうにバララキは笑い、再び他の服を手に取るのだった。
*
「つ、疲れた………。」
「お疲れ様。」
お互いがお互いに欲しいものを買って、『Rosmarins Waffenschmied(ローズマリーの装備屋)』を出た頃には、もうすでに午後4時をまわっていた。
特にシルフィードは、バララキに気に入られてしまい、何着も何着もきがえていたため、店を出たとき、疲れから近くのベンチに座り込んでしまったのだった。
そのとなりにリツキが腰を下ろし、買ったものを見返している。
「結局、あの服買ったんだ……。」
あの服、とリツキが話すのは、途中でリツキが着た、黒いタキシードにマントが付いた【闇夜の怪盗】セット(上下+装飾品のセット)のことだ。他にも、【黒衣の狩人】セット、【死神のローブ】などを買い、【闇夜の怪盗の仮面−黒薔薇】を渡した。
もちろん、武器(杖と銃)も買ったため、かなりの出費になったはずである。
「はい。リツキさん、着てくださいね?」
「……うん。シルフィードさんもね?」
リツキは、シルフィードに【黒革の軍服】と、【アカデミーロリータ−赤】、【ゴシックロリィタ−黒】の三着に、装飾品を何点か買っていた。
ただ、こちらの方は「刀」を打つことがまだできないということで、武器は買えなかった。その代わりといってはなんだが、効果のある装飾品をぽんぽんと買っていた。
この男女、もう結構互いのためにお金を消費しているが大丈夫なのだろうか?
「今日はもう何もしたくないね……。」
「ですね……。」
そう言いながらダラーっと疲れを癒やすために座っていた二人は、はっ、と突然身を起こす。
「……。聞こえました?」
「うん。」
そう言い合い、もう一度耳を澄ます。
―――っひ……っくぅ、ひっく………ひっ、く、ぅ……
二人が座っている、広場に設けられたベンチの後ろ。
薄暗い裏路地から、少女の泣き声が聞こえてきていたのだった。
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