③
「それが言いたかった事……」
「うん、ずっと言えなくてごめん」
彼女は変わった。しかし、それは俺の力ではない。
彼女がそう願ったからだ。
「俺は……何もしてない。後悔してるんだよ。あんな事しなけりゃよかったって……ずっと……ずっと……」
気に入らないものに当たっただけの、正義感を気取った愚か者だ。
「違う! 少なくても私はあなたに救われた! なかった方が良かった……そんな事言わないで」
彼女は俺の手を強く握る。
「あなたはやり方を間違えたかもしれない。でも……それで孤立するなんておかしいよ……! きっと私みたいによくないと思っていない人だっている!」
思っていない人……いるのか、そんな人が。
「いいのか……俺は救われて……」
彼女の言葉に、仕草に、不覚にも涙が流れて。
もう目の前も見えていない。わかるのはその握られた手の温度だけ。
「いいんだよ。 今まで辛い思いをしたんだから。 今度こそ幸せになろ?」
彼女が俺を引き寄せ、静かに抱きしめてくれた。
彼女のぬくもりが、全身を駆け巡る。
頭を撫でられて、まるで俺は赤子のようだった。母親のような彼女は、きっと良い母親になれる。
俺は泣いた。声をあげて泣いた。
胸の奥にかかえていた物が流れ落ちるまで泣いた。
彼女も泣いた。つられ泣きだった。
冬空の下、雪でも降りそうな聖夜の日。
俺と彼女はベンチで二人、泣き続けた。




