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プルルルル
「僕のスマホだ、取ってくれるかい?風音」
「あ、うん。」
「NEXT」から電話がかかってきたのは午後6時。
和成は一応「ゴースト」のリーダーだから、あいつのスマホにかかってきたんだな。
和成は2回ほど頷くとスマホの画面を横にしてこちらに向けた。そこに映っていたのは知らぬもののいない男、人類の及ばぬ所まで脳が進化しているとさえ言われる男、人呼んでゲームの神「冴島 龍之介(さえじま 龍之介) 」。
ゲーム会社「NEXT」の社長である。
「諸君、会えて嬉しいよ。」重みのある声。
「私の自己紹介はいいね。私が出向くのだ、相当大事な案件だと思ってくれていい。」
あの世間知らずの一でさえも縮こまっている。
「私が今から話すことを間違ってもネットにあげるような行為はするな。いや、してもいい、首から上が無くなるがな。」
腹の底から本能が「勝てない」という信号を送っているようだ、冷や汗が止まらない。
「なんてね、うそうそ(笑)座っていいよ。」
漫画なら「ズコッ」というオノマトペがとんでいただろう。
「なんやこのお茶目なオッサン!」そう言いたいのを必死に我慢する。
「ごめんね〜、秘書が厳しく接してください!これから彼らには覚悟を決めて頂かなくてはなりません!ってね。」
「覚悟、?」響は思わず口を開いてしまったようだった。
「そう覚悟。死ぬ覚悟。」
「どういうことです?!」珍しく落ち着きを失った和成が言った。
「そうだね。順を追って話そうか、」
ただそこには静かな静寂が流れていた。
「インサイドトーキョーは、単なるゲームではない。日本のデータというデータ全てを保管する金庫のようなものだ。君たちにはそれを守ってもらいたい。」
「…へ?」一はわかってない。。(俺もよく分からないけど口には出さない、)
「今、その金庫は様々な国からのサイバー攻撃を受けている。どうやってゲーム内にサイバー攻撃をしているかって?ゲーム内のいわゆるチートモブとして、ゲーム内部から攻撃しているのだ。」
「そんなのを相手にどうしろって言うのよ、」
響ナイス。俺も思ってた。
「まあまあ待ちたまえ、順を追って話すといっているだろう?」
黙るしか無かった。響も大人しく口をつぐんだ。
「元々、君たちが優勝した前のゲーム、あったろ?
あれも昔は城壁だったわけだ。しかし、相手も攻略法を理解し始めたようでね、そろそろ守りを固めなくてはいけなくなったんだ。」
「そこでだ!新しいゲームを作り金庫を移動させた!君たちにはゲームの中に入りサイバー攻撃を防ぐ守護者になって欲しいんだ。」
「お願いは分かりましたが、どうやって?」和成は響の意見を言い直した。
「君たちのアバター(依代)を作ってもらう。もちろん強力なキャラになるようにするよ。そこに自分の魂、精神を入れるんだ。そうすればゲーム世界が現実のようになるよ。」
ちょっと待て、そういう系の話のさ、設定的に
「死んだらどうなるんだよ、」多分俺の声は震えていた。
「死ぬさ。精神が壊れ身体を動かす脳が働かなくなるからね。」
分かってたよ、何となく。怖いし、嫌だし、やめたいし、やりたくないし。
彼女いないし、童貞だし。
ただ、ここにいる「ゴースト」のメンバーは同じことを考えていただろう。
「それ以上の興奮」
それだけ、
「やろう。」この言葉に反論するものは一人もいなかった。これが人生最大の過ちでも、楽しければいいんじゃない?と思った。今なら誰にでも勝てる気がした。俺たちは元々、終わってる。
これが、ここからが俺たち「ゴースト」のスタートだ。
「さあ行こう、インサイドトーキョーへ」