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第41話 ジャイ兄対エンペラー


《な、なんて事でしょう!? 私にはエント選手の逆転勝利に見えましたが、まさかの降参!! これについて、キラさんはどう思われますか!?》


「シュシュシュー」


《ふむふむ、エント選手の疲労と言うよりも、何か別の意図があると考えるのが自然だという事ですね?? 魔王樹ファミリアには一体何の思惑があったのか!? アトデオシオキシネ》


「シュー……」


 

《クソチビ!! 貴様ぁああああ!!》


 シャドウが背後でカンカンになって、怒鳴って来たけれど、そんなの無視だ。


 それにジャイ兄さんに戦って貰う事は、最初から決まっていた事だ。



 あれは、決闘前日の夜。


《エントよ、お主から聞いた戦略なら、恐らくどのパターンを使っても勝てるじゃろう。儂もどん引きの甲角マニアじゃな……ま、まぁ故に先に頼みがあるんじゃが、もしも、うひょが勝ったのなら、エント、お主は負けてくれんかの??》


「えっ!? でも、先に二勝すれば……何か理由があるの??」


《ほっほっほ、一番の理由はやはりジャイアンを戦わせたいからじゃ。ジャイアンにとって、もしかすれば宿命を運命に変える一生に一度のチャンスかもしれぬ。儂はそれほど重要な機会じゃと思っとる。もう一つの理由は、魔王樹ファミリアに喧嘩を売ると言う事が、どう言う事なのかを相手に見せつけて置くのも、今後、争いを避ける為に必要な事じゃからの》


 じぃちゃんの話を聞いて、少し考えてみたけれど、大事なのはジャイ兄さんとファミリアにとって良い事だ。


「……分かった。ジャイ兄さんの為になるなら」


《ほっほっほ、有り難うの。それと何も一方的に負けんでえぇからのぉ。試合に負けて、勝負に勝つんじゃ……言っている意味はわかるじゃろ??》


「それは……あいつら怒るだろうね」


「《ふっふっふ》」


 なにはともあれ、結果として俺とじぃちゃんが話していた通りの内容となった訳だ。



 ドゴォオオオオオオン!!


 

 突然、甲角一族側で爆音と土煙が上がる。


《グボ……エ……エンペラ……様……な……何故……??》


 視線を向けた時には、既にシャドウがエンペラーに吹き飛ばされた後だった。


《一族の面汚しめが……》


(うわぁ……痛そう。俺が言えた義理じゃないけど、ああ言う味方同士の制裁ってのは好きじゃないな)


 バシッ!!


「うわぁっと!?」


 考え事をしながらギャラリーに戻った瞬間、俺の胸に何かが飛びついて来た。



 それが何かを知って青ざめた。



「弟よ〜!! 負けたら刺すって言ったよね!? 刺すって言った!! あはははは!! 刺す刺す刺す刺す刺す!!」

 

「ヒ、ヒメ姉さん!? ま、ままま待って!! あれはじぃちゃんと決めてーー」



 ドスッ!!



「ぎゃぁぁぁあああああ!!」



 なんだか俺の方も大概だった。



《ほっほっほ、さて最終決戦じゃ。両者前に出るんじゃ!!》


《魔王樹よ、先の一族を侮辱した事、必ず後悔させてやる……》


《エンペラーよ、今更じゃが一つ言うておこう……儂は……儂はの!? エンシェントトレントじゃから!! 魔王樹なんて禍々しい名などでは断固としてないぞい!?》


《ちっ!! 惚けた事を……》


《エンペラ〜〜今日は宜しくね〜〜》


《ほっほっほ、用意は良いかの??》


《……ああ》


《うん!!》


《八卦良い!! 始めぇえええええ!!》


《はぁあああああ!!》


《!?》


 ガキィイイイイン!!


