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第44話 釣り

 

 決闘やジャック兄さんの登場の後、ようやくいつもの日常に戻って来た。



 ちゃぷん!!



「エ、エント!! 引いてる、引いてるよ!! ど、どうすれば良いんだい!?」


「アラ子姉さん竿を上げて!!」


「うひょぉおおお!! うひょぉおおお!!」


 お手製の浮きが水面から沈み、竿のしなり具合から大物を予感させる。


「アラ子姉さん!! デカそうだ!!」


「ど、どうすりゃ良いんだい!?」


「こうやって、竿を立てるんだ。一気に立てると糸が切れちゃうから、ゆっくりとね」

 

 俺は今、アラ子姉さんとうひょで、いつもの湖で釣りをしている。


 以前から体を洗っている時に、何度も魚の影を見かけていたし、最近は木の実や肉を食べるようになったけれど、そうなると次はやはり魚も食べたくなるのは自然な事だ。


 今では岩塩もあるし、食べない理由は無い……はぁ、楽しみで仕方ない。

 

 森の中でしなりの良い木を探し、運良く竹に似た植物を見つけたので、丁度良い長さに切った物を三本用意した。


 竿の強度は実際やってみないと分からないし、予備用として多めに取って来た。


 アラ子姉さんに頼んで、透明性の高い糸を作って貰い、お手製の糸巻き棒で巻いて、糸も割と簡単に準備出来た。


 会話中、姉さんは釣りをした事がないと言うので、誘ってみたところ、「面白そうだから、あたいもやる!!」と一緒にやって来たという訳だ。


 姉さんに糸を頼んでいる間に、浮きに使えそうな木を探し、色々試行錯誤した結果、アラ子姉さんの作業場の近くにあった、例の青い木の枝が一番良かった。


 枝をナイフで丁寧に削り、細長く形を整えていく。


 あとは遠くから浮きを見やすくする為に、先っぽを赤く塗りたかったけど、中々良い染料が見つからない。


 染料なんて、ザ・サバイバルなこんな場所で簡単に見つかるはずもなく、ならば自分で作ろうと、赤っぽい草を搾ってそれを塗ってみたり試したけれど、水に入れると直ぐに取れてしまって微妙。


 もう少し拘って作りたかったけど、結局アラ子姉さんの痺れが切れそうなので、あとはじぃちゃんの枝をナイフで削り、返し付きの針を作って完成だ。


 針が木製なんてと思う無かれ。


 じぃちゃんの枝は、鋼のように硬い。


 最近、定期的に枝を切るように頼まれているけど、魔力刀で何度も何度も斬りつけないと、切れないほど硬い。



 閑話休題



 ザパッ!!


 アラ子姉さんが、ようやく釣り上げた。


「うぉしゃああ!! エント!! あたい釣れたよ!! 凄いだろ!?」


「おおお!! アラ子姉さん凄い……けど」


 釣り上がった物は、俺の予想していた魚ではなかった。


(な……何故、魚にカニの脚が生えてんだよ!?)


 魚自体は五十センチ位の見事なサイズではあるが、腹の部分から脚が何本も生えていて、違和感だらけの生物に驚きを隠せない。


「何だこいつ?? あたいにちょっと似てて、面白いな!! あははは!!」


「ま、まぁ……姉さんが楽しんでくれてるなら良かったよ」


 近くの地面に魔法で穴を掘り、水と謎生物を入れておく。


(後でヒスイ姉さんに聞いて、食べれるのか聞いてみよう)


「うひょ!? うひょおおおおおお!!」


 お次は、うひょがかかった。


 根っこをしっかり地面に差し込み、蔓を器用に竿に巻き付けながら釣りをしている訳だが、何とも言えない絵面に、俺はもう深く考えない事にする。


 うひょは思いのほか上手に釣り上げたが、今度は三十センチ程のまん丸な魚が釣れた。


 身体の半分以上が巨大な目で、ヒレは必死に探してようやく分かる程度の大きさしか無い。


(おい……何だこの湖……変なのしか釣れねぇぞ!?)




