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第28話 春来たりて新魔法


 森の木々の葉は枯れ落ち、いつの間にか景色は白銀となって、季節は巡り、雪が溶けて春が来た。


 ここに来て、もう少しで一年。


 俺の背は少し伸びた。


 チュン チュン うひょ!!


 あいつ……ほんと毎日忘れずにやって来るな。


 この一年で知った事だが、うひょはマンドラゴラと呼ばれる魔物で、本来は地表から抜き取られる際、根っこの部分が奇声をあげるという奇妙な魔物の一種とされている。


 だが、花?? の部分から奇声を上げるうひょは、珍しい変異種に当たるとじぃちゃんは言っていた。


 結局のところ、謎な生物のままだ。


 チュンチュン うひょぉおお!!


《うひょ!! 起きてる、起きてるから!!》


 片方しかない目を開けると、いつもの場所にうひょがおり、俺の木霊も無視をして、今にも丸呑みにしようと口を広げていた。


 ガシ!!


「お、ま、え、は、人の話を聞かんかい!!」


 両手で口を抑えたが、いつも通り(・・・・・)うひょの蔓が根本からシュルシュルと伸び、俺の手を縛ろうと動かす。


「甘いわ!!」


『グロウ』


 俺が木属性魔法の『グロウ』を唱えると、胸ポケットに入れていた植物の種が成長し、それを操ってうひょの蔓に 対抗する。


 バシ!! バシ!!


《ほっほっほ、エントにうひょ、おはようじゃ。今日もやっとるのぉ》

 

「じぃちゃんおはよう!! く、この!!」


「ぶひょぉおおお!! ぶひょ!!」


「つ、唾を飛ばすなよ!!」


 対抗手段は手に入れたものの、普段から手足のように使っているうひょの方が一日の長でこちらが徐々に押され始める。


「またやってんのか?? エント!! 男なら負けんじゃないよ!!」

 

 アラ子姉さんが枝の陰から現れ、応援し始めた。


 あの一件以来、アラ子姉さんは俺の事を『エント』と名前で呼んでくれるようになった。


 相変わらずキツイ言い方が多いけど、それも彼女の口癖であり慣れてしまえば、実際のところ凄く優しくしてくれる姉さんだ。


(アラ子姉さん有り難う……でも、でもね?? そうじゃないんだよ……助けてよぉおおおお!!)


 すると、うひょの口元が嫌らしくニヤリと笑った。


(何かする気か!?)


 ぶるぶると根本が震えると、なんと今まで二本だった蔓が、四本に増えた。


「な!?」


 シュルシュル!!


(さ、さばき切れない!?)


 そして俺の腕は巻き付けられ、手が絡めとられた。




 ガポ!!




「ん゛んんんんんんん!!」




 今日もまたデロデロだ。


 俺はそのまま地面にスルスルと降りると、【ウォーター】と魔法を唱え、頭から水を被って【エアー】で風を起こし体を乾かす。


 この一年間で便利な生活魔法を習得した。


 他にも、火種を点ける【ファイア】や、トイレ事情に役立つ【アース】なども既に習得済だ。


 四属性はまだ生活魔法レベルだけど、一番伸びたのは木属性魔法と、ほとんど差がなく無属性魔法だ。


 木属性魔法の習得は面白くて、木の実を発芽させる事から始まり、草をひっこ抜いて、根っこの部分を伸ばしたり、動かせるようになるまで意外と早かったし何より楽しかった。


 それが出来てからは、木の枝をゆっくり動かす練習をした。


 初めはビクともしなかったけど、魔核からの魔力操作が上達するに連れ、それも少しづつ出来るようになった。


 近くでって条件付だが、今では木の枝を瞬時に伸ばしたりも出来る。




 無属性魔法はと言うとーー




「シューシューシュ!!」 


《エント身体強化が解けそうだぞ!! 掛け直せ!! と言ってるよ》


「く!! アラ子姉ちゃん時間稼いで!! 『身体強化』」


 俺は新しく覚えた無属性魔法を使い、自分の足に『身体強化』を掛ける。

 

「早くしな!! そんなに一人じゃ持たないよ!!」



 ギィィイン!!



 アラ子姉ちゃんの脚とキラ兄さんの大鎌が激しく激突した。


 『魔力刀』


 俺は右腕に魔力を集め、半透明な刀を作り出す。


 実際はナイフ程度の大きさしか無いけど……


 カッコイイカライインダヨ!!


