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第88話 王都ベルモント

 

 王都ベルモントに入ると、明るいレンガが敷き詰められた道路がまず目に入り、ヘルメスよりも幅があるのはまず間違いないだろう。


 歩道と車道の境界には、アンティーク風の街灯が並び、街の華やかさをひと際引き立たせている様に感じる。


 その道は少しづつ登り坂となり、視線でその先を追って行くと、頂上には白く美しい城が見えた。


 洋式的なディ○ニーで出て来そうな城は、その権威を象徴するかの様にそびえ立ち、何階建てか数えるのが嫌になる程だ。


 そして何より、この王都全体を守護するかの様に、優しく天空を覆う世界樹を幾度見ても、俺は言葉を失うのだった。


 葉は夕焼けに染まり、はっきりとは言えないが、明るい緑から深い緑まで様々で森の木々達に負けない生命力を感じる。


 街の住人達も活気に溢れており、品がある服装の者や、変わった服装の者もいれば、ちらりと見ただけでも売っている品も多種多様に売られている事を見れば、貿易も盛んに行われているのだろう。


 しかし、彼らの活気とは裏腹に、俺達はもうクタクタだった。


 夕暮れに門を潜ったにも関わらず、俺達が貴族街まで到着する頃には、すっかり影が見えなくなっていた。


 馬車を貴族街の門まで見送り、ようやく俺達は自由となった。


「ひ、広過ぎる……」 


 その場で少ししゃがみ込み、棒になった足を回復させる。


「がっはっは!! さて、後輩共!! さっさと宿を取って打ち上げだ!!」 


 付いて行く傍らで、パンドラさんが教えてくれたが、大抵こういった複数のパーティで護衛クエストを終えた後は、それぞれで宿を探すのが基本らしい。


 そして、初めて王都に来る冒険者は大概途方に暮れ、下手をすると野宿する者もいて、あとから冒険者の笑い者になるのだとか……


 そんな話を聞いて、一緒に宿へ行こうと言ってくれた灼熱メンバーに、心から感謝感激雨あられだった。


(ここから宿探しなんて無理!!)


 煌めく街を楽しみつつ、ガウルさん達に続いて、彼らの行き付けの宿に到着した。


 看板には『こもれび亭』と書かれ、入ると直ぐに前掛けをした、三十代後半くらいの美しい女性がやって来た。


「あら、ガウルさん、お久しぶりですね!! お泊りですか?? あら? 彼女さんがいらっしゃらないようですがーー」


 どうやらミーナと呼ばれる女将さんは、付き合いも長く、灼熱メンバーの事も詳しい様で、ガウルさんが事情を説明すると、お祝いの言葉と部屋への手配をテキパキと熟して、出来る女将さんだった。


 こもれび亭は、柱も含め光沢のある木製造りで、ふっくら亭と同様一階は食事処で、二階が寝室になっており、暖かさとオシャレな雰囲気が素敵だと思った。


 お店は、料理番の旦那さんと双子のクウちゃんとスウちゃんの四人で切り盛りしているらしい。

 

 部屋の数が一部屋足りなさそうだったので、二人部屋で俺達三人で良いと手を挙げた。


「……エント。ナナちゃんがいるから大丈夫だと思うが……やった(・・・)なら男として、責任は持てよ? がっはっは!!」


「どひゃ!?」


「何もしませんよ!!」


 なんて揶揄(からか)われるシーンもあったが、これ以上灼熱メンバーの先輩方に気を遣わせたくはなかったからだ。


 隣にいるパンドラさんからは「でも……エント君は変態さん変態さん」とボソボソ聞こえて来る……


(まだあの時の事を、持って来るんかい!!)


 どっと疲れた身体でベットに腰掛け、荷物を置いて打ち上げに向かうその時だ。



 ガサッ



 死神のコートの左ポケットで、僅かに振動を感じた。


「兄さん行かないの?」


 パンドラさんと一緒に、扉を開けて聞いて来た。


「あ、うひょに食事を上げて行くから、先に行っててくれ」


 意外に感が良いナナは目を細め、じっと見詰めて来たが、一つ頷いてパンドラさんと下に向かってくれた。


 「うひょ!!」


 うひょを皮袋から出し、右ポケットから予め買い込んだオークの串焼きを三本あげた。


 その間に俺は手紙を取り出した。


 色は何故か黒だった。

 

(な、なんでぇえええ!?)


「め、女神様。お許し下さい」


 震える指で恐る恐る手紙を開ける。


――――――――――――――――――――


 私の愛すべき使徒へ。


 死神のコートを上手く使ってくれている様で、私はとても嬉しく思っています。


 さて、貴方が昨日行った事については何も言いません。


 そうなる現象だった、それだけです。


 さて、本題ですが、あの不愉快な司祭が話をしていた勇者召喚についてです。


 百年程前、人神アストレイアが勇者と呼ばれる者達を召喚した際、明らかに世界の魂魄量が減少しました。故に、私達はその危険性を彼女に訴えましたが、知らぬ存ぜずで、こちら側で証拠を掴もうとしましたが何も見つからず、原因である召喚者達を調べようにも、既にアデナに降り立った後で、どうする事も出来ませんでした。


 つまり、明らかに怪しい。


 そんな勇者召喚を大量に行うという情報から、過去を鑑みてもそれを止めなければ、この世界は予想よりももっと早く、限界を迎える事になると危惧しています。


 エント、貴方にばかり頼って心苦しいのですが、何とか阻止して欲しいのです。


 勿論、私も時と協力して、アストレイアを監視しつつ、こちらでも止めさせるつもりですが、アデナ側からの儀式召喚では干渉出来ない可能性も高いのです。


 今の所、生け贄となる人々を探し、助け出す他ありませんが何とぞ頼みます。


 この手紙は、時と伴に書きました。


 以前、エントに馬鹿にされて、馬鹿に……ユルサナイ


 追伸、久々に神庫の扉を開けたら、オークの死体が山積みになっていて、私発狂しちゃいました。思わずエントをバラバラのボキボキに引き千切りたくなって、我慢するのが大変だったの。これからは気を付けてね。お詫びに王都のお土産で許してアゲルカラネ。


 貴方の愛すべき死神より 


―――――――――――――――――――

 

 丁寧に手紙を畳み、左ポケットに仕舞う。


 色々頭を悩ませる案件があったが、取り敢えずこれだけは先に言いたい。



「女神様、お手紙とても素敵でした……過去は水に流し、どうかお許し下さいぃい!!」 


 

 俺は強く手を握り、心からお詫びした。


(世界の前に、死神にやられる気がするのは、何故だろう……)


 さて、冷静に考えて、王都にいる残された期間は、丸一日しか無い。


 それまでに情報収集を行い、セピアから連れ去られた者達の居場所を突き止め、何とか解放しなければならない。


 しかし、手紙に書かれた内容から、アストレイアって女神は阿呆なのかと強く突っ込みたくはなるが、神が何を考えているかなど分かるはずもなく、まずは腹ごしらえだと下に向かった。


 ふと、何か大事な事を忘れている感覚になり、記憶の糸を手繰り寄せると、奇跡的に思い出せた。



「あ、危ない……お土産忘れたら死ぬな……」

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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