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第73話 駄目


 森で木登りを終えた後も、俺達はブランコを作って遊んだり、宝探しをやったりと全力で遊んだ。


「ふぁ……ヘトヘトですぅ……」


 川原に戻った途端倒れ込んだのは、パンドラさんだ。


「兄さん、楽しかったね!!」


 まだまだ行けます!! 的なオーラを放つナナを見て、俺は思った。


(ナナ……恐ろしい子)


 うひょさんはと言うと、さっきから石の上で日向ぼっこを満喫中だ。


 昼食を食べてから、少し休憩を取った後は、今日もオーク狩りの仕事だ。


 ただ、今日はパンドラさんのケア以外にも、もう一つの目的がある。


「説明してた通り、これから森に入ってオークを一体狩る事になる。但し、今日から戦闘順を変更するので、良く聞いて欲しい」


「「??」」


 二人揃って、頭を斜めにしている。


「これからは基本、俺、ナナ、パンドラさんの順で攻撃する。万が一の緊急時についても、殿は俺がやる予定だ」


「と、特に問題は、無い様に思いますが……」


 パンドラさんは、順番が変わって無い為、特に異論は無い様子。


「駄目」


 唐突に、ナナの声が響いた。


「……ナナ」


「絶対駄目」


 様子が変わったナナを見て、パンドラさんも動揺し始めた。


「……パンドラさん。すいませんが、ちょっと二人で話をさせて下さい」


 ナナの手を取り、少し離れた場所に移動してから向き合う。


「兄さん、ナナを心配させて楽しい??」


 作ったような笑顔とは裏腹に、瞳の奥に怒りの炎が見え隠れしていた。


「以前にも説明したけれど、ナナをそうさせているのは、魔女との契約のせいだ。俺が危険になったら、ナナは反射的に暴走してしまう。昨日のオークとの戦闘を見て、やっぱりこのままじゃ駄目だって思ったんだ。その為のトレーニングなんだよ」


「兄さんは分かっていない。これはそう言うのとは違うんだよ……」


 胸の刻印辺りに手を置き、目を閉じて何かを感じとっている風に見える。


「俺が傷付くのを、ナナが心配してくれるように、俺もナナが傷付くのは見たくは無い。ましてや俺はお前のお兄さんだ。妹を守らない兄なんかに、俺をしないでくれ」

 

「……ずるいね兄さん」


 実際、俺が傷付く度にフォーメーションが意味を成さないのは、今後の戦闘で、致命的な弱点になり兼ねない。


「これから、沢山の冒険をするんだ。今の内に気になる部分は克服しておきたいからな」


「……やれるだけだからね」


「有り難う。ナナ」


 不満気なナナの頭を撫でる。


 直ぐ、彼女のお尻辺りが、動いていて慌てて指摘する。


「ナナ、しっぽしっぽ!!」


「あ!!」 


 ナナは普段から闇魔法で、尻尾と角は隠しているが、尻尾に関しては、動かすとローブも揺れたりするので、たまにドキッとさせられる。


 一先ず話し終えたので、パンドラさんのいる場所に戻り、早速森に入りオークが居そうな森の奥に向かった。


 いつもの気配察知と山彦を使い、探す事約30分。


 その間は、何故かまた三人で手を繋いでの謎探索だったが……


(はぁ、こんな冒険者いないだろうよ……)


 不意にナナの動きが止まる。


「いたか??」


「うん、2時方向にオークが1体。だけど、近くにスライムも2体いるけど、どうする??」


 間をおかず山彦で確認すると、たまたま近くに居合わせているだけの様だ。


「了解、俺がオークを叩く。ナナとパンドラさんはそれぞれスライムを撃破した後に援護。スライムは動きが遅いけど、油断はしないで下さいね??」


「わ、分かりました」


「……分かった」


 オークは鼻が良い為、また風下に周り込み、距離を縮めた。


 木の影からオークまで50メートル。


 《ナナ、先に行く!!》


 身体強化を使って一気に距離を縮め、魔刀でオークの足の関節付近を斬りつけた。


「ブヒィィイイ!!」 


 振り返りオークを確認すると、片膝を付きこちらを睨んで叫んで来る。


 傷が浅いのか、相手の肉が分厚かったのか、とにかくオークが立ち上がる。


(森の中じゃなきゃ、火魔法で倒すのは簡単なんだけどなぁ)


