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第79話 もしも明日世界が終わるなら


 前から集めていた情報と、ドーン先輩に聞いた内容を照らし合わせ、迷う事なく目的地であるデナーリス商会の前にやって来た。


 ヘルメスは聖塔を中心に、商業区、工業区、住区と綺麗に区画整理されており、中央に近い程土地の値段も高くなり、そこで活動出来る事は名誉な事とされている。


 何故そんな話をするかと言うと、商業区の中でも、一番端の建物の前に来たからだ。


(でけぇ……)


 顔を上げると、光沢のある赤茶色のレンガの屋根に、壁は白を基調にした丁寧な外観。


 高さも五階建てで凄いのに、幅も他の二件分はある。


 ベーシックな木で出来た黒い扉の前には、屈強な男が二人立っていた。


(兎に角、本があるか聞いてみよう) 


 足を進め扉に近付いた。


「止まれ!」


 扉の前にいた男達が、こちらを向いて叫ぶ。


 周りをぐるりと見回すと、近くにいる商人風な人達は、みんな俺を見詰めてくる。


「あの、俺ですかね??」 


 自分に指を指し確認してみると、間違いなかったらしく、男達が頷き近付いて来る。


 フルプレートを着込んでいるせいか、歩く度にガシャガシャと音が鳴って煩い。


「ここは冒険者の出入りは禁止されている。早々に帰れ」


「えぇ!? どうしてですか!?」 


「説明する必要はない。さっさと帰れ」


 有無を云わせぬ雰囲気。 


(ここまで来て、さすがに、はいそうですかでは終われませんな)


「と言うか、何故俺が冒険者だってなんでわかるんです??」


「事前に冒険者の情報は全て把握している。帰り給え、Eランクのエント君」


(さすがは商人ってか、情報力が半端ないな) 


「なら、何処に行けば本が手に入るか教えてくれませんか??」


 少しでも情報が欲しい俺は更に質問する。


「本?? 冒険者が本だと?? ふはははは!!」


 (さげず)む目で、腹を抱えて笑ってくる。


「何が面白いんですか??」


 どうして笑われるのか分からないけれど、その目は嫌いだ。


「冗談は酒場だけにしておけ。本は高級品なのだ、冒険者如きが買える訳がないだろう」 


(げ……その言い方だと、相当高そうだな……)


「そうなんですか!? でも、此処にはあると聞いたので、せめてどんな本があるかだけでも」


「いい加減に帰らんと……斬るぞ!?」


 膝を落とし、抜刀する体制で脅して来る。


「な!? こんな街中で戦闘は、色々不味いんじゃ……」


「お前何も知らないのか?? ここは三商人が一人であるデナーリス様の商店。この町を作られた謂わば、領主様の場所。冒険者一人殺そうが、問題にもならんわ!!」


 後ろにいるもう一人の男も、腰にある剣の柄を握り出すのが見えた。


(はぁ、折角来たけど、此処で争っても面倒しかないか……)


「ご、ごめんなさい!! 何も知りませんでしたので!! これで帰りますね!!」


 去り際まで兵士達が睨む中、一言だけ捨て台詞を吐く事にした。


「あぁ、もう1つ、わかった事があります。一流は一流でしかなかった……と言った所ですね」




 商店を出た俺は、聖塔前の広場にあるベンチに座り、空いた時間で何をするかぼーっと考える。


(このまま町をぶらぶら歩くのも身体が痛いし、ふっくら亭に戻るかなぁ)


 突然、目を塞がれて後ろから声がする。


「だ〜〜れだ??」


 俺の背後で、気配を感じさせない人物なんてそう多くはないし、そもそも知り合いなんてほとんどいないのだ。


 聞き慣れた声に、直ぐに答える。


「ナナしかいないだろ??」


 手を握り、振り返ればいつものナナだ。


「えへへ」


 可愛くはにかむ妹は、ぴょんとベンチを飛び越えて隣に座った。


(パ、パンティが見えちゃうでしょ!?) 


「お、お昼ごはんは、ちゃんと食べたのか??」


「もちろん!! 今日は食べ歩きツアーしてたから、お腹パンパンです!!」


 お腹をポンポン叩き、凄いドヤ顔だ。


 そんな満足そうな顔を見て、俺は笑いを必死に堪えるのだった。


「兄さんは、どうだったの??」


「あぁ…………」


 俺は今日の出来事を簡潔に説明した。


「えぇ!? 神様に目とコートを貰った!?」


「しぃーー!! 声が大きい!!」


「あ、ごめんなさい……」


 しゅんと落ち込むナナの頭を撫で、最後まで話し続けた。


「まぁ目については、場所が場所だから俺自身まだ見てないんだけどな」


「本探しも終わったんでしょ!? なら、約束通りに舟見に連れてって!!」


(そう言えば、そんな約束していたな)


「よし、なら行くか!!」


 飛び跳ねる勢いで喜ぶナナは、元気いっぱいだ。


「……クスクス」


「……あれ見て、兄弟かしら??」


 街中でヒソヒソ話されるのには原因があった。

 

 ナナに手を繋がれ、ぶんぶん振られて歩いているからだ。


(滅茶苦茶恥ずかしいぃいい!!)


