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 夕焼け空の見える丘。




 ここは俺たちがいつも、最後に訪れる場所であった。




 俺も、彼女も、ここから見える景色が本当に好きだから。




 この夏は二人でいることの方が多かった。




 今まで生きてきて、これ程まで充実した日々はなかった気がする。




 ベンチに座りながら、俺はふと思う。




 この夏休み、彼女は俺と過ごして楽しかったのか?




 彼女から誘うことは多かったが、俺から誘う事もまた少なからずはあった。




 彼女は断らずそれを受けてくれた。




 彼女は優しい。だけど本当は、俺に気を使ってるんじゃないか。




 不意にそんな不安が頭をよぎる。




 なぜ彼女は俺と仲良くしている。その答えをまだ、聞いていない。




「この前のこと本当に後悔してる。だけど、聞きたかったんだよ。なんで、俺なんかと仲良くしてるのか」




 彼女は答えなかった。ただ眼前の夕陽を見たまま、動かない。




「ちゃんと、言ってほしい」




 彼女は少し黙ったまま、小さく告げる。




「……理由、必要?」




「……俺には、必要だよ」




 もうすぐ夏休みが終わる。俺たちはまた、あの教室に帰るハメになる。




 俺たちが仲良くしていれば、クラスの連中は彼女のことを俺と同様に嫌うかもしれない。




 それだけは避けないと。




 何も言わない彼女に向けて、俺は一つの質問をする。




「俺は、昔クラスの女の子に暴力ふるって、そこからずっと孤立してるんだよ」




 もう思い出したくない、トラウマ。




「仲良くしてくれるのは嬉しい。でも気を使ってるのなら、やめてくれ。嫌いなんだ、そういうの」




 俺は提案する。今できる最善策を。





「こうやって会うのを、今日で最後にしないか」





 彼女の顔は見えなかったが、泣いている気がした。







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