《さぁ!! いよいよ最終決戦が始まりました!! いきなりジャイアン選手が突撃!! エンペラー選手と角での組み合いが始まりました!! キラさん、どうご覧になられますか!?》


「シューシュシュ!!」


《え!? ジャイアン選手が自分から組み合うのは見た事が無い!? それは胸熱な展開じゃないですか!! この戦いどうなるんでしょうか!!》


《お前が向って来るとはな……ジャイアン》


《僕は〜〜全力で戦うと〜〜決めたからぁあああ!!》


「ジャイ兄さん頑張れぇえええ!!」


 周りの応援も白熱して行く。


 うちは相変わらず「Nooo!!」だの「Uooo!!」だけど……


《クックック、逃げてばかりのあの腰抜けが、俺に向って来る日が来るとはな……が、まるで未熟!!》



 ガキィイイイイン!!

 

 エンペラーが首を一振りすると、兄さんはあっさりと吹っ飛ばされた。

 

《ぐあ!?》


 ドォオオオオン!!


 エンペラーさらに追い打ちを掛け、長い下角を巧みに使い、ジャイ兄さんの腹に滑り込ませると、再び吹き飛ばそうと力を入れた。


《うぉおおおお〜〜!!》


 それでもジャイ兄さんは、必死に立ち向かおうと気合を入れる。


《クックック、良いだろう。少し遊んでやろう》


 ドォオオオオン!!


 ドォオオオオン!!


 ………………


 …………


《ジャイアン選手が何度も果敢に向かっていきますが、しかし、さすが甲角一族のチャンピオン!! 全く危なげなく捌いています!!》



 ドォゴォォオオオオン!!



《ジャイアンよ、もう終わりか??》


 今までで一番激しく吹き飛ばされたジャイ兄さんは、動かなくなる。


《あは……あはははは〜〜!!》


 しんと静まりかえる中、突然の兄さんの笑い声だけが響き渡った。


《いよいよ、可怪しくなったか??》


《お、弟とね〜〜毎日修行してたんだ〜〜その度に〜〜弟はね〜〜何度吹っ飛ばされても向って来たんだ〜〜まるで〜〜今の僕と同じ様でね〜〜》


 毎日行った一本勝負の事だろう。


《僕の弟は〜〜凄いんだよ〜〜何が凄いって〜〜ただがむしゃらに立ち向かうだけじゃなくて〜〜どんどん成長して行くんだ〜〜だから〜〜僕も〜〜やってみる!!》



 ブォオオオオオン!!



 兄さんは一気に全身へと身体強化を掛けると、高く飛行して勢いを乗せエンペラーに突撃した。


 ガキィイイイイイイイ!!


 じぃちゃんから聞いたけど、甲角種の中では無属性の適性を持っている事は珍しいらしい。


 俺も持っているせいか、珍しいと言われてもいまいちピンと来ないけど。

 

 まぁ兎に角、今まで身を守る時にしか使って来なかった身体強化を、ここに来て攻撃に転じて使用した。


《ぐぬぅううう!!》


《まだまだ〜〜!!》


 ガキィイイイイ!!


 ガキィイイイイイイイン!!


 身体強化した全身は、まるで大砲のような威力とスピードで、繰り返しエンペラーを襲い続けた。


《なんとぉおお!! ここに来てジャイアン選手、身体強化からの飛行攻撃に切り替えたぁ!! 徐々にエンペラー選手が押されています!!》


《クックック……ふはははは!! 私が押されている?? まだ何もしていないというのに、滑稽な言いようだな》

 

 エンペラーの足元は徐々に地面に沈み、一見もう少しで勝てそうな雰囲気だというのに、彼が発する言葉はまるで問題無いかのような余裕がある。


《楽しませて貰った御礼に、見せてやろう。私が一族の長である理由をな!!》

 

 そんな言葉など気にせず、ジャイ兄さんは空から再び突っ込んだ。


ひざまずけ》



 重力魔法『グラビティ』



 エンペラーの魔法が展開されると、彼の周囲の空間がグニャリと歪み、そこに入ったジャイ兄さんは、まるで岩が突然落ちて来たように、地面に叩き落ちてしまった。

 

 ドサァアアアア!!


《ぐぅううううう!!》


「ジャイ兄さん!?」


 エンペラーの前で身動きが上手く取れなくなったジャイ兄さんが、ぐぐっと顔を上げた時にはもう、エンペラーの下角が紫色に輝き出していた。


《無様だな……ジャイアンよ。お前が少し変わったのには正直驚いた。だが、私にはまるで届かぬ。私は一族の長。背負う物が違う。鍛えた数が違う。重ねて来た覚悟が違う。それら全て、生きて来た重みがまるで違うわぁあああああああ!!》

 

 ボゥっと発光していた角は、一気に輝くと天を割るかの如く、エンペラーはそれを振り下ろした。



 ドゴォオオオオオオオオオオオオオ!!