 そう、このオーク討伐クエストはただ倒すだけでは駄目なのだ。


 肉質を落とさず倒す事が条件、と言っても過言では無く、それ故、稼ごうとすれば難易度は跳ね上がる。


 こう言った理由から、オークのクエストは不人気という訳だ。


「まぁ、俺達とは相性良いとは思うんだけどなぁ!!」


 再び強化して、下半身を狙い攻撃していく。


 相手は2メートル近くあり、前回は首を狙った攻撃に対応されたのもあって、狙いを変えて戦う。


「ブヒィィイイイイ!! ブヒィィイイイ!!」


 攻撃を躱し、何度も膝を斬り続けた結果、立て膝状態になったオークが首を左右に振りながら叫けぶ。



 嫌な予感。



「兄さん!! 早くそいつを殺して!!」


 スライムを倒し終えたナナが、慌ててやって来た。


 ナナの声で瞬時に理解する。


 急いで後ろに周り込み、首をはねた。


 しかし、俺は休まず辺りを確認する。



【山彦】

 


「ち、ナナ!! パンドラさんが手こずってる!! フォローしてくれ」


「で、でも!! この感じは!!」


「良いから行け!!」


 山彦によって得た情報は、オーク2体がこちらに向かって来ている事実だ。


 更に両方共、木の棒を装備した武器持ち。


 つまり、あの時の鳴き声は、仲間を呼ぶ為の声だったのだ。


「はぁ……明日は筋肉痛確定だな」


 鼻息を荒くして、目の前に現れた2体のオークの目は血走り、こちらを見付けると直ぐ様襲い掛かって来る。


 俺は徐々に全身に纏う身体強化の()を上げて行く。


 縦、横に飛び交う太い棒を躱しつつ、深めていく。


「よ、ほ、っと!!」


 隙を見て距離を取った。


「ブヒィィイイイ!!」


「ナナに、ああは言ったけれど、妹を心配させて泣かせるのも嫌だからな。だから(・・・)


 ジャイ兄さんやヘラクレスさんとの修行で、習得したあの技(・・・)を発動する。



 キィイイイン




 本場で使うのは初めてで、成功したあの日の事を思い出す。 


…………


……



「エント〜やったね〜」 


 ジャイ兄さんが、自分の事の様に喜んでくれる。


「ふ、見事だ」


 ヘラクレスさんも、修行に携わっていたせいか、珍しく褒める。


「はぁ!! はぁ!! で、でもそんなに長くは持たないよ」 


 全身びっしょり汗をかき、仰向けで倒れる俺。


「それは〜使って行くと、身体が慣れて〜長く出来るって〜爺が言ってたよ〜」


「えぇ……やっぱり楽な道は無いんだね」


 ヘラクレスさんとジャイ兄さんはそんな俺を見て笑っていた。


「でも〜僕のと〜光り方が違うんだね〜」


「僕もジャイ兄さんみたいに金色が良かったなぁ」 


「エントのもかっこ良いよ〜まるで……」


…………


……


 そう、俺は魔装(・・)を習得した。


 その時、折角だからと自分の魔装に名前を付けたんだ。


 青白く光る輝きを兄さんは、星の様だとそう言ってくれた。


 故に、俺の魔装をこう名付けた。


 


 


 【星装】


 



 蒼白い光を纏い、辺りは強烈な光で包まれる。


「時間が無い!! 行くぞ!!」


 瞬時に詰め寄り、手前にいたオークの脚を、地面水平に蹴り払いう。


 ボキっと鈍い音がした時には、すかさず頭を持ち一周させる。


 グキ


 あと1体。


「ブヒィィイイイ!!」


 その隙に、後ろにいたオークが棒を振り下ろして来るが、もはやそれに意味は無い。


バシィ!!


 右手で受け止めるが、さすがの衝撃で俺の足が少し地面に埋まる。


「力に自信があるようだが……お前なんかに負けるかよ!!」


バキバキバキ


 右手に持った太い棒を握り潰して行く。


「ブヒィ!?」 


 本能がそうさせたのか、オークは棍棒を離し、一目散に逃げようと背中を見せる。


(……許せ)


 俺は右手から一寸八尺程の光輝く刀身を創り出す。



 【星刀一閃】



 振り抜いた後、背中の方からオークの戸惑い混じる声が聞こえた。


「ブ、ブヒィ!? ビィィイイイ……」


 ズルッとオークの首がずり落ち、首から血が噴き出す。


 俺は周りの安全を確認した後、星装を解除する。


「はぁはぁ!!」


 練習してた時と同じで、全身から汗が噴き出し、既に腕や足の筋肉が悲鳴を上げているのが分かる。


「に、兄さん!?」


「エント君大丈夫ですか!?」


 二人とも無事で、倒れ込んだ俺を見て酷く心配しているので、泣けなしの力を振り絞り、心配掛けまいとこう応えた。


「わ、わしゃ……もう駄目じゃ……ゴホゴホ」



「「…………」」



 何故かその後、暫く二人は口を聞いてくれなかった。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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