 しかし、昔から手を離そうとすると、物凄く悲しそうな顔で立ち止まり、動こうとしなくなる為、大きくなった今も続いていて恥ずか死にそうになっている訳だ。



 閑話休題



 そのままヘルメスの防壁を潜り、川沿いの船場に到着した俺達は、大きな川沿いを少し散歩した。


 途中、近くで働いている人に話を聞き、小舟を貸してくれる場所があるらしく、そこに行って銀貨2枚で小舟を一つ借りた。


 少しボロい木造の小さな手漕ぎ舟だったが、ナナは目を輝かせて嬉しそうだ。


 ギィギィ


 日はもう夕暮れに差し掛かり、川が茜色に染まって写る。


「兄さん!! 凄く大っきいね!!」


「そうだな。でも、あんまりはしゃぐと落ちるぞ??」 


 子供扱いするなと頬を膨らませたが、直ぐに周りの景色をまた楽しんでいた。


 夕日を見る時、たまに思う事がある。


 とても綺麗だけれど、何故切ない気持ちになるのだろうかと。



「ナナ、もしも明日世界が終わるとしたら、いったら何をする??」


 ふと気になって聞いていた。


「……変わらないよ??」


「え??」


「兄さんが楽しい事をしたいのなら、一緒に楽しむ。泣いちゃうくらい寂しいのなら、最後まで一緒にいるよ」


 夕日の逆光で、ナナの表情が見えない。


「……なんだよそれ。ナナは自由なんだぞ?? 俺にこだわり過ぎだ」


「兄さんは乙女心がわかってないね。だから死神ちゃんにも同じ事を言われるんだよ」


(ぐはぁ!! 大事な何かがぁ!! てか、死神ちゃんて呼ぶのやめなさい!! 後で俺がどうなるか……どうなるんだ??)


 左ポケットに黒い手紙が来ないか心配になる。


「あ、そうだ!! ここでなら兄さんの目を見ても良いかな??」


(まぁ、ここなら大丈夫か……)


「あぁ。良いよ」


 眼帯を外し、ゆっくりと左目を開ける。


 ナナは少し驚いた様子で、見続けている。


「ど、どうだ?? 変じゃないか?? 俺は久々に見るからか、少し変な感じがするんだけど」


「綺麗……」


 そう言って、どんどん近付き、覗き込んで来た。


「近い近い!! 男なのに綺麗とか言われても嬉しくは……あれ、ちょっと嬉しい自分が怖いな……」


「ううん。七色に光が変わってとっても綺麗。黒い部分はオシャレな感じかな??」


 気になって、舟から顔を出して水面を見た。


 ナナの言った通り、常に色が変わる不思議な瞳、黒目部分は時計の針になっている。


「中二病が進んでもうたぁああああ!!」


 しばらく落ち込んでいると、俺の頭をナナが撫ではじめた。


「兄さん、今日は舟に乗せてくれて有り難う」


 そう言って、すっと立ち上がる。


「兄さんは、同仕様もなく怖がりで、寂しがりで、ちょっぴりエッチで、でも一生懸命で、いつも一人で何とかしようと頑張っています。なので、これからもナナが守ると誓います」


 ゆっくり右手を掲げ、夕日が重なる。


 何処かで見た気がする。


 その手を唇に触れさせると、近付いて来る。


「ま、待った!!」


「待った無し!!」


【シャドウバインド】


 身体中を影でぐるぐる巻にされて、固定された。


(嘘でしょ!?)


 いつの間にか、鼻と鼻がくっつく距離までナナの顔がくっつく。


「ナナのこれは何の効果も無いけれど、約束の証」 


 唇に柔らかい感触。


「!?」


(舌!? 何処で覚えたそんな事ぉおお!!)



「んーーーー!!」



 舟から戻った時には、ナナはケロッとしていたが、俺の大事な何かが汚れた気持ちになった。


 二人でふっくら亭に戻る頃には、影が見えない程暗くなっていた。


 部屋に戻り扉を開けると、パンドラさんとうひょが並んでクネクネ踊っていたので、そっと扉を閉め、下で食事を取る事にする。


 こうして壮絶な休暇を終えた俺は、また明日の冒険へと向かうのだった。

 ここまでお読み頂き有り難うございます。感想や↓☆の評価、レビューなど頂ければ幸いです。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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