第15話 お手伝いと属性
チュン チュン うひょ
(ん……ぅ。なんだか……前にもこんな事が)
チュン チュン うひょぉおお!!
(これ…………あかんやつや!!)
バッと瞼を開けると、うひょの口は大きく拡がりーー
「うひょさん、起きたからストップ!!」
ガポ
「ん゛ーーーー!!」
(ちゃんと起きたのに何故!? 息、息が!!)
すでに葉っぱ布団から腕を出して、必死に抜け出そうと抵抗しているが酸欠状態で力が抜けていく。
「エント!? こら、うひょやめなさい!!」
日常化しそうなこの恐ろしいイベントを、命からがら終えた後は、今日から始める瞑想と朝食を食べたら、今日はヒスイ姉さんの仕事を手伝う事になっている。
瞑想については昨日より少し上達している……気がする。気が……
瞑想が終わる頃にはやはり汗だくになって、昨日行った湖で汗を流し、さっぱりした後に朝食を食べた。
おぅ、また苦い木の実とププリの実か……
だけど、まだ仕事もしないで文句など言えるはずがない。
《ほっほっほ、気を付けての》
じぃちゃんに見送られ、ヒスイ姉さんの後に続いて森の中を歩いた。
何故かうひょも肩に乗って付いて来る。
内心いつガブッとされるか気が気でないけれど、ヒスイ姉さんが「好かれている証拠よ」と言うものだから、取り敢えず信じてみようと思う。
目的地は湖と正反対の方向に進んで、森に入ってから暫くすると、少し開けた場所にそこあった。
「エント、ここが私の作業場よ。中々素敵でしょ??」
そこで目にした景色は、一言でいうと広大な果樹園だ。
さっき食べたププリの実はもちろん様々な果実や、見た事のない木の実なども沢山生えている。
よく見ると、木と木の間の区画には畑もあり、何かハーブのような物も植えてある。
何処を見ても、丁寧に手入れが行き届いているのが一目でわかり、素直に凄いと思った。
「ヒスイ姉さん、凄いですね!!」
「うひょぉおお!! うひょぉおお!!」
「ありがとう!! そう言ってくれると私も嬉しいわ」
ヒスイ姉さんはまるで自分の事のように嬉しそうだ。
しかし、広い。
一ヘクタール程は有るんじゃなかろうか。
にもかかわらず、綺麗に区画管理されているこの場所は、向かって右側が果実の木、左側は木の実の木と作業効率や景観も考えて作られているようだった。
(これ、ヒスイ姉さんが一人で??)
想像するだけで大変そうな作業に驚愕しつつ、歩きながら姉さんの説明に耳を傾ける。
「果実はなるべく時期をずらして長期間食べれる物にしたかったから、品種を厳選するのは凄く悩んだの。私の仕事はここでお世話する事と収穫、後は雪が降る前に保存が効くように取れた収穫物を加工したりしているの」
なるほど、こんな森での生活なら冬への備えは死活問題なのだろう。
いくら魔法がある世界でも、食べないと死ぬのは当然なのだ。
ところでうひょさん、話を聞いてヨダレを服に垂らさないでぇ!!
「なるほど、よく考えてあるんですね。加工って難しいの??」
「基本的に、皮を剥いて蔓で縛って干しておく事が多いかな」
(干し柿みたいな感じかな??)
「それなら俺も出来そうだ。時期が来たら俺もやってみても良いかな??」
「もちろん!! あの時期はほんと大変だから……必ずヨブネ」
「え……??」
一瞬で濁った目になるヒスイ姉さんを目にして、俺は早まった発言をしたのかもしれないとそう思った。
話題を変えれば忘れてくれるかもしれない。
「あ、あと気になったんだけど、そこの畑に植えてある葉っぱは何なの??」
細長く縦に作られた畑には、緑のハーブ?から、紫蘇の様な紫色の物、中にはあまり見た事の無い黄色い葉も植わさっている。
「緑のが薬草で、擦り傷やポーションの材料になるわ。紫色のは毒消し草で、ある程度の毒は治す事が出来る薬草の一種ね。黄色い物が魔力草と言って、魔力を回復させるマジックポーションの材料になるんだけど、魔力草はまだ収穫の時期じゃなくて、時期が来るとまた色が変わるから、楽しみにしているといいわ」
(おお!? ファンタジーで良く出て来る薬草達か!!)
魔法も凄く感動したけど、薬草や毒消し草も、まさにファンタジーの世界って感じがする。
一通り説明を聞いた後、手伝い初日という事もあって、簡単な畑の草むしりを頼まれた俺は、お昼になるまで端から順番にひたすら草抜きをして行った。
続けていると徐々に膝が痛くなって来て、たまに伸ばしたりして休みながら行った。
でも、あんまり休み過ぎると肩に居座るうひょに、容赦無く噛じられた。
草抜きなんて久々だったから意外と楽しめた。
変な緊張感は否めなかったけど……
その間、ヒスイ姉さんは今日の他の兄弟達と自分達の分のお弁当や夕食作りをしていたようで、葉っぱに木の実や果実を包んでいたみたいだ。
午前中の作業を終えてじぃちゃんの元に戻り、ヒスイ姉さんが作っていた昼食を食べ終わると、今日もまたお楽しみの時間がやって来た。
「さて、今日も魔法の授業を始めます!!」
背後に『キリ!!』って文字が見えるや。
「よ、宜しくお願いします!!」
「うひょぉおお!!」
あ、うひょさんもまた一緒なのね??
《ほっほっほ、楽しそうじゃのぉ》
「さて、今日は属性に付いて学んで貰います」
「属性、ですか??」
「そう、属性です。属性とは魔法、魔力における性質を表します」
「魔力の性質。沢山種類があるんですか??」
「えぇ、この世界の属性は、火、水、土、風の四大属性が有名ですが、これは人族達の考え方です。我々魔物の中では火、水、木、土、風の五大属性が基本になります。ちなみに、木以外にも希少属性として、光、闇、無属性などもありますが、これは限られた種族でのみ扱えると言われているので、今は省略します」
「なるほど」
「属性は種族や個体、また、生まれた環境等によって影響を受けるとされています」
「先生。私の場合、じぃちゃんの魔核を分けて貰った影響なのか、ステータスを見る限り木属性魔法を持っているのですが、属性は木なんでしょうか??」
「実に良い質問ですね!!」
あ、それ何処かでーー
「属性は得意不得意はあるものの基本的に練習すれば、全て扱う事は可能です。但し、使えるレベルかどうかは実際にやってみないとこれは分かりません」
(良かった!! 正直、木の魔法を想像してみたけどどう考えても地味だし、男ならやっぱり火の玉とか使ってみたいじゃない!!)
「と、言う事で!! 今からエント君の適性を調べたいと思います!!」
「うひょぉおおおお!!」