第31話 ヒスイ
〜sideヒスイ〜
ある日、異世界から転生した少年がファミリアに加わる事になった。
魔王樹ファミリアと呼ばれる私達は皆、訳ありの子ばかりだ。
エンシェントトレント、通称『魔王樹』と呼ばれる爺は、そんな子達を保護して大切に育ててくれる。
私は二番目に保護された為、長女となった。
その後も妹や弟達が徐々に増え、ファミリアも随分賑やかになって来た。
今度来る子は異世界から来た人間、爺の魔核を移植し手術しなければ、確実に死んでしまう状態だと爺は言った。
私は必死に断る様に言った。
爺にも多少のリスクがあるのは勿論、異世界だろうが人間がこのファミリアに入る事は危険だと思ったからだ。
だが、爺は頑なに決心してしまって、条件を付けて受け入れる事になった。
他のファミリア達も動揺したけれど、爺の説得を受け、結局、全員了承するはこびとなってしまった。
残念ながら手術は成功した。
長女である私は面倒見役として……いえ、監視役として共に行動していた。
爺と旅人との間で交した条件は、少年がもしファミリアに危害を加えるような事があれば、殺しても良いという内容だった。
でも、そんな様子は今の所無い。
寧ろ、間違って殺してしまいそうになるほど彼は弱かった。
そして、彼はとても変な子だ。
手術を受け人間から人魔になったのも変だけど、それよりも順応性が異様に高いと思った。
最初は少し恐がっていたが、魔物達である私達と直ぐに仲良くなった事。
次男であるキラとの初めての狩りでは、血が噴き出した魔獣の生首を見て、その場で嘔吐して落ち込んでいたけれど、次の日には直ぐに立ち直っていた事。
よく分からない。
次女のクインとのお手伝いでは、直ぐに息子のイチとも仲良くなり、私に「いつものお礼」と言って、貴重なクイン自身の蜜をお裾分けしてくれた。
元人間なのに優しい。
三男のジャイとは、「運命の出会いだ!!」とか何とか鼻の穴を広げだいぶん興奮していたけれど、私には全く理解出来ない。
警戒心が弱いジャイとも直ぐ仲良くなり、その日挨拶周りに行った。
私が先にエルダーの所で待っていたら、何故か気絶して降りてきた。
ワケガワカラナイ
三女のヒメとのお手伝いでは、案の定さされて帰って来たが、ヒメの事を敵だと考え無かったみたいだ。
正直、彼がヒメを敵だと言いだしたら、殺す事になるかも知れ無いと思っていたけれど、そうはならなかった。
普通、魔物に襲われたら敵だと反応するのが当たり前なのに、やはりよく分からない。
四女のアラ子ではちょっと焦った。
爺が彼とアラ子が喧嘩した時、アラ子を追い出そうとしたからだ。
彼が仕掛けた罠かもしれないとその時は考えた。
人間はずる賢い生き物だから。
アラ子と彼がエリア外に出た時も焦った。
私が教えた木霊を使って居場所が特定出来たから良かった。
私が雑魚を追っ払い、二人を連れて無事に戻った。
次の日には、アラ子と彼は森でハグしてた。
訳が分からない……が、なんだろう……ムカツク。
それからアラ子は彼を名前で呼び始めた。
もう色々訳が分からない。
でも……
そう、一番訳が分からないのは私自身なのだ。
爺の言いつけで魔法を教えている時、楽しんでる私がいる。
魔法が好きで好きで仕方無いといった顔を見ると、やる気が出る私。
ドリアードに伝わる木霊の習得方法で、思った以上に温かい手を繋いだ時は、不覚にもドキッとしてしまった私。
そして、あの日、あの時、あの瞬間、彼が木霊を成功させた時、私の本当の妹とダブって見えて、私は思わずあの時、妹と同じように彼を抱きしめてしまった。
訳が……分からないよ。
私は私が分からない。
彼は日々成長している。
人魔と呼ばれる特殊な種族だからだろうか。
生活魔法、木属性魔法、無属性魔法、木霊での会話。
そして次に始めたのが回復魔法だった。
私があの娘に教えた最後の魔法。
ドリアードが魔の森で、生き残る為に行う最後の修行法。
【鬼ごっこ】
この修行は過酷だ。
指導者を相手に、持てる全てを使って捕らえなければならない。
さらには、指導者がセーブするとはいえ、その攻撃を全力で十分間逃げ続けなければならない。
ドリアード同士ならまだしも、彼は違う種族。
尚更、困難であるはず。
だからこそいい。
もしも彼がこの試練を乗り越えたのなら……
その時は……




