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二歩先
時を刻んでいる、かと思えば、それは、舌の音であった。
夕暮れの重厚な香りが鼻を突く。
かつてはセピアでなかった視界。
ああ、君であったか。
儚い生命に魅せられたのか、時計からは蝶が舞う。
ああ、君であったか。
これがまたどうしたものか、上手くいかないのがやるせない。
ああ、私であったか。
この木や石にも私と同じそれがあると思いたい、歴史と共に継がれた崇高な魂。
殺してみる。
脳内に伝播されるそれは、探し求めていた光のようだった。
私は長く浅い眠りについた。