 凄い衝撃と土煙が周りを包み込んだ。


「ジャイ兄さぁああああん!!」


 土煙が収まると、そこには巨大なクレーター。


 そして、ボロボロになったジャイ兄さんと共に、勝者であるかのように見下ろすエンペラーがいた。

 

《勝負あった……私の勝ちだ》


《ほっほっほ、まだじゃ……まだ勝負はついとらんよ??》


《ゲホゲホ!!》


《……あの一撃を受けて生きてるだと!?》


《ジャイアン選手!! あの凄まじい一撃を受けても耐え切ったぁあああ!! しかし、ダメージはかなり大きいはず!! 此処からでも見えますが、もう立つのがやっとのようです!! 彼はまだやれるのか!?》


 ドゴォオオオン!!


 バシィイイイイン!!


 エンペラーは容赦無く、おそらく重力魔法を纏った角で、ジャイ兄さんを木々も巻きこんで吹き飛ばすほどの強襲を掛けた。


《これで終わりだ!!》



 ドゴォオオオオオオオオオン!!



《はぁはぁ!! ま、まだ〜〜まだ〜〜》


《……何故立つジャイアント》


《ゲホッ!! はぁはぁ!! 僕は〜〜逃げてたと思ってた〜〜逃げて!! 逃げて逃続けた弱虫だと思ってたんだ〜〜だけどぉおおお!!》


 ジャイ兄さんの身体強化が徐々に変化していく。


《弟が教えてくれたんだ!! 気付かせてくれたんだ!! 僕は戦っていたんだって!! 戦って、戦って、戦い続けていたんだって!!》

 

 纏う身体強化が、光の粒子を放ち金色に輝き出していく。


《僕は、僕は!! 戦い続けて来た戦士だぁあああああ!!》


《ほっほっほ、エントよ見ておるかの?? あれは難しい魔法などではなく、ただの身体強化じゃ。じゃが、鍛え練り上げ極めたそれは、こう呼ばれておる……》


 これが聞いていた身体強化の極み。



『魔装』



 ジャイ兄さんの『魔装』によって、全身は金色となり、魔力で作られた金の双角と羽は鋭角に伸びると、羽ばたく羽根からは金の鱗粉が舞った。


「やばい……やばいやばいやばい!! ジャイ兄さん滅茶苦茶かっけぇえええええ!!」


「うひょ!? うひょぉおおおおお!!」


 興奮の余り鼻血が出てる気もしたけど、俺はもうそれどころじゃなくって、応援し続けた。


《その姿……クックック、良かろう!! 私も本気で相手をしよう!!》



『グラビティフィールド』



 ここに来て、エンペラーの周囲の歪みが一層肥大化し、禍々しいものとなっていく。


《来るが良い!!》


《うぉおおおおおおおおお!!!》


 ジャイ兄さんの周りを漂う金粉が、羽の部分で渦巻き始め、徐々に集束し始めた。



 キュィイイイイイイイイン!!



《行くぞぉおおおおおおおお!!》



 ドォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!


 ガキィイイイイイイイン!!


 見えない速さで消えた次の瞬間には、エンペラーと衝突していて、角と角が火花を散らしている。


《惜しかったな……私の勝ちだ!!》



『グラビトン』



《ぐぉおおおおおおお!!》


 今までより、遥かに重い重力がのし掛かる。


《ま、まだだぁあああああああああ!!》


 地面にめり込む兄さんだったが、『魔装』はまだ解けてはいない。



 キュィイイイイイイイイン!!



《何!?》


《うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!》




 ドゴォオオオオオオオオオオオオン!!




 超接近でぶつかった事による、凄まじい衝撃波と光が、辺り一面を覆い隠すと、何も見えなくなってしまった。




 徐々に光が収まると、影が見え始める。




 そこに立っていたのは、ただ一匹ーー

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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