第10話 固有スキルと布団
「魔物しか使わない魔法……」
旅人さんからの詳細では、厳密に言うと木属性魔法は極稀に使える者もいるとの事だったが、魔物の方が良く使う魔法という理由から、扱う者は皆、忌み嫌われ差別されているのが現状だと教えられた。
そして、もう一つのスキルはと言うと、もっと厄介な代物だった。
「特に【木霊】は注意しなさい」
「木霊って言うのは、頭に響く声の事ですか??」
《そぅ、これが木霊》
「凄い……聞くのとは、また別の感覚ですね」
「木霊を取得した貴方も、練習すれば使えるようになるわ」
(おおお!! ファンタジーっぽいこの世界に来て、やっと魔法とかスキルが使えるのか!!)
魔物しか使わない魔法やスキルでも、使えるようになるかもしれないと俺は鼻息が荒くなるほど嬉しくなった。
だが、さっきの旅人の言った意味深な内容が気になった。
「もしかして……その木霊も魔物しか使わないって事ですか?? あれ?? でも旅人さんは使ってますよね??」
「そぅ、貴方の為に何処までを伝えるべきか難しいのだけど、この世界の事情を知らない君が何も知らないまま木霊を使うという事自体が危険なのよ」
「それは木霊というスキルが危ないスキルって事ですか??」
《何を言う!! 物凄く便利じゃぞ!? 凄いんじゃぞ!! ふはははは!!》
《…………ダマレ》
《ひぃ!?》
(旅人さんて、怒ると滅茶苦茶怖いな……)
「コホン……固有スキルである【木霊】は植物達の助けを借り、伝達や索敵が可能になる特殊なスキル。熟練度を上げるとその範囲も効果も自ずと広がる。ただ、これが戦争の絶えないこの世界でどういう事を招くか分かる??」
少し考えた後、すぐに俺は危険の意味に気付いた。
(それは物凄くやばい。植物はどこにでも生えているし、広げられる大きさ次第では相手に気付かれず情報が手に入るって事だろ??)
「察したみたいね。今まで何度も、人族、獣人族、魔人族の間で戦争が繰り返されてきたけど、実際に木霊を利用しようと企んだ種族があった。木霊を持っていた者達は乱獲されて軍事利用され、スキルを持っていても知能が低い魔物や効果の低い魔物は淘汰されて行ったわ……」
その後の結末は、木霊を持つ者の投入から戦争は大きくバランスを崩し甚大な被害をもたらしたと言う。
悲劇は続いた。
他の種族達もただやられる訳もなく、何とか対抗しなければと木霊を持つ者を同じ様に捕獲し虐殺して行ったのだ。
「なんて酷い事を……」
「そぅ、これで木霊の危険性がわかったでしょう?? でも生きていく分にはとても有効なスキルでもある。貴方はもう手に入れてしまったのだから、しっかり使えるように磨いて置くと良いわ。ただし、わかってはいると思うけど、使い方を間違えてはいけない。もしも……いや、何でも無いわ」
「わかりました。間違えないようにします」
「そぅ、良かった。それと私が使えるのは、この世界でも数少ないハイエルフだからよ。でもごめんなさい。今はここまでしか話したくないから話さない。いつか必要があれば話す事にさせて貰うわ」
《ほっほっほ、話は終わったようじゃの。友よ、もう夜も遅い。その子もお主も休養が必要じゃろう。続きは明日にしようぞ》
《そぅ、そうね……》
今気付いたが、旅人さんは少しふらついている。
もしかしなくとも俺の手術で消耗させてしまったのか、申し訳無い気持ちになった。
彼女にまだ質問したい事はあったけど、今はもういいだろう。
「わかりました。それと旅人さん、遅くなってしまいしたが手術有り難う御座います。 貴方のお陰で助かりました!!」
いつか必ず、この恩を返そうと強くそう思って頭を下げた。
「そぅ、どういたしまして」
ちゃんとお礼を言った後、どこで休もうかと悩んでいると魔王樹が《ほっほっほ、儂に任せよ》と言って、目の前に巨大な枝を伸ばしてきた。
(枝が動いた!? というかこれはどうすれば良いんだ!?)
俺が困惑していると、目を擦った旅人さんがまるで自分の部屋に入るかのように、巨大な葉っぱの一つを捲って入っていった。
(えぇ!? あの葉っぱ入れるの!? )
《ほっほっほ、さぁ、エントもお入り》
恐る恐る近づいて、旅人さんがやっていたように葉っぱの付け根を捲ると、白い綿に似た繊維がびっしり詰まっている。
(綿っぽいかな??)
少し不安で旅人さんの方をちらっと見ると、葉から顔だけを出してもう寝ている……oh
(早い、早いよ旅人さん!!)
えぇい見様見真似だ!! と、意を決して中に入る。
「おぉ!? 柔らかい!!」
綿に包まれたような保温感と、中で触る手触りはサラサラしたもので不思議な快適感だ。
《そうじゃろ?? そうじゃろ?? 皆に大人気じゃからのぉ。さてもう寝るんじゃ。そこに入っておれば安全じゃからのぉ》
魔王樹の言う皆が少し気になったが、壮絶な一日の疲れとこの葉っぱ布団の快適さで、俺はこの世界に来て初めて心地良く眠りに付くことが出来た。
(あぁ……やばい……ふわふわのサラサラで暖かい……ココガテンゴクカ)
チュン!! チュン!! 「うひょ!!」
そぅ、小鳥の囀りが俺を優しく起こしてくれ……ん??
チュン!! 「うひょぉおおぉおおおお!!」
(ん……んん!? な……なんだこの声!?)
瞑っていたい瞼を擦り、ぼぅとしながら目を開くと、かの有名なゲームに出てくるパッ○ンなフラワーに似た生物が見えた気がした。
何故気がしたかだって?? 俺の頭は今パックンされてるからだ……
(いやぁぁああああ!!)
「ん゛んんんんんんんん!!」
《ほっほっほ、おはようエント。よう寝れたかの?? おぉ、うひょともう仲良くなったのかの。それはえぇ》
(ちょ!! 違いますよぉおおお!? 完全に食べられ!? うぐ……息が……)
「な!? 爺!! 何、ぼぅと見てるんですか!! こら!! うひょ!! 止めなさい!!」
手術の時に聞こえた声がまた聞こえて来た。
結局、その声の主に引っ張られ、俺はなんとかまた一命を取り留めたのだった。




