⑤
今日も曇り。もうすぐ夏だというのに、中々晴れない。
あの一件以降、彼女からの会話を拒否するようになった。
最初は普段通り話しかけてきていたが、無視を重ねる毎に、その回数は徐々に少なくなっていった。
時々こんな会話を耳にする。
『あの人と仲良くする必要ないよ』
『あいつ、女子に手を出したクズだぜ?』
クラスの連中が自分のことを彼女にそう告げているのだろう。
もちろん、これに間違いはない。
※※※
その事件を起こしたのは、二年前。
ちょうど今みたいな季節だった。
まだクラス自体が馴染んでいない、春先のこと。
クラスにある女の子がいた。
その女の子は地味で目立たない、休み時間に本を読んでいるような、そんな人だった。
彼女の事はよく知らない。直接話をしたことがなく、そこまで関わることがなかったから。
だが、寂しそうに外の空を眺める様子に、どこか自分を重ねていたのかもしれない。
彼女と仲良くしていたのは、ある女子グループだった。
グループに囲まれて、楽しく過ごしている、ずっとそう思っていた。
彼女がそのグループからいじめを受けているのを知ったのは、少ししてからの事だった。