佐藤ジャック(2)
なるほど。
やっと理解が追いついた、と言うことらしい。
「残念ながらそうな……」
「よっしゃぁぁぁ!」
被せ気味に青年の雄叫びが響いた。
「俺、さっき赤信号なのに突っ込んで来たトラックに轢かれたんだよ!
これってアレじゃね? 転生! そう、異世界転生だよ!」
あ……この系統か……。
本当に最近多いんだ。特に東洋系の人間。
多いと言っても、前よりも目立つようになったってだけだが、それでも転生を受け入れている……と言うか、『転生を認識している人間』と言うジャンルで括った場合、その比率は低くはない。
「て事は、あんた……あなたが神か!」
言い直したな。
「残念ながら、私は神ではありません」
「え?」
青年の表情は、じゃああんたは誰なんだ? と問いたげだった。
一人で勝手に自分の都合の良いように納得してるなぁ。
やりにくいんだよなぁ、こう言うの。
「まず、私は神ではありませんし、あなたは異世界に転生はしません」
「!!!!!!!」
青年は雷に打たれたかのように一瞬ビクンッ!と大きく震えると、それきり動かなくなった。
驚きの表情をたたえたまま固まっている。
どれくらいそうしてただろうか。
世界標準時間で、たっぷり15分はそうしてただろうか。
「あなたは異世界転生出来ません」
大事なことなので、かなり時間を開けて二回言ってみた。
「そんな……馬鹿な……」
青年はそう言って、再稼働した。