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第9話 魔王樹

《友よ。この子は助かるんじゃろぅのぉ??》


《えぇ、成功……したはずよ》

 

《そうか!! それはえぇ!! ヒスイ聞いてたかの!?》


《はいはい、聞いてましたよ。私から他の子達にも伝えておきます。旅人さんお疲れ様でした。ですが、先程のお話はお忘れなく……》


《そぅ、問題無いわ》


《ヒスイは、相変わらず堅いのぉ。儂みたいになるぞぃ?? ほっほっほ》


《……》


《怖いのぉ、怖いのぉ、》


 響く声につられて、俺はゆっくり(まぶた)を開く。


 霞んだ視界には旅人さんが額に汗を流し、少し安堵した顔で俺を見ていた。


 そうか、俺は手術を受けたんだっけ。

 

《おおお、目が醒めたようじゃぞ!? ほっほっほ》


 頭に直接声が聞こえる??


 最初は気のせいと思ったが、間違いなく聞こえている。


(なんだこれ?? テレパシー?? てか誰なんだ、この爺さんぽい声は……)


 ゆっくり身体を起こし周りを見てみても、旅人さん以外は近くに人は見当たらない。


《なんと!? もしや、この子は……》


《そぅ、持っているわ》


《ふぉおお!! それはえぇ!! 凄くえぇの!!》


 旅人さんとおかしなテンションの爺さんの声が、勝手に頭に流れ込んでくる。少しぼぉっとする頭を振って彼女に聞いた。


「旅人さん、これは……誰と話をしてるんです?? というか手術は無事成功したんですか??」


「そぅ、説明が必要かしらね」

 

《少し混乱しているから、説明が終るまでは静かにしておいて》


《ほっほっほ、あい分かった》


「さて、まず手術についてだけれど、結論から言って成功したと言っていいわ。君の身体は知っている通り、魔素欠乏症という病気で身体に魔素を取りこむ事が出来なかった。正確にはそれが溜まって逆に悪さしていたの。ここまでは良い??」


「はい」


「この世界で生きている人の身体には、外部から入ってくる魔素を魔力に変換させる機能が自然と備わっているけれど、君にはそれが無かった。それが魔素欠乏症の原因」

 

「そもそも身体の構造が違っていた、という事ですね??」


「そぅ、だからその器官を作り、定着させる手術をした訳なんだけれど、それにはどうしても高純度な魔核が必要だった」


《じゃから、儂の魔核を分けたんじゃよ!! ほっほっほ》


「!?」


《静かにと……言わなかったかしら??》

 

《す、すまぬ……》


「はぁ、つまり、あなたの後ろにいる【魔王樹】と呼ばれる魔物が、高純度な魔核の持ち主であり、貴方に使った魔核提供者と言う事よ」

 

 魔物と聞いて慌てて振り向いたが、真っ暗な闇が拡がるばかりで何も見えはしない。


 諦めずじっとその方向を見続けると、月にかかっていた雲が抜けた。


 次第に月明かりが射し込み、そこに映ったものは一本の巨大な樹。


 太さだけでも数十メートル。


 高さにおいては、見上げて見ても良くわからない程もあった。


 夜ではっきりとは見えないが、月の光で葉は銀色に輝き、とても神秘的な雰囲気だとそう思った。


(この木が魔物?? ただの木じゃ……)


 と、その瞬間、樹の幹から赤い光が二つ、ゆっくり開いてこちらを見つめて来た。


「えぇ!?」


 驚いた俺は、思わず尻もちを付いてしまう。


《ほっほっほ、びっくりさせてしもうたかの?? エント(・・・)よ宜しくの。しかし友よ、何度も言うが儂はエンシェントトレントじゃと言うておろう。魔王樹なんぞ怖そうな名前は好かん!!》


《そぅ、そうだったわね》


「さて、目の前にいるこの話を聞かない魔物が魔王樹よ」


《ふぁ!? お主こそ聞いとったんか!? エンシェントトレントじゃ!!》


「魔王樹……さん?? が言っているエントとは、私の事を言ってるんですかね??」

 

「そぅ、出来れば断りたい所だったけれど、魔核を提供して貰う時の条件だったから仕方ないわ。魔核は魔物にとって魂みたいな物でね。それを分け与える行為は、子を生み出す事と同義だと考えたみたい。つまり……あなたが魔王樹の子供になる事が魔核を手に入れる条件だったのよ」


「えぇえええええ!?」

 

《ほっほっほ、お主は今日から儂の息子のエントじゃ!!》


「いやいや! ちょっと待って下さい。手術が終わって目覚めたら、いきなり魔物が父親になってるとか、受け止められませんよ!! それに何故、名前がエント!?」


《名前は、儂のファミリアで考えたんじゃぞ?? えぇ名前じゃろ!? ほっほっほ》

 

 いや俺が知りたいのはそこじゃない!! と思いつつも、グッと我慢して話を進めた。


「そぅ、でもこう言ってはなんだけど、私はあなたにとっても良い条件だったと思うわ。取り敢えず残りの説明もする為にもステータスを見てみなさい。以前は無理だったはずだけど、もう見れるようになっているはずよ」


 初めて街に入る時の失敗を思い出し、少し戸惑いはあったけど、意を決して唱える事にした。


「ステータス!!」


 突然、右手からスマホサイズの映像が出て来た。


(で、出来た!?)


 出た事に驚きと喜びで興奮するも、慌てて内容も確認してみる。




 種族 人魔


 名前 エント


 レベル1


 体力5  攻撃力5


 防御力5 敏捷力5


 知識20  魔力10


 魔防5 運8


 【スキル】


 木属性魔法Lv1


 【固有スキル】


 木霊こだま


 【称号】


 魔王樹の子


 死神と時神の観察者



(これが俺のステータス!? え?? 人魔?? 魔王樹の子って何?? 死神と時神の観察者??)


 いや、それよりもーー

 

「旅人さん!! 俺……人間じゃなくなってますよ!?」


 ステータス画面を旅人さんに向けて答えを迫った。


「そぅ、順番に説明するわ。まず種族だけれど、これは私も想定外の結果で手術によっての影響。まぁ、生きてるだけで奇跡的なのだから、大したことじゃない。それと今後の為に教えておくけれど、ステータスは気軽に人に見せる物ではないから覚えておきなさい。まぁ、街などに行かない限り、チェックされる事は無いけれどね」


(えぇ!? 確かに成功率は低いと聞いてたから、そう言われるとそうなんだが……)

 

「次にレベルだけれど、普通の人間が成人する頃でだいたいレベル10程度。そうね……君の年齢くらいだとレベル5程度にはなってるのが普通。つまり、君は産まれたての赤ん坊と同等という状態なのよ」

 

「え、それ色々まずくないですか??」


「そぅ、まずいわ」


(まずいんかい!!)


「最後は重要な話だから良く聞きなさい。魔王樹の魔核を使った予想外の結果で、君は木属性魔法と固有スキル【木霊(こだま)】を得てしまっている」

 

「?? 何か不味い事があるんですか??」


「えぇ、木属性魔法や特に木霊はーー」


「木霊は??」





「魔獣や魔物しか使えない魔法とされている」

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
― 新着の感想 ―
[良い点] ダークな部分を全面的に押し出しているスタイル。個人的には良いと思います。 [気になる点] 特にありません。強いて言うなら物語の展開です。 [一言] 第九話まで読みました。残りのお話もゆっく…
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