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短いです、すいません。
「なにこれ…………。というか、この城びっくり箱か何か……? 俺ずーっと驚いてばっかなんだけど……。」
目の前の光景に、信じられないとばかりに目を見開いたリツキさん。
その口から、思わず、というふうにこぼれた言葉に、私は心の中で「びっくり箱ではないですけどね。」と、軽くツッコミを入れる。
今、私たちの目の前には、世界の裂け目と言われてもおかしくない、不気味なヒビがある。
ここは、『裂け目(一)の間』。
そのまんまの名前の間である。
ガラスの割れ目のような、そんな奇妙なナニカだけが中央にある、おかしな部屋だ。
ちなみに、さっきまでいたのは、『回帰の間』。
部屋の扉を開けた人が、会った中で、一番強いモンスターを擬似体験(経験値も入る)できる。
この間の中でHPがゼロになった場合、部屋に入る前のHPとなり、部屋の外に弾き出される。
疑似体験、と言ったのはこの為だ。
「なんなの、これ!」
「私にもわからないんですよ!!」
だってこの間、さっきまで開かなかったんだから!
まさかと思ってきてみたら、開いたよ!!
こんな仕掛けだなんて聞いてないんですけど!?
一応、城内図は主人の権能で見れるのだが、城の中の部屋の内、幾つかの部屋が開かなかった。
いくつか、というか、『裂け目の間』という間が、と言った方が正しい。『裂け目の間』という名称の間は一から四まであり、先程確認したところ、この一の間が開錠可能という表記が出ていたので来た次第である。
………という経緯をリツキさんに説明した。
「はぁ……。え、すごいね。」
「あ、ええ…。」
なにに対してすごいと言っているのかも理解せず、ただただ驚きのままに同意した。そして、次の言葉で赤面することになる。
「いや、シルフィードさんがすごいっていう意味で言ったつもりだったんだけど………。」
え? 凄い? 私が?
(注※シルフィードはソロで活動している為、ゲームの際に褒められた事がありません。ちなみに、現実でもソロです。褒められるのは慣れてません。ピュアです。)
え、えええええええええええええ!?!?!?!?!?
すご、凄い? え? ええ?
わたし? ん? ちがうかな? 私じゃない?
脳内再生。
『シルフィードさんが凄い——』
んん?
聞き間違い?
もう一度脳内再生。
『シルフィードさんが凄い——』
え? ほんとに?
ええええ? 私、すごいって? リツキさんが?
「くぁwせdeftlyふじこlp!?!?!?」
「え!?」
シルフィードの指が、タタタタ、とキーボードの上を指が踊る。
「しつ、しちゅれいひまふ!?」
「え、待って……」
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プレイヤーがログアウトしました。
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「えぇ……? 俺なんかした?」
後には、リツキの困惑したような声だけが残った。
そして、現実。
シルフィードの部屋では———
「え? ええぇ? っ〜〜〜〜〜!!」
帆風は、褒められた余韻を噛み締めながら、ベッドの上でバタバタと悶えていた。
帆風がリツキに碌な挨拶も言わずにログアウトした事をめちゃくちゃ後悔して、再びログインする前日のことである。
褒められ下手ってこういう事なのか……??
と迷いまくった話でした。
というか、迷走しました。
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