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「……薔薇の話はなんか色々と拗れてるっぽいので、後にしましょう。

 今日は、どこ行くんでしたっけ?」

 私は、一旦チャコの事を頭から追い出し、今日の予定について考える。

「あ、うん。今日は、装備を整えようって話だね。」

 装備か……。

 私は血腐城ブラッディロードキャッスルで手に入れたものしか、現状装備がない。

 めちゃくちゃ素材は余っているので、作ってもらうのもいいのかもしれない、と思う。


「じゃあ、リツキさんのオススメに連れてってください!」

 私はこの街に来たばかりなので、リツキさんに連れて行ってもらうのがベストだろう。しかも、唯一見たと言っていいのは露店スペースだけで、街の他の部分は見ていないし。

「わかったよ。」

 こっちだよ、とリツキさんに案内をされながら、私たちは歩いていったのだった。


  *


「おお〜。」

 ぱちぱち、と無意識に拍手をする。

 似合ってる。めちゃくちゃ似合ってます、リツキさん……!


 今、私たちはリツキさんのオススメの装備屋で、リツキさんの友人が経営している『Rosmarins Waffenschmied(ローズマリーの装備屋)』さんに来ていた。

 店に入った瞬間、少々癖の強い店主さんがドドドドド、と走ってきたのでびっくりしたが、それ以外は至ってごく普通の装備屋さんだった。てっきり、店主の名前がローズマリーで、女店主さんだと思っていたので、正直、ガチムチの男性だが、何故かゴスロリ服を着ている(声はなぜかきれいな女性っぽい声)店主さんが出てきたとき困惑した。

 ちなみに、店名は、店主さんの名前がバララキというので、バララキ→薔薇→ローズ→ローズマリー、というふうに連想ゲームをしていった結果、このような名前になったそうだ。


 で。今、私達が何をしているかというと、リツキさんをお人形さんにしています。

 だって! リツキさんの装備、いっつも思ってたんだけど、飾りっ気がなさすぎるんだもの!!

 リツキさんのスペックなら、絶対にもうちょっといい感じの服があるはずなんだけど、前にちょろっと聞いたとき、ファッションセンスがないからこのままにしてるとか言ってたから、今回ちょっと着せ替え人形さんになってもらいました。

 バララキさんも、まさかここまで化けるとは思っていなかったようで、店の奥から次から次へと洋服を出してきてくれた。


「リツキさんリツキさん、この服とかどうです?」

 私はすっかり楽しくなって、まるで中二病全開の男子が着るような、怪盗っぽい服を選んで手に取り、リツキさんに話しかける。

 この服、真っ黒でリツキさんに絶対似合う。だって、リツキさん髪色が赤めの黒で、目が黄色みのある黒だもん!

「え、あ、ええぇ……。ちょっと流石にその服は遠慮させてほしいなぁ……。なんて。」

 流石に恥ずかしい…、とこぼすリツキさん。

「ゴメンナサイ…(´・ω・`)」

「……その顔はちょっと罪悪感が募るのでやめてください。」

 そんなふうにやり取りしていると、横からふふふ、と謎の笑い声が聞こえてくる。


「? どうしたんですか、バララキさん。」

「いや、本当に仲がいいのねぇ。リツキがそんなに話してるの、久しぶりに見たわ。」

「え? リツキさんって普段全然喋らないタイプの人なんですか?」

 私といるときは普通に話すんだけど……。

「そうねぇ〜。いつもは全然話さないわ〜。」

「ちょ、何余計なこと言ってるんだよ、バララキ。」

 と、リツキさんが入ってきた。


「わ、わ、わ……!」

 カッコよき……。いや、かっこいい……。

 リツキさんは先程着るのを渋っていた怪盗っぽい服をきていた。

 従者服に似ているタキシードに、黒い編み上げブーツ。裏地に繊細なバラの刺繍がされたマントは、歩くたびにふわふわと揺れている。シャツのネクタイのピンはガラスの薔薇がついている。


