④
「嫌だよ……それだけは嫌だ」
彼女は言う。今までで一番辛そうな顔で。
「どうしてそんな事言うの? やめてよ。気を使ってるなんて……ひどいよ」
「じゃあ、どうしてなんだよ」
わからなかった、本当に。
彼女が俺に少なからず好意を抱いている、その理由の他に何かある気がするんだ。
しかし、やっぱり彼女は何も言わなかった。
目に涙を溜めながら、俯く。
「……言えない」
その言葉に、さすがに俺も呆れてしまった。
「じゃあ、やっぱり今日でお別れにしよう。色々ありがとう、楽しかったよ」
そう言って、去ろうとするが、彼女に腕を掴まれる。
「なんでっ……! なんでそうやって孤立したがるの……? 」
自ら孤立を求めたワケではない、成り行きでそうなった。
というのを言い訳にして逃げているのを知っている。
本当は、彼女の言うとおり自然と関わるのを避けていた。
自分は孤独じゃないと思いたいだけなのかもしれない。
ただ人と関わるのが嫌だった、そんな理由かもしれない。
自分でもそれは、わからなかった。
「……ごめんな、わかんないんだよ。俺にも。人とどう関わったら、いいのか」
あの事件以降、クラスの連中の白い目が、怖くて仕方ない。
臆病なんだ、自分は。とてつもなく。
「……あなたはすごく優しい人なのに、どうしてそんな事をするのか。私には、わかんない」
泣き出す彼女に俺は何も言えない。
暖かい言葉も、肩を抱く事も俺にはできない。
その資格は……俺にはない。