 それから二時間くらい粘って、空が茜色に変わって来た頃。


「エント!! 姉ちゃんまたかかったぞ、凄えだろ!?」


「うひょ!? うひょひょひょひょ!!」


 その後も二人は(・・・)爆釣中だ。


 ウツボに似ているけど尻尾の方も顔になってる魚、真っ黒なクラゲっぽいモノ、ヒレが水草で出来てる魚など、謎生物のオンパレードではあったけどな……


 しかし、俺はまだ釣れて居ない。


 そんな様子を見て、うひょがこちらを向き話しかけて来た。


「ぷひょ!! ぷひょ!! ぷぷ!!」


 ニタニタ笑う顔は、どう見ても慰めているようには見えない。


「お……俺は大物狙ってんだよ!!」

 

 釣りを教えると言った本人が、坊主なんて醜態はユルサレナイ……


 ここはもう本気を出すしかない!!


『山彦』


(クックック、山彦を使えばソナーのように何処に魚がいるか分かるんだよ。卑怯?? 馬鹿言うんじゃありません!! 人にはやらねばならない時があるんだよぉおお!!)

 

 俺は山彦を使い、ビッグサイズのちゃんとした魚っぽいモノの付近に狙いを定め、仕掛けを投げ入れた。


(さぁ、来い!!)


…………


……


 ツン


(……まだ)


 ツンツン

 

(……まだだ!!)


 ちゃぷん!


「今!!」


 竿を立てた瞬間に伝わる相手の力量。


(これはデカイ!!)


 水面を糸が踊りだす。


 相手も全力で抵抗して来る。


「大きそうじゃないか!! エント頑張んな!!」


「うひょ!? うひょおおおおお!!」


 二人からの声援を受け、ここで何としても釣り上げねばと竿に意識を集中する。


 ギュン!!


 竿が折れんばかりにしなる。


 こうやって、突然、凄い力で水の中に引っ張り込もうとするのを必死に踏ん張って耐える。


(く、やるじゃないか!!)


 何度も戦い、徐々に魚も疲れて来たようだ。


 少しづつこちらに寄せ、一気に陸に上げた。


「今だ!! うぉおおおおおお!!」


 ドサ!!! ビチビチビチビチ!!


「うひょおおおおおおお!!」


「おおお!! エントやったな!!」

 

 釣り上げた魚を見て、俺はほっとする。


 八十センチはある、巨大な鮎っぽいまともな魚だったからだ。


 この湖には、謎な生物しか居ないのかもと、半ば諦めていたから本当に良かった。


 俺はその魚に近づき、口の針を外す。


 持ち上げた時の重みは、この激しい戦いの成果を実感でき、嬉しさがふつふつと込み上げて来る。


 その時までは……


 「い……や」


 「ん??」


 (なんだ?? どこからか声が聞こえた気が……)


 ふと、両腕に持っている魚を見た。


 



 「いやぁああああああ!! いやぁああああああ!! いやぁああああああいやぁああああああいやぁああああああ!! いやぁああああああいやぁああああああ!!いやぁああああああ!!」



 「「「……」」」



 表情のない魚が口をパクパクさせて、悲鳴を上げている。


 俺はゆっくりと身体強化を全身に纏わせた後、尾びれをガシッと掴み、全力で湖へ投げつけた。


 茜色に染まる水面に、魚が何度も跳ねていくのを眺めた。


(あれ、ゴミが目に入ったかな?? 涙が止まらないや……)


「エ……エント、あんた……」


「ぷひょ……ぷぷ」


 アラ子姉さんは、どうしたんだろう?? ちょっとゴミが目に入っただけなのに俺を凄く心配している。



 その日の夕食では、ファミリアで魚パーティーが催された。



 念の為、ヒスイ姉さんに釣った魚を確認したところ、たぶん(・・・)食べて大丈夫との事だった。


 ヒスイ姉さんは、何故か食べなかったけれど。


 大事なのでもう一度言っておく、ヒスイ姉さんは食べなかった。


 まぁ実際に食べてみたら意外と美味しかったけどね。


 特にカニの足付き魚は、火を通すと予想通り足が紅く染まり、カニに似た味がしたのには良い意味で驚かされた。


 ただ、いつもより塩を掛けすぎたのか、久々に食べた魚は酷くしょっぱかったのは気のせいだろうか。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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