「リツキ………アンタ………やっぱりちゃんとすればいい男じゃないの!」

「ほわぁ…。似合ってますね……。」

「……これ、ガチで恥ずかしいな…。」

 顔を真っ赤にしたリツキさんは、その場にしゃがみこみ、手で顔を覆い隠すようにする。

 そして私はこれ幸いと、+α(プラスアルファ)でつけてほしかった黒薔薇の仮面を手渡す。

「……これも着けろと。」

「はい。すいません。」

 はぁ〜、と一つ大きなため息を付いたリツキさんは、観念したかのように立ち上がり、言われたとおり仮面をつける。


「ん? シルフィードちゃん、それ、私の店の商品じゃないわよね?」

「あ、はい。私が持ってた装飾アイテムですね。」

 この仮面は、〈闇夜の怪盗の仮面(マスク)〉という。性能は、下のとおりだ。


____________________

  闇夜の怪盗の仮面(マスク)−黒薔薇


 〈説明〉

 かつて怪盗が使っていたと言われる仮面。

その怪盗は今はどこにいるのか、所在不明と

なっていたが、彼の表の顔――従者としての

主であった血腐城ブラッディロードキャッスルの主によって

埋葬されていた。

 〈効果〉

 この仮面は〈闇夜の姫の仮面(マスク)−赤薔薇〉と

対になっており、もう片方の装着者が近く

にいればいるほど効果を発揮する。

●(効果範囲−片方の装着者との距離)×0,5

=俊敏への増加値

●基礎攻撃力+50

●装着者へのスキル【幻惑】の付与


所持者…シルフィード

耐久値…55

____________________


 ……この性能よ。いつか使ってみたいと思ったものの、鑑定(魔法)してみたら案の定、()()呪いがかかっていた。

 1つ目の呪いは、「二つの仮面を付けている装着者は、効果範囲にいないと常に【出血】状態になる」というもの。片方の装着者がいない場合でもなる。【出血】状態は、常にHPがなくなっていく、私にとっての日光のようなものなのだ。

 なので、ボッチだった頃は付けられなかったのだ。ただ、今回リツキさんにつけてもらうにあたり、呪い効果が出ないよう、私もパーカーのフードの下に〈闇夜の姫の仮面(マスク)−赤薔薇〉を装着している。

 ……ちなみに、もう一つの呪い(?)は恥ずかしすぎるので言わない。


「顔を隠せたから抵抗はちょっとなくなったけど、やっぱ恥ずかしい……。」

「似合うわね〜。」

 めちゃくちゃにあってるな、リツキさん。

「買います。」

「毎度あり〜」

「ちょ、なんで、シルフィードさん?」

 この仮面と、リツキさんに似合うからです。

 あのエリアでめちゃくちゃ討伐してたら、お金は溜まってるんだよね。


「他にもなにか買う?」

「…そうですね……。」

 他にも似合ってるのあったんだよね、軍服とか、カウボーイっぽいのとか、魔術師のローブとか。

「いや、俺はもういいから、次はシルフィードさんね?」

「え?」

「ちょっとごめんね?」

 と、一つ断りを入れてから、リツキさんは私からパーカーを剥ぎ取る。


「ちょ!?」

 ああああ、私の、いや、陰キャの常備品をがああぁぁぁぁああ!!

「あらあら……可愛らしいお嬢さんねぇ〜。」

 はう……ちょっとフード無しで人と向き合うの苦手なんですよ……。

 仮面つけててよかった……。


「ん? その仮面……。」

「あぅ、対になっている装備なんです…。」

 私は、そう言って二つの仮面の効果を説明する。

「それはなんとも厄介な……呪いって…。

 はぁ…効果範囲は?」

「1kmですね。」

 私は鑑定結果を思い出しながら言う。

「いや、狭っ。」


「まぁ、とりあえずどっちも外すか。」

 そう言って、ベリっと仮面を外し、私の仮面まで外してくれたリツキさん。いつの間にか後ろにいたバララキさんから服を受け取り、私に渡すと、試着室の方へと体を向けさせる。

「いってらっしゃい。」

「???」

 急な展開に困惑しつつも、私はリツキさんに言われたとおり試着室に向かった。

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