佐藤ジャック(1)
「ここは……」
そう言って、黒髪短髪の青年がキョロキョロと周りを見渡す。
見た感じ、東洋の人間だろう。
特徴的な顔だからな。
「えっと……ちょっと良いですか?」
青年が声をかけてきた。
俺はいつものように、決まった言葉を返す。
「ようこそ、狭間の世界へ」
「あー……え?」
まぁよくある反応だ。
この手の反応の時は……
「死後の世界へ繋がる世界だ。あなたには、三途の川とか言った方が分かりやすいかな?」
「え!?」
青年は呆然と俺を見つめる。
見つめられても状況は変わらんぞ?
とは言えず。
俺は極めて事務的に話し始めた。
「なかなかすぐには理解できないかもしれない。
そこで、この世界とあたなのこれからについて、話させてもらおうと思う」
青年は何も言わず、ただぎこちなく頷いた。
「まずひとつ。先ほど伝えた通り、ここは狭間の世界。
現世で死した者の全てが訪れる場所。
この世界を訪れた者は、ただひとりの例外もなく、この世界の最奥にある『境界の門』を目指すことになるのです。
そうして境界の門には、門の担当者が三人と、道先案内人が一人、あなたの訪れを待っています」
俺の話を聞いても、青年は反応しない。
しないと言うよりも、どう反応していいか分からない、といったところか。
それからしばらくして、青年はおもむろにこう言った。
「もしかして、俺、死んじゃった!?」