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竜王(ドラゴン・キング)になった人は、三ヶ月以内に龍王(ドラゴン・キング)に、半年以内に龍神(ドラゴン・ゴッド)にならないといけないらしいんです。リツキさんもそうしないと、一生このアカウントではログインできなくなるかと。』


 この考えに行き着いた時、私は、なんだこれ、と思った。


 【叡智の書庫】で検索した、幻想種の成り立ち、龍神、ブレイブ・シーカーの手記……このどれもに共通して書かれていることがあった。


“竜王は龍王へ、龍王は龍神へと進化する”


 そして、ブレイブ・シーカーの手記に書かれたその一文。


“竜王は三月(みつき)、龍王は六月(むつき)、そして龍神は永遠の生を受ける”


 と。


 そして、気がついた。

 どの書物にも、竜王や龍王の生きたとされる証拠があまり残されていなかったことを。


 そして、龍神で再度検索してみたのだ。

 その数の多いこと、多いこと。


 龍神の記述はとても多かった。

 また、龍王の記述も数点しかなく、竜王と同じ状態。


 つまり、竜王と竜王の記述だけとても少ないのだ。

 ブレイブ・シーカーの手記に記された一文は、言葉通りの意味。


 私たちは、ここで死んでも、死に戻り(リスポーン)するだけだ。

 そんな私たちの、本当の意味での死とは?

 ……それは、ログインできなくなることだ。


 もしかしたら、違うのかもしれないが。

 ただ……確率は高い。


 なので、念には念を。

 できれば、竜王になってから三ヶ月以内に龍王になっておいてもらいたい。


「……………………………………………………………え…?

 って、ことは、俺が竜王になったのが、一ヶ月前で、だから、だから……。」


 あっ!

『落ち着いてください、リツキさん!』

 こんな状態になるとは思わなかったな。

 確かに、こんなの突然言われたらびっくりするのもしょうがないよね。

 ここまでストレートに言う必要はなかったかもしれない……。

『驚きましたよね、すいません。』


「あ、ああ、いや、うん、うん、大丈夫。

でも、ちょっとまだ混乱してるとこもあるから、ちょっと、三分くらいまって。」

『はい。』

 はぁ〜〜……。

 次からこういうことはこんなにストレートに言わないようにしよう…。


 三分ほどたって、ようやく頭の理解が追いついたのか、リツキさんが顔を上げる。

「……まだ、信じられないけど、本当なんだね?」


『…はい。私のエクストラスキルで調べたところ、竜王、龍王ともに記述が数点と、少なかったです。ですが、龍神については神として崇め称えられている人や、たたえている人は少ないにもかかわらず、数十点と多かったので、確かかと。』


 龍神って人間とかには畏怖の対象でしかないんだよね。

 だから、神としてたたえている人……というか種族は二つだけ。

 竜族に、龍人族(ドラゴニュート)


 このゲーム内では、プレイヤーからは亜種として扱われ、人間からは魔物のように扱われている。

 NPCだからプレイヤーも殺してはいけない。

 殺せばペナルティが課される。

 キルペナルティと呼ばれている。


 キルペナルティは、ランダムでレベル×1〜10でレベルを下げ、一部のスキルをLv.1に戻す。

 また、襲撃した側と判断された場合、警戒レベル4、と頭上に表示される。


 警戒レベルは1から5まであり、警戒レベルはプレイヤー以外のNPCにも見えるので、高ければ高いほど信頼されにくくなる、というか、3以上高いと町や村に入れてもらえなくなり、速攻で檻へといれられる。警戒レベルが2もあれば小さな町や村では立派な犯罪者であり、遠巻きにジロジロと見られるのである。


 檻に入れられた後、魔道具で罪を調べられ、ちゃんと罪を償わなければ出てくることはかなわない。たとえ、プレイヤーであったとしても。

 プレイヤーが死刑になってしまった場合、とあるアイテムを持っていればキャラクタークリエイトまで戻って再チャレンジ―――転生、と呼ばれているらしい―――することができる。


