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第58話 初クエスト


「お、待たせしました!!」


 そう言ってやって来たのは、専属担当になったパンドラさんだ。


 あの後「直ぐに準備して来ます!!」と気合いを入れて立ち去ると、俺達はギルドの一階にあるクエストボード前で、初めての依頼を物色しながら待つ事にした。


 パンドラさんが現れた途端、周囲の冒険者達がざわ付き出す。


「はぁ……」


 あまり目立つような冒険者には、なりたくなかったんだけど……


 初日早々に、新人冒険者が専属担当者を持ったうえ、その担当者と冒険に出るなんて、前代未聞にもほどがある。


 それにも増して、この人は目立ち過ぎる訳で……


「パンドラさん、今度は緑の帽子にしたんだね!!」


(箱だよね!? ナナちゃんそれ帽子じゃなくてただの箱!!)


 改めて彼女を見ると、目の部分に二つ穴が空いた四角い箱を被り、クリーム色のシャツと紺のパンツに、上からこげ茶色のローブを羽織っていた。


 こうして立って並んで見ると、ナナよりも身長は高くて大人らしい体格をしているが、残念ながら箱のせいで何処からどう見ても変だ。


(大丈夫、冷静になれ……魔物達と生活していたんだし、こう言う生き物だと思えば良いんだ!!)


 そう心に強く暗示をかけ、意を決して話し掛ける。


「パンドラさん、これから宜しくお願いします。改めて、俺がエントでこっちがナナです。エントにナナと呼んでくれて構いませんので」


「どひゃ!? 宜しくしくです!!」


(はぁ……はぁ……落ち着け……落ち着けくんだ!!)


「そ、それで確認だったんですが、パンドラさんは私達とパーティを組んで、冒険者として依頼を(こな)し、ギルドに戻ったら職員として対応してくれるって事で良いんですか??」


「は、はい。じっちゃ……ギルドマスターからも、そう言われております!!」

 

「なるほど、了解しました。あと、何度も言いますけど、私達の方が年下なんですから、堅苦しい言葉じゃなくて大丈夫ですからね??」


「あ、有り難う!! ではこれからは、エント君にナナちゃんって呼びますね!!」


 興奮気味に鼻息を荒くしたパンドラさんは両手でガッツポーズする。


「さっそくですけど、此処に書いてある常時クエストの薬草採取は、いつでも買い取り可能なんですか??」


「は、はい!! 薬草は色々な薬やポーションの材料にも使われるので需要が高く、そういった物はある程度常備する商品が多いので、いつでも受注しているんです」


「なるほど……他にFランクの俺達が受けれるクエストは、町の夜間警備、ゴミ拾いに建築現場のお手伝い、それから畑の収穫作業。一つ上のEランクは一角兎の納品、ゴブリン討伐にボアの討伐が常時クエストで護衛の雑用なんかもあるな……」


「兄さん、どれにするの??」


 ナナは早く依頼を受けたくて、ウズウズしているのか我慢出来ずに聞いて来た。


「ナナ、慌てない。何事も用意八割っていつも教えてるだろ?? まずは、運転資金の結果次第だ」


 俺は二人を連れて、買い取りカウンターへ向かう。


「おうパンドラ!! ギルマスから聞いたぜぇ?? 専属契約した冒険者と一緒に同行するんだってな!?」


 受付に立っていた男が、威勢良くこちらに向かって話かけて来た。


 肌は浅黒く日に焼け、身長はニメートルはある大男で、タンクトップから見えるムキムキな筋肉は至る所に傷跡が見えた。


(この人も、ただ者じゃなさそうなおじさんだ……)


「フーバさんこんにちわ。そうなんです……このエント君とナナちゃんに無理を聞いて貰って、運良くチャンスを貰ったので何とか頑張る予定です!! 頑張らなきゃ……」


「ははは!! そりゃ災難だったな!! エントにナナだったか?? こいつは不器用だが悪い奴じゃねぇ!! 大変かもしれねぇが宜しく頼むな!!」

 

「はじめまして、ナナです!!」


「兄のエントです。宜しくお願いします」


「おう、そんで此処に来たって事は、何か売りたい物でもあるのか??」


 俺は一つ頷くと、背負い袋から集めていた魔核を取り出した。


「ほぅ、ゴブリンの魔石か、結構あるじゃねぇか」 


(魔石?? ここらでは魔核の事を魔石と言ってるのか??)

