閑話 神の呟き
まさか送るべき神託が間違いではないか。4人を送ったあと、一度送るべき書類を見直す。仕事が多すぎて送り忘れたのを今になって気づいたのもあるが。
今からでも間に合うには間に合う。人を送るより神託の方が送りやすいのだ。送り込む国からすれば唐突で直前なんてとたまったものじゃないだろうが。
頭を抱えながら見直せば違和感しかない文章となる。
「3人じゃありませんものね、4人になってしまってますし」
神託を書き直し、4人を送る神殿へ降ろした。ある程度は優遇してもらえるだろう。4人には残酷かもしれないが、監視されるかもしれなくても、贅沢な暮らしは保証される。それしか方法はない。
しかし、もし神の意が伝わらなければ。
「ああ、だから嫌なんですよね、異世界の物語に溢れた時代は」
神の嘆きは届かない。
「善三郎、はいい子ね。直前のこともあってか慎重。いや、疑り深すぎるか。恭介は、信心深すぎるわ。あれは刷り込みかしら。あとは軽薄で欲深い実優と臆病で自分の意思で動かないユキか」
皆気づくだろうか。
「ああ、なるようにしかなりませんね。だから調節がめんどくさいから、召喚を連発するなといったのに。なんで彼の世界の子達の不始末を私が送り混んで解決しなきゃならないんでしょ」
溜め息をつきながら、行く末をみるために空間を開いた。
「ああ、やはり、あの子達、勝手なことを」
善三郎が宙に投げ出されていた。このままでは生身で地面に激突する。いくら身体強化しても、あの高さでは助からない。
「彼に加護を。全く罰はどうしましょう」
あと何時間か過ぎれば落ちビトは送られる。落ち行く国は一応平穏な国にはしたが、どう彼らは動くだろう。
「これ以上余り干渉できないわ。まったくもって。選ぶ子、間違えたかしら。まあ、なるようになるか」
神の呟きは雲へ消えた。