佐藤ジャック(5)
佐藤ジャックが納得する理由を俺が言わなければ、多分彼はここを動こうとしないだろう。
それはお互いにとって良くない。
俺は役割を遂行できない。
彼は転生できる機会を失う可能性が出てくる。
それだけは避けたい。
「分かりました。お伝えできる範囲で良ければ」
「よろしくー」
急に馴れ馴れしくなったな。
佐藤ジャックは笑顔のまま俺の顔を見ている。
血湧き肉躍る冒険譚でも聞けると思っているのだろうか?
と言うくらいに、良い笑顔だ。
やれやれ。
「まず……そうですね。あなたの世界では、人が何もないところから火を発生させたりすることはありませんでしたよね?」
「何もないところから火? んー……魔法って事? え、使えるの?」
「いやだから居なかったでしょ?」
「あ、はい……」
しまった。
思わず素で言ってしまった。気をつけねば。
「コホン。で、そのあなたの世界ではあり得なかった事が出来る世界が、確かに存在はするのです」
「やっぱり有るんじゃん!」
「はい。ですが、この世界のコトワリ……物理法則だったり色んな言い方がありますが、この世界のルールと明らかに異なるルールで運営されている世界とは、そもそもタマシイの管理が異なっているのです」
「魂の管理……?」
まぁ、いきなり言われても理解しづらいよなぁ。
「あなたの生きた現世地球で例えるならば……日本人であるあなたが、歩いてオーストラリアに行く、とか言う次元で無理なのです。そもそも『歩いて』オーストラリアには行けないでしょう?」
「確かに歩いては行けない……しかしオーストラリアって事は、やっぱりアボリジニ……」
何という伏線回収。
「いやアボリジニ関係ないから」
「あ、はい……」
何だこのやり取りは。
俺はとりあえず、説明を続けた。