 

「今検品するから、ちょっと待っててくれや」


 テーブルに広げると一つ一つ丁寧に見ては紙に何か書いている。


「ゴ、ゴブリンを沢山倒してたんですね!! 新人冒険者でも油断すると大怪我をしたり、下手をしたら亡くなる方も居ますから凄いです!!」


「親から餞別にと貰ったのがほとんどで、僕らが倒したのはこの町に来る途中、運良く弱っていたゴブリンに出会って二人で何とか倒したってだけで、ラッキーなだけですよ」


「ナナもバリバリっと頑張りました!!」


「バリバリっと??」


「一生懸命バリバリ頑張ったって事です」


(あ、危ない、後で注意しておかねば……)


「おう、検品が終わったぞ!!」


 話をしている間に、フーバさんの検品が終わり、彼の説明を聞いた。


 フーバさんは初めての買い取りだからと言って、俺達に対して凄く丁寧に説明してくれた。

 

 魔石は大きさや透明度によって価格が変わるらしく、今回持って来たゴブリンの魔石は小さい物ばかりだった為、一番小さい物で銅貨50枚、中位の大きさで銀貨1枚、そして一番大きい魔石で銀貨1枚銅貨50枚の値が付けられた。

 

「全部で銀貨24枚銅貨70枚だが、今回は初めての取引だ。おまけして銀貨25枚で買い取るがどうする??」


「有り難う御座います。こんな新人にここまで丁寧な説明と、おまけまでして貰えるんです。勿論、売りますよ」

 

「あんがとよ!! 魔石は町の至る所で使われる必需品だ、小さい物でも何時でも買い取るからな!!」


 俺達はフーバさんにお礼を言うと、再びクエストボードを確認した後、ギルドを出た。


 ナナとパンドラさんには歩きながら、魔石分のお金は皆の資金に使う事を説明し、必要な物はこのパーティ資金から買って、収入があった際は取り分の一割をそれぞれ貯金して貰う事で承諾してくれた。


 ナナは「兄さんが管理して!!」と甘えて来たが、お金の使い方も勉強だからと自分で持たせた。


 パンドラさんには道具類が売っているお店を案内して貰い、パンドラさん用の背負い袋をそこで一つ銅貨20枚で買った。


 彼女は町の事に詳しくて、凄く助かる。


 次に案内して貰ったのは武器屋。


 ナナには昔、旅人さんから貰ったナイフを渡してあるが、俺は魔力刀を見せる訳にも行かないので、俺の小太刀やパンドラさんの武器が必要だった。


「そう言えば、パンドラさんはどんな武器が使えるんですか??」


「ひょ!? わ、私は力だけは人一倍あるので、ハンマーとかが好きなんですけど、そ、その……何でもかんでも木っ端微塵にしちゃうので……でもでも、ギルマスに槍を少しだけ教えて貰った事があります」


 あの太いペンを9999本割ったって話は、やはりその怪力が原因なのだろう。


 さっそく武器屋の店主に話し掛け、小太刀と槍を見繕って貰った。


 が、小太刀は特殊な武器で在庫は無く、槍は木の槍20銀貨、銅の槍銀貨50枚、鉄の槍100銀貨、鋼の槍に至っては500銀貨と手も足も出ない。


 試しに木の槍をパンドラさんに持って貰ったが、少し力を入れただけで、ミシミシと音がしたので慌てて取り上げた。


(弁償なんて出来る余裕はありませんからね!?)


「兄さんどうするの??」


 さすがにナナも心配になって来たようだ。


「ん〜〜」


 並べられている武器屋の品を改めて見ると、ある物に目が止まる。


「おじさん!! その端に立て掛けてある鉄の棒はなんですか!?」


「ああ、それはうちの大事な商品を盗もうって輩を、ぶっ叩く為に置いてあるんだ。たまにそういう奴がいるんだよ、まったく!!」


 武器屋のおじさんは困った顔で、深いため息を吐いて言った。


「それって、売ってくれませんかね??」


 長さは片手槍程度(約一メートル半)の長さがある鉄の棒を指差し、交渉してみた。


「こいつをかぁ?? 別にかまやしないが、まぁ材料費だけで考えりゃ……そうだなぁ、銀貨10枚ってところか??」


「買った!! あと、そこの銀貨5枚のナイフも買います!!」


「えぇ!? 兄さんあれ槍じゃないよ!? 鉄の棒だよ!?」


「エント君、私は全然構わないんですが、資金が勿体無いんじゃ……」


「これで良いんですよ。それに俺達の目的は魔物退治じゃないんですから」

 

 そう、俺達の初めてのクエストは、冒険者の定番である薬草採取から始めるんだし、今はこれで良い。




 ただし、今だけだ。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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