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わたしは星空の海を行く

作者: 護道綾女

 わたしは星空の海を行く。葦で作られた大きな帆船で数多の神を従えて、星空の海を行く。柔らかな風を受け葦の船は進んでゆく。行き着いた先でわたしは新たな生を受けるという。


 空に浮かぶ星から船内へと目を移す。目に入るのは動物ばかり猫に狼、ハヤブサにカワウソ、サギなのか首の長い鳥もいる。羊にワニ、うさぎと果てにはカバまで乗っている。さながらノアの箱舟か、移動動物園なのか。シーツを頭から被っている者もいるが、あれは何者なのか。隠しキャラなのか。何とも不思議な集団だが彼らはれっきとした神なのだ。


 のんびりとした航海は続かない。水面が盛り上がり巨大な蛇が姿を現した。剣を片手にわたしは船の舳先に立つ。逃げる気は毛頭なく、戦う気満々だ。舳先から飛び出し蛇に向かって突進していく。なぜか体は水に沈まない。


 水煙を飛ばして駆けてゆくわたしに蛇の牙が迫る。牙をかわしつつ、わたしは胴体へと迫り斬りつける、しかし鱗が硬く刃が立たない。万事休すかと思われた時、共に航海する神々からの力を感じた。力がみなぎり、剣が神々しい輝きを帯びる。


 わたしは空高く飛び上がり、蛇の頭部に渾身の一撃を加え、その頭骨を打ち砕いた。蛇は力なく海へと沈んだ。わたしは水面にしばらく佇んでいた。水平線から朝日が昇る。新しい生をもたらす朝がやって来る。


 待って、まだだめ。朝になっては困る。


 わたしは飛び起きた。息を整え周囲を見回す。ここは葦の船の中ではなく、少し散らかったマンションの小部屋で時間は真夜中の二十四時五十分だ。窓の外は真っ暗で夜明けまでまだ時間はある。ついたままのテレビではファラオの一生についてのドキュメンタリー番組をやっている。仕事にキリがついていないのに、うっかり机の上で眠り込んでしまったらしい。本当に夜が明けていたら生どころか死がもたらされていたところだった。 神々と勝利を分かち合いたかったが、仕方ない仕事を再開することにしよう。


 目覚ましのための夜食を用意する。何にしようか。そうだカップラーメンがいい。乾いた食材を煮えたぎる湯を持って食事として復活させる。カップラーメンはそんな復活思想の体現のため開発されたと聞いたことがある。ラーとアメンとその他の神々に捧げるカップラーメン。今の気分に相応しい。

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