①
出逢いのきっかけは席替えだった。
たまたま彼女と席が隣同士になった。
そんなどこにでもあるような、ありふれた話。
「あ、隣だ? よろしくね!」
そんな風に声をかけてくれたのは、彼女がはじめてだった。
大概の場合、自分と席が隣になった人は、きまって嫌な表情を浮かべる。
何か嫌なのか、何となく察しはついていた。
だが、彼女だけは違った。
目を見ても逸らさないで笑いかけてくれるし、あっちから挨拶もしてくれる。
最初は罰ゲームか何かだと思っていたが、そうではないらしい。
普段の振る舞いを見る限りでは、これが自然なのだろう。
困っている人を見ればすぐに助けにいくような、そんなお人好し。
誰にでも優しくて、何となく人に優しい。俺にだけ優しい、そんな特別な感情はないのだと。
当然、彼女は皆から人気者。クラスの男子も好意を抱いてる人も多かったに違いない。
だから、彼女を嫌いになることにした。
なんの期待もしたくないから、意識するだけ無駄だから。
窓の外の青い大空に向かって考える。
いつからだろう、こんなに人を嫌いになったのは。
そして、いつからだろう。
こんなにも、自分を嫌いになったのは。