 そのアイテムを持っていなかったら普通に一週間ログインできなくなる。

 まぁ、たとえログインしたとしても、罪は変わらないわけで。

 警戒レベルの数字が消えていようと、皆さん(NPC)は近づいたりはしないのだ。



 …と、少し話がそれたが、今は竜王についてだよね。


『キルペナルティがあるように、もしかしたら期間限定でも、ログインできなくなるクエストもあるかもしれないです。』

 そう思ったら、ちょっと怖くなるよね。


「そっか、キルペナルティ……。

そう思ったらあるかもしれないな。」

 リツキさんも納得してくれたみたいだ。


「俺が竜王になったのは今からちょうど一ヶ月前。

だから、期限は残り二ヶ月ってとこか。」

『はい。でも、龍王への進化条件が……。』


 今現在わかっている龍王への進化条件は、

 ・竜王であること

 ・Lv.55以上であること

 ・特定のスキルを所持していること

 この3つである。


 リツキさんは、最初の竜王であること、という項目は満たしているものの、未だ29と、55に遠く及ばないレベルである。

 でも、これは魔物のレベル平均が高い【砂血の大地】に行くことでどうにかなるかもしれない。


 問題なのは、最後の特定のスキルを所持していること、である。

 必要なのは、【竜鱗】Lv.2、【咆哮】Lv.2、【魔法 - ◯】Lv.3、そして、ユニークスキル【純潔】である。

 ユニークスキルである純潔以外のスキルは持っている(【魔法 - ◯】のみLv.2で、条件を満たしていないが)のだが、その【純潔】が一番厄介なのである。


 みんな、七元徳ってやつを一度は聞いたことがあると思う。

 ……え? 知らない?


 七元徳っていうのは、カトリック教会の教義における7つの基本的な徳のこと。

 古代ギリシヤの知恵、勇気、節制、正義の4つの枢要徳に、パウロの手紙に見られる信仰、希望、愛の3つの徳を加えたもの、らしい。

 らしいというのは、ネットでみたことがあるだけだからだ。

 七つの大罪に相対する存在として、憤怒⇒寛容、嫉妬⇒慈愛、強欲⇒分別、傲慢⇒忠義、暴食⇒節制、色欲⇒純潔、怠惰⇒勤勉、とする説もある。


 そして、その七元徳をスキルにしたのが七元徳スキルである。また、相対する存在として、七大罪スキル、というのもある。

 ……前に【叡智の書庫】で調べた時、私はある七大罪スキルの取得条件を満たしそうだった。気づいてギリギリで回避したが。 

 【純潔】の取得条件は、プレイヤー、またはNPCに向けられた攻撃を複数回受けるか、精神攻撃を複数回受け、それを防ぐか、というかなり危ないことをしなければならない。


 それを見て気づいたのは、地図を見た時、【星々の観測台】の隣に、森のような場所があったこと。

 竜王は、龍人族(ドラゴニュート)からの突然変異。

 森の右隣に【星々の観測台】、左隣に湿地帯もあったから、おそらく龍人族(ドラゴニュート)は、その湿地帯がスタート地点だろう。


 でも、確証はないから一応聞いておく。

龍人族(ドラゴニュート)って湿地帯がスタートですよね?』

「え? あ、うん。」

 よし、確定だ。


『おそらく、竜王から龍王になるためには、エリア勘破が必要かと思われます。』

「エリア勘破? ……ってあれか。3日前くらいに【砂血の大地】エリアが勘破された、ってやつ。」

 え?

 私はきょとん、と首を傾げる。


「ああ、あの時ログインしてなかったの?

あのね、3日前くらいかな? 吸血鬼とかの初期スタート地点の【砂血の大地】が勘破されたって通知が来てたんだけど…。

ん? そういや腐血って、【砂血の大地】がスタート地点じゃ……。」

 そこまで言って、リツキさんはぎぎぎ、と壊れたロボットのように、こちらを振り返る。

「もしかして…。」

『…………………………………………………………ハイ。勘破したの、私です。』


 そう書くと、はぁ〜……と呆れたようにため息を吐いたリツキさんは、ジトーッとこちらを見て、口を開く。

「聞きたいことは色々とあるけど……。もう遅いし、明日だな。」 

 リツキさんのその言葉に、時計を確認する。

 今は―――えっ、23時!? ふぁ!?

 ちょっと、ちょっと、やばいんですが!?


「今気づいたのかぁ。」

『スイマセン、詳しいことはまた週末に!』

 私はそう言って慌ただしくログアウトをした。


 ***


―――ガランガラン……

 寂れた街の一角にある、帳亭という酒場。

 その扉に結わえ付けられたベルが鳴る。


「いらっしゃい。ここに来るのは何日ぶりだい? なぁ、籠絡姫インティゴ・プリンセス。」

「……。」


 店主のそんな言葉に、ローブの客人は右手を差し出した。

「またかい?」

 此処は情報屋。

 今宵も、情報が報酬(カネ)と取引される―――


厳しすぎる条件ですかね?

どうすれば良いかできれば感想で教えて下さい。よろしくおねがいします。

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