「はぁぁあああああ!!」


 『身体強化』と『魔力刀』を併用して、キラ兄さんに横薙ぎに斬りつける。

 

 が、余裕で避けられる。

 

「シュシュシュー!!」 


《ナイフを振るうのに、動作が大きすぎる!! と言ってるよ》


「ぐは!?」


(キラ兄さん……ナイフじゃなくて、刀!! 刀だよ!?)


 気付いた時には、キラ兄さんのもう一方の欠腕でぶん殴られ吹き飛ぶ。


「エント!? あたいのエントにーー」

 

 その後はアラ子姉さんも仲良くふっ飛ばされて試合終了だ。


 あの日から、毎日午前中はキラ兄さんの実戦特訓をアラ子姉さんと一緒に行い、午後からはヒスイ姉さんに引き続き魔法を教えて貰っている。


 お手伝いはどうしたって??


 兄弟達の繁忙期や、雨の日などにやれる範囲で手伝ってる。


《手伝いは文字通り、手が足りぬ時にすればえぇ。子供は成長するのと遊ぶのが仕事じゃからの。良く遊び、良く学んで大きくなるんじゃ。ほっほっほ》


 と、言うことらしい。


 だけど、中身三十後半の俺は、ファミリアに貢献もしないでただ飯を貰うのは性に合わない。


 なので、一つある事を試みようと着々と準備を進めて来た。


 予定では、次に旅人さんが来たら始められると思うんだけど……


 旅人さんはあれから季節が変わる毎に顔を出してくれている。


 忙しくてたまにしか来られないのもあってか、俺の話をじっくり聞いてくれたり、他の場所の事を教えてくれる。


 俺の予想だと花も咲き出したし、じぃちゃんの話だとそろそろ来る頃だ。


 いつもの昼食を食べながら、そんな旅人さんの事をじぃちゃんと話していた。


《ほっほっほ、そうじゃのぉ。ここらの花が満開になる頃には、友は来るじゃろうて》


「早く来ないかなぁ……そう言えば、じぃちゃんて花を咲かす事ってあるの??」

 

《…………そうじゃのぉ。出来る事は出来るがエントは見たいかの??》


「えぇ咲くの!? じぃちゃんの花かぁ。どんなのが咲くのか見てみたいかな??」

 

《ほっほっほ、儂の花はそれはそれは見事なもんじゃが、時間と手間がかかる故、エントも手伝ってくれるかの??》

 

「それは構わないけど、難しい事は上手く出来ないかも知れ無いよ??」

 

《何、簡単なお手伝い程度じゃ。余分な枝や葉を切って貰うだけじゃ。ほっほっほ》

 

「それぐらいなら、全然大丈夫!!」


「エント君、そろそろ授業を始めますよ!」


《ほっほっほ、行きなさい》

 

 先生モードのヒスイ姉さんに呼ばれ、今日も魔法の授業を始める。


 瞑想は胡座になって目を閉じ、身体の魔力を感じる修行だが、最近では目を閉じないでも感じとれるようにもなったけど、基本は大事と言われ、同じ様に欠かさず真面目に行っている。


 水心の業は大きな木の実の殻に水を入れ、葉っぱを一枚浮べた後、魔力を通す事で自分の属性に沿った変化を行う修行だ。


 今では葉っぱを大きくしてから形を変え、更に水の量を増やすのを順番で行っている。


 この修行も、始めは全体的に魔力を通しているだけだったけれど、順番に魔力の質を変える修行に変わった。


「ふぅ、出来ました!!」


「良いですね!! エント君は魔力の質を変えるのが上手ね」


 比べれる相手も中々いないし(アラ子姉さん達は別格過ぎて話にならない)、分からないけど褒められのは素直に嬉しい。

 

「有り難う御座います!!」


「これだけ魔力操作出来るなら、新しい魔法を始めてもいいかな??」


「新しい魔法!?」


 相変わらず俺は魔法を覚えるのが楽しくて仕方無かった。


 魔法が無かった世界にいたってのは大きいけど、単純に出来る事が増えるってのは、成長している実感があって楽しいのだ。


「次は……回復魔法が良いかな??」


《ほっほっほ、良いんじゃないかの?? 治療系の魔法はこの森での生活は元より、将来を考えても必ず必要になる魔法じゃ。早く練習して損は無いの》

 

「わかりました。でもその前に『グロウ』と『身体強化』それに生活魔法の復習をしてからにしましょう」


 俺は俄然やる気を出して順番にこなしていく。



「はぁはぁ……終わりました!!」



「うん、良いでしょう。では、これから水属性魔法の一つ『ヒールウォータ』の練習を始めます」

 

「おおお!! 宜しくお願いします!!」




「……では初めに【ハードコース】か【イージーコース】を選んで下さい」




